劇場公開日 2009年10月28日

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「彼の魂は自らの死を選び、『THIS IS IT』の大ヒットで伝説を残し得たのだ」マイケル・ジャクソン THIS IS IT 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5彼の魂は自らの死を選び、『THIS IS IT』の大ヒットで伝説を残し得たのだ

2009年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

  これは映画というよりも、フィルムライブといったほうが正確だと思います。ドキュメンタリーにするなら、 インタビューの部分を増やして、マイケルという存在に、何らかのテーマを持ってアプローチすべきでした。
 例えば『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』のように、オーディションの過程をもう少し掘り下げて追っていったり、ライブスタッフや交友のあったアーチストのインタビューを加えて、マイケル像を立体的に説き明かしていく手法になるでしょう。

 けれども本作の手法は、『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』のように、もしロンドン公演が実現していたら最良の席でマイケルの歌とパフォーマンスを堪能できるようアレンジされた作品です。突貫工事にしては、よく繋いでいます。一つの曲でもいくつかのリハのシーンを重ねているのに、ぜんぜん切れ目を感じさせません。高度な編集テクニックを感じさせました。

 それに加えて、舞台裏でのマイケルの言動が明かされることで、開催予定だった20年ぶりのコンサートにこめたマイケルの思いの深さがダイレクトに伝わってきます。
 マイケルがいかに地球を愛していて、このコンサートの成功で、地球の人々の意識を変えていくことまで考えていたなんて驚きでした。
 きっとあんなストレートなメッセージは、コンサートにおいては語られなかったでしょう。哀しいことですが、マイケルが死亡したからこそ、その言動が映画となり、その直接マイケルの肉声から発せられた、地球を愛し危惧していることを、何億という観客が目にすることになりました。

 偉人の死は哀しいことです。
 それはある程度その人の人生計画で予定されたことだと思います。もしこれ以上マイケルが地上で生きながらえた場合、様々なスキャンダルと経済的な挫折に晩節を汚すことになっていたかも知れないのです。
 そうなる前に、彼の魂は死を選び、彼の言葉は伝説となりました。『THIS IS IT』で語られたマイケルのメッセージは、ずっと後世の地球と人類のこころに宿っていくでしょう。

 また本作ではスリラーの3D版新作の映像など、各曲の主題に繋がる映像部分盛り込まれていました。挿入された映像の完成度は高く、どれもが1本の作品として映画化されても可笑しくない内容です。
 映画と音楽コンサートのシームレスな結合をマイケルが狙っていたとすれば、かなり完成されていたと思います。
 クラシックファンの小地蔵は、のだめは語ってもマイケルの音楽は語る資格はありません。映画面とマイケルの死の意味するものについてのみ触れさせていただきます。

 なお、エンド・ロール最後にも映像がありますので、最後までご鑑賞を。

流山の小地蔵