「字幕版なのが嬉しい。」9 ナイン 9番目の奇妙な人形 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
字幕版なのが嬉しい。
アリス~でなんか消化不良なバートン節を味わったので^^;
この9(ナイン)ではかなり期待できそうだ!と思っていた。
とはいえ、監督は新鋭S・アッカー、大学の卒業制作だった
短編アニメがアカデミー賞にノミネートされバートンの目に
留まり、彼のプロデュースで今回長編アニメが製作された。
このとても評価が高い短編を観たい!んだけどチラ観だけ…
という残念な状況の中、今作を観た。確かにいい話だと思う。
(でも短編には台詞がなかったのだ!そっちのが断然いい。)
ダークな世界観、なぜ人類が滅亡した世界に麻袋の人形が
遺されたか、その意味を巨大機械獣との闘いとともに紐解く。
身近な麻袋やジッパー、ボタン、糸、針、という材料も
何気に意味があって、冒頭でチラリ語られる科学者たちの
発明が辿る末路も、特に新鮮味は足りないがとても悲しい。
1~9まで名付けられたこの人形、それぞれが個性豊かだ。
9と仲良くなるのが片目の5、親分1、芸術家6、女戦士7、
そして9の使命を目覚めさせた2。なんでこんなに同じ形の
人形たちがいたのかは後で明かされるが、なるほどと思う。
観ているこちらも9たちも、訳が分からず彷徨い、襲われて、
闘う…という繰り返しの冒頭~中盤はやや平坦か、と思う。
人類が破滅する以前の描写は僅かで、目覚めて闘うという
シーンからいきなり開始、そこからが異様に長くなっている。
短編ならそれで終わるものの、短編の始まり方で長編を
作るとなると、元の話にどう抑揚を加えるかで(つまり脚本?)
物語としてのまとまりができてくるはずで…チト惜しい気が^^;
映像はダークである意味ファンタジック、バートン好みでは
あるけれど、話が話なのであまりチャーミングな部分はない。
真面目に、真っ直ぐに、正攻法で作られた感がある^^;
なので…やはり今回もバートン節というのは味わえなかった。
でも。
9が目をパチパチして語る仕草を観ているだけで、この人形に
命を吹き込んだ作り手の愛情が伝わってくる。
バートンのガイコツには目がなかったが、今回はしっかりある。
自分が想う世界観に、自分が成し得なかったものがあるのが
彼はたまらなく気に入ったんだそうだ。わかる気がする^^;
奇妙な人形たちが抱き続ける希望には、本当は、うんと昔に、
人類が成し遂げたかった進歩と調和と幸福が詰まっている。
何度も描かれるからには、忘れちゃいけないことなんだよね。
(珍しく「字幕版のみ」っていう素晴らしい公開体制だった(^^)v)