ゴースト もういちど抱きしめたい : インタビュー
松嶋菜々子、「ゴースト」を30代の代表作へと導く熱情
故パトリック・スウェイジさんとデミ・ムーア主演で大ヒットした「ゴースト ニューヨークの幻」を、アジア版として製作した「ゴースト もういちど抱きしめたい」が、11月13日から公開される。韓国の人気俳優ソン・スンホンを相手役に迎え、松嶋菜々子が「眉山」以来3年ぶりに銀幕復帰。オファーを受けてから、男女逆設定という新機軸が固まるにいたるまでを語った。(取材・文:編集部、写真:堀弥生)
松嶋は、オリジナル版の公開当時は高校生だったそうで「物語に入り込んで見ていたことを覚えています」と述懐。それだけに、オファーを受けた当初は「あの『ゴースト』をやるんだ! と驚きましたね。ただ、“ろくろ”のシーンやあの曲(ライチャス・ブラザースの「アンチェインド・メロディ」)が使われますが、内容に関しては多少変えていくということだったので、あまりオリジナルは意識しなかったですね」と語る。
「眉山」に主演して以来となるこのタイミングでのオファーに、松嶋は運命的なものを感じているといい「今の私にこの話がくるのは、何かの縁だと思います。お話をくださった方々は、私で何かができると思ってくれているので、私にとっても何か新しい表現が出来るんじゃないかと感じました」。男女が逆の設定という大きな変更点についても、違和感を覚えることはなかった。撮影現場では、ソン・スンホン、大谷太郎監督ともすんなりと打ち解けることができたそうで、「リハーサルの段階からお互いのテンションがすごく合っていました。話し合いもスムーズで、監督も穏やかで静かなかただったので、3人で穏やかに話す感じでした」
「恋と花火と観覧車」で銀幕デビューを果たした松嶋にとって、今作で映画出演は8本目。「リング」「らせん」に代表されるジャパニーズ・ホラー、「ホワイトアウト」「犬神家の一族(2006)」などが挙げられるが、実は純粋なラブストーリーを題材にした映画への出演経験はない。
「これまでラブストーリーそのものを演じてこなかったので、あまりイメージが沸かなかったですね。20代のころに出演した作品は、不倫などちょっと障害がある役どころだったので、これだけ純粋なラブストーリーができるのか不安はありました。30代の女性が恋をして、どこまで自分をさらけ出せるのか。けれど、探り合うものでもないので、そこはストレートに表現したいと思いました」
男女が逆の設定になったことで、松嶋演じる会社社長の星野七海は、陶芸家志望の韓国人青年ジュノと運命的な出会いを経て幸せの絶頂を迎えるが、ある事件に巻き込まれて命を落としてしまう。七海の魂は天国へは行かず、ゴーストになって愛するジュノの側にとどまることを選ぶが、その事件は悲しみに暮れるパートナーをも巻き込もうとしていた。
松嶋は今回、七海を演じていて難しいと思ったシーンはなかったという。それは、今回のアジア版「ゴースト」が「男女がともに互いを守り合いたい。それは、自分にも自然と守りたい存在があるから、何の違和感もなく演じられたのかもしれません」と述懐。さらに、「女性って本来、母性本能や強さを持っているからこそ、守りたいと表現をすることが受け入れられたのでしょうね」とほほ笑みながら説明した。
そして今、37歳になった松嶋は、必死に過ごした20代のころとは違った眼差(まなざ)しで女優という仕事に愛を感じている。「久しぶりに仕事を再開したとき、集中と同時に開放感があって『私、この仕事が好きなんだなあ』と思うようになりました。いろいろなことに感謝させてもらえるようになったし、生きがいでもありますから」
だからこそ、アジア版「ゴースト」は松嶋にとって大きな意味をもつ。
「20代は20代で走りきって、仕事をメインでやってきたからこそ30代がある。40代を意義深く生きるために、30代は仕事もプライベートも充実させたい。そのなかで、30代に積み上げるべき大事なキャリアだと思いましたし、30代での代表作になると感じています」
母となった松嶋が、女の強さ、母性をいかんなく発揮した同作は、スクリーンを通してファンに新鮮な驚きをもって迎えられるだろう。