死にゆく妻との旅路のレビュー・感想・評価
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壮絶な実話
以前から気になっていた映画。
実話にもとづく映画、しかもタイトルから結末はわかっているのでなかなか勇気が出ませんでした。
前半は、20数年連れ添った夫婦という設定のわりに、三浦友和さんと石田ゆり子さんに遠慮や距離が見られたり、ロードムービーとして間延びした感じがしましたが、後半はぐっと引き込まれました。
石田さんは減量して臨んだのでしょう、がんに侵されて衰弱していく姿は真に迫っていました。
どうしてあの方法しかとれなかったのだろうと他人からは理解できない夫婦の行動ですが、このご夫婦にはご夫婦の、思うところがあったのでしょう。
病院を抜け出すシーン、ひとみが亡くなるシーン、残された夫が号泣するシーンなど印象的な場面がたくさんありました。
説明的な演出やセリフをさらに思い切ってそぎ落としたら、もっともっとよかったのになぁと思います。いつも邦画を観て残念に思うところです。海外でリメイクされたらどんなふうになるだろう、見てみたいと思います。
保護責任者遺棄致死罪
映画のキャッチコピーが「二人でいることが、なぜ、罪になるのですか?」
確かにどこが悪いの?と思える・・・
妻のひとみは、夫の事を「おっさん」と呼ぶんだね。あなたと言うと生々しいかな。
三浦友和さん良かった!
石田ゆり子が美しすぎて、物語がボヤけてしまうという悲劇。
1999年、保護責任者遺棄致死の罪で逮捕された清水久典の手記を元に描かれたヒューマン・ドラマ。
借金取りから逃れるため、ワゴン車に乗り妻と2人で逃避行を続けながら職探しをしていた久典だが、やがて妻の癌が再発してしまう…
死を覚悟し、最期まで夫と旅を続けたいと願う妻と、彼女の我儘を受け入れる久典の姿を描く。
久典の妻、ひとみを演じるのは『黄泉がえり』『サヨナライツカ』の石田ゆり子。
目を逸らしたくなるような生々しい現実を突きつけてくる、鑑賞による爽快感ゼロの苦しい映画。
最悪のクライマックスが待っていることを知りながら、そこに突き進んでいくストーリーを見届けなくてはいけないツラさ…
どんどん追い詰められていく夫、久典を演じる三浦友和の演技は流石。
自分の置かれた現実から逃げ出してしまうダメ男を完璧に演じていたし、だんだんとお金が無くなり、薄汚れていく感じをよく表現していた。
妻、ひとみを演じる石田ゆり子はとにかく美しい。
薄幸の妻という感じは伝わってきた。
観る者の心にドスンと響く、パワーを持った映画であることは間違いないのだが、今一つ惜しいという感じもする。
現実に起こった出来事を描いているのに、何処かリアリティに欠けているような気がする。
というのも、石田ゆり子が美しすぎるんじゃーーー!
あんな美人なカミさんが、あんなダメオヤジにベタ惚れって…あり得るのか!
石田ゆり子は、既に結婚している娘を持つ母親を演じている。娘には子供がいるので、つまり石田ゆり子はおばあちゃんなわけだが、あんなおばあちゃんがいるか!?
