劇場公開日 2009年10月28日

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マイケル・ジャクソン THIS IS IT : 映画評論・批評

2009年11月2日更新

2009年10月28日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

マイケルを永久不滅のアイコンとして定着させるショウビズ界のしたたかさ

これは幻となったロンドン公演を、リハーサル映像の巧妙な編集によって擬似的にスクリーン上で開催し、世界同時体感させる試みだ。マイケルへの想いが募る構成に唸らせられる。劇場パンフなき期間限定興行という宙づり感は、関連商品の購買意欲もそそるだろう。

リハーサル現場に立ち会い、息を潜めてマイケルの一挙手一投足を覗き見る錯覚に囚われていく。実力を温存したストイックな姿勢とスタッフへの謙虚さに魅せられるが、本来コンサートDVDの特典映像となるはずの未完のパフォーマンスを大画面で披露されることに、完璧を期する表現者としての彼自身はきっと否定的であったろう。一方、ステージで映し出す予定だった新たなミュージック・クリップの挿入は、映画ならではの重層的効果をもたらす。3D版「スリラー」以上に、ハンフリー・ボガートやリタ・ヘイワースが息づくフィルム・ノワールの世界へマイケルが入り込む「スムーズ・クリミナル」のモノクロ映像が脳裏に焼きつく。それは、人種や性別を超えようとした彼が、時間の概念さえも超えた存在となる瞬間であり、銃弾の雨あられの中、死の影から逃げ惑う姿が実人生に重なってくる。

光よりも影に焦点を当てるべきドキュメンタリーの性質とは裏腹に、不世出のアーティストの最期をよりまばゆい光で包み、神格化することに貢献している。晩年の奇行や醜聞を捨象して、観る者をネバーランドへ連れ去るという意味において危うい魅力を放ちながら、不可解な死すら忘却させ、マイケルを永久不滅のアイコンとして定着させるショウビズ界のしたたかさを痛感する。

清水節

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