フィリップ、きみを愛してる! : 映画評論・批評
2010年3月2日更新
2010年3月13日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
「ゲイムービー」としてのお楽しみを真っ向から追求
ジム・キャリーとユアン・マクレガーがラブラブ! こう聞いただけでテンションが上がったというなら、その期待に間違いなく応えてくれる映画だ。うげーと思った人も、食わず嫌いを決めつけないでほしい。
ゲイに目覚めたIQ167の警察官が、「金のかかる」ゲイライフを満喫するため詐欺師に転身。刑務所で出会ったカレとの恋を守りたい一心で、さらに破天荒なでっちあげと脱獄作戦を繰り広げていく。これが実話だとは!
「バッドサンタ」の脚本を手がけた監督コンビ(脚本も執筆)は、この実話の面白さをすくい上げ、見事にエンターテインメント化してみせた。まずは主人公スティーブンの人物描写の的確さと、詐欺師人生の無軌道っぷり。そしてキャリーの神がかった熱演! 百面相俳優の面目躍如なわけだが、本人は終始いたって大真面目なところが好感を呼