娘と並んでも姉妹にしか見えなかったんだけど。むしろ娘より若く見えたんだけど。
とまぁ、ほとんどイチャモンなんだけど、やっぱり石田ゆり子だとこの役にはミスキャストじゃないかなぁ。
ホームレス生活していれば、当然ボロボロになっていくと思うんだけど、石田ゆり子じゃ全然そう見えない。いつまでも綺麗なまま。
危篤状態なのに、もうダメ死にそう…っていう感じが伝わってこない…。まぁこれは石田ゆり子のせいというよりは演出やメイクの問題かもしれないけど。
シナリオもどうだろう…
久典の行動も、ひとみの行動もやはり常軌を逸しており、とても共感できそうにない。
映画は終始、久典とひとみに焦点を当てて描かれていたが、例えば両親を探す娘の視点や、この事件を捜査する刑事の視点を交えつつ、久典とひとみの考えや行動を探っていくという構造だったのであれば、彼らに感情移入出来たのかもしれないとも思った。
初めて観たはずなのに、どこか既視感がある…
ダメな男と、それにどこまでも付き従う女…
あ、『火垂るの墓』だ。作物盗んだりするし…
実写版『火垂るの墓』だと思って観ると良いかもしれません。
若しくは、石田ゆり子のアイドル映画だと思って鑑賞すると、とても良い映画。
彼女がとても魅力的。とても40を超えた実在の人間だとは思えない。
実はひとみは久典の想像上の人物だった…
という展開だったら極上のサスペンス映画になったかも、とか要らんことを考えながら鑑賞してしまった。
やっぱりこういう暗い映画は好みじゃないな〜(>_<)
夫婦の深い愛の姿に思い馳せられずにいられない
癌で余命僅かの妻を連れ立って各地を放浪、結果的に妻を死なせ保護責任者遺棄致死で逮捕された夫。
1999年に実際にあった事件の映画化。
夫の罪を問うのは容易いが、絶望的な状況でも共に居続けたいと望んだ夫婦の深い愛の姿に思い馳せられずにいられない。
夫を取り巻く環境は極めて厳しい。
知人の借金の保証人になるも、知人が行方をくらまし、多額の借金を背負う。
バブル崩壊で経営していた工場が潰れ、職を失う。
働きたくても50過ぎた者に職など無い社会の不条理。
そんな折発覚した妻の癌。
手術を終え退院した妻は夫とまた離れ離れにる事を嫌う。
夫は妻を連れ立っての当てのない職探しの旅が始まるが、道中妻の癌が再発する…。
もし自分が同じ立場だったら、いくら妻の望みとは言え、やはり入院させ、病院のベッドで安らかに最期を迎えさせるだろう。何ら間違ってはいない一般的な正しさだ。
しかし、妻の望みを聞き入れ、最期の時まで一緒に居てやりたいと思う心もある。
その心を罪と言うのならば、正し過ぎる分、法は時として残酷だ。
事実、夫と妻はこの上ない時を過ごした。20数年夫婦でいながら、初めてデートをし、初めて夫は妻に料理を作った。
そして夫は妻を失い、悲しみと後悔の涙を流した。
その姿には悪意や故意など無い。
夫婦の深い愛の姿があっただけだ。
三浦友和がうだつの上がらない夫を哀切漂わせ、石田ゆり子が年の離れた妻を可愛らしく、それぞれ好演。
塙幸成監督の真面目な演出にも好感。
以前「終の信託」でも同じ言葉で締めくくったが、今一度問う。
受け止め方はアナタ次第。
何を以て幸せというのだろう… 何がこの結末へと導いたのだろう…
実話を基にしたこちらのお話、おぼろげながら記事を読んだ記憶があります。
どういう状況でそうなったのか。きっとそれなりの理由があったはず。
それを知りたくて、映画を観てみたくなりました。
物語は、序盤から淡々と、淡々と、進んでいきます。
青いワゴン車に乗って旅をする二人の姿や、
時々夫が垣間見せる思い出の断片を共有するうちに、
それぞれの人間性や心情が見えてきて、
結末に至るその理由が、少しですが理解できた気がしました。
悲しく切ないお話です。
第三者目線で冷静に見れば、もっと別のやり方もあっただろうにと、
簡単に言えてしまいますが、当事者の歩んできた道や、
置かれた環境、運、物事のタイミング。そんないろんな絡みの中で、
彼らにはそれしか選択できなかったのではないか…そう思いました。
それが余計に悲しい部分でもありますが。
夫婦役の三浦さん、石田さん、二人の息のあった演技も良かった。
夫が、終盤に向け見せ始める、悲しく疲れた表情や、
無邪気に振る舞う妻が、一瞬一瞬に見せる悲しい目が、とても印象的でした。
この映画を観終わるころ、
