「エロス・グロテスク満載、でもラストは切ない」渇き mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
エロス・グロテスク満載、でもラストは切ない
パク・チャヌクとソン・ガンホなので、一筋縄ではいかないだろうなと思って見てみたら、ある意味、やっぱり、すごかった。笑
ウイルス実験の被験者となった、生真面目な神父サンヒョン(ソン・ガンホ)が、一度は死んだものの復活し、輸血のせいでバンパイアになってしまう話なのですが、敬虔な神父にバンパイアを覆い被せることにより、人間の心の渇き(欲望というか煩悩というか性<さが>というか)をあぶり出していくところが、この映画のツボなのかなと思いました。
『オールドボーイ』では、主人公はあることがキッカケ(監禁)で、どんどん、狂気の渦に巻き込まれていきますが、この映画では、神父がバンパイアとなってしまったことで、今までの善良な自分でいることはできなくなり、どんどん暴走していく流れが多少、似ていたような気もしました。
バンパイアになったものの、人を襲うこともなく、意識不明の患者さんのベッド下に横たわって、血液をチューブから、いただくサンヒョンの姿は慎ましかったです。(そういえば吸血鬼定番のキバもなかったような) それに対し、テジュ(キム・オクビン)の変貌後はやりたい邦題で、サンヒョンの手に負えない存在に。虐げられた影のある人妻が、水を得た魚(血を得た吸血鬼)となっていきます。
荒唐無稽というか、救いのないストーリーですが、ラストシーンは嫌いじゃなかったです。
朝陽が昇る前の、青みがかった外の風景が美しかったです。性に執着する女性バンパイアと死で決着をつける男性バンパイアの格闘がすごかったです。太陽の光を浴びて、二人は抱き合いながら、焼け崩れていきます。「テジュさんとはずっと一緒にいたかったのに」というつぶやく言葉に純愛も感じて、切なくなりました。
でも、誰もかれもに薦められるわけではなく、ヘンな映画です。見た後、結構、疲れました。