ローラーガールズ・ダイアリー : 映画評論・批評
2010年5月11日更新
2010年5月22日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー
女性の細やかな感情を丁寧に描いたドリュー・バリモアの監督デビュー作
ローラーゲームがこんなに面白かったとは、目からウロコの新鮮体験だ。試合のシーンが痛快かつ楽しいので、主人公ブリスが、母親が熱望するミスコンではなく、ローラーゲームを選択した気持が無理なく納得できる。母親はミスコン優勝即ち女のサクセス人生と信じているが、それは昔、彼女自身が挫折した夢でもある。郵便局員の制服で通りを歩く姿をちらりと見せることで、テキサスの田舎町で平凡に暮らす主婦の挫折感を感じさせる描写が優れものだ。そんな母親の気持ちが痛いほど分かるから、ブリスもけんか腰で反抗するのではなく、母親の気持を探り、傷つけまいと悩む。そんな細やかな感情を丁寧に描いたことで、画一的な女の自立ものではなく、自分に自信のない女の子が、自分を表現する方法を見つけていくラブリーな物語になった。
クセの強い選手や悪役選手の意外な一面を見せるなど、キャラクター描写も抜群に上手くて、これが初監督とは思えないほどドリューの腕は確かだ。観客を嬉しがらせるツボを心得ている。エレン・ペイジは「JUNO/ジュノ」と正反対に引っ込み思案の少女にぴたりとはまっている。ということはやはり上手い女優ということ。それにしても、20年前だったらブリスを演じたかも知れないジュリエット・ルイスが悪役ローラーとは。<光陰矢のごとし>とはこのことだ。
(森山京子)