劇場公開日 2010年5月22日

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パーマネント野ばら : 映画評論・批評

2010年5月18日更新

2010年5月22日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

地に足がついた生活とともに描かれる、女たちの我が町物語

誰かを愛さずには生きていけない。愛しているという思いこみでも、かつて熱烈に愛したという記憶でもいい。心の傷に蓋をし、タフな明日を迎え撃つためにも、その熱の微かな残りを抱きしめていたい。野ばら美容室に集まる女たちのそんな思いが、生活のディテールの隙間に織り込まれて画面の中を漂っている。男に逃げられたって商売で損したって、時間になったらご飯を炊いて、朝になったら働きに出る。地に足がついた生活で描かれていく女たちの我が町物語だ。

男運の悪い女ばかり出てくるが、じめじめした暗さがないのは女同士がいがみ合っていないから。ベタベタした慰め合いもお節介な口出しもないのが気持ちいい。ヒロインのなおこには隠された事情があるのだが、大上段に構えたドラマではなく、それぞれのエピソードの合間からゆっくり見えてくる。大げさな泣きではなく、スーッと慎ましい悲しみになっているのが奥ゆかしい。大波乱を起こさないのは、彼女たちが明日も生活して行かなくてはならないから。そう思わせる優しさがあるのだ。

いつもはやりすぎでうるさい夏木マリが良い感じに抑えられ、宇崎竜童のオヤジぶりも絶品。俳優はみないいが、野ばらの常連であるパンチパーマのおばさんたちが最高。ギリシャ悲劇のコロスの役割よろしく、我が町のメロディをしっかりと奏でている。時々、画面の奥でおかしなことが進行するのも、キートン好きの吉田監督らしい演出だ。

(森山京子)

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