昔見たアニメ映画「火垂るの墓」や、
フジテレビ放送のドラマ「ビギナー」の第七話に出てきた、
「アンパンは誰が食べた?」って話を思い出しました。
どちらも共通しているのは、貧困、無知の怖さ、悪意の無い罪。
いずれも悲しさと切なさを感じる、涙無しでは見られない名作です。
さて映画の終盤。
公園にある猿の檻が汚れているのをみて、突然夫が掃除を始めるシーンがあるんです。
僕は意味がわからなくて、え?この大変なときに何してるの?と思っていたんですが、
後に語られる夫の言葉にその理由を見つけたとき、ハッとさせられました。
物語のコアな部分が、このエピソードに隠されている気がしてなりません。
三浦友和のトホホなおっちゃんぶりが凄い!イメチェンしています。
タイトルが、結末をネタバレしているロードムービーです(^^ゞだから、『127時間』を引き合いに出すまでもなく、監督の演出の技量が問われる企画でしょう。何しろ劇中の殆どが、車中の映像で、夫と妻の二人芝居なんですから。
けれども対した演出もなく、原作通りに終わってしまったという感じです。特に不満なのが、妻の最期があっけなかったこと。これが韓国映画なら、どんな駄作でも最期のシーンぐらいは、たっぷり涙腺を刺激してくれるものです。けれども本作の6000キロに及ぶ夫婦の道程の最後は、本当に淡々としたものでした。
衝撃的だった宮崎あおいの出世作『初恋』の塙監督だっただけにいささか残念です。個々のシーンの芝居の付け方は、決して悪くないのですが、6000キロの長い旅。そして故郷に舞い戻ってからの、車中での闘病生活など、どうしても単調になりがちな途中のシーンをどう盛り上げていくのか、アイデアが不足していて、ひと味足りない感じが否めません。特に、「保護責任者遺棄致死」に問われる事になる、なぜ病院に連れて行かなかったのかという事情を明かしていくところでは、石田ゆり子が相当頑張って、いかに病院に行きたくないか。夫といつも一緒でいたいか、病院から逃亡してしまった妻ひとみの気持ちを切々と訴えかけてきます。
邦画としては、かなりねちっこい芝居ではありましたが、それでも韓国映画の涙腺攻撃と比べると、あと一押しが足りない感じなのです。普段韓国映画に涙している人なら、小地蔵が伝えたいもどかしい感じが、よく分かっていただけると思います。
ひとみの体調が徐々に悪くなっていく後半は、めっきり動きも少なくなって、二人が佇むだけのカットが目立って多くなってしまいました。
全体としては、イマイチだけど、個々のシーンは凄く印象的です。やはり塙監督の芝居の付け方、感情の出し方は、上手いと思います。
ラストで、夫久典がひとみの首にロープを手にした夜のシーンは、思わず涙してしまいました。
何よりも三浦友和のトホホなおっちゃんぶりが素晴らしいのです。普段は、凛々しい二枚目役をこなしてきたのに、本作ではすっかりオーラをそぎ落として、立派な普通のオッサンに成りきっているではありませんか。そして妻役の石田ゆり子の愛らしいこと。年齢を感じさせない愛嬌たっぷりのひとみを演じています。
二人の名演技で、一貫してちょっと風変わりな空気を感じさせる夫婦像が浮かび上がっていきました。
自分の夫を、おっちゃんと呼んで、旦那と言うよりも、お友達感覚で甘えている妻。そんな妻のわがままを、言われるままに受け入れる夫。長い病院からの逃避行は、一体愛のためなのか、失業して職に就けない自信喪失からの現実逃避なのか。敢えて、はっきりした意思表示を示さず、何とも煮え切らない不思議な空気感とともに、死にゆく妻の現実を受け止めるしかない久典だったのです。
これは、夫婦で闘病生活を経験された方にしか分かりにくい感覚なのかも知れません。余計な演出がない分、同じ看病経験を持っているご夫婦には、きっと身につつまされる話でしょう。
その点で、遺棄致死罪での裁判過程には全く触れず、二人の旅路のみに絞り込んだのは、正解だったと思います。
そして、本作はこれから老いていく人たちに、最期はどうあるべきか。植物人間みたいにただ生かされることが良いことなのか。往生のあり方について、問いかけをしている作品なのだと思います。
ぜひ皆さんも、本作に触れて、愛する人をどう看取るべきか、お考えになってみてはいかがでしょうか。
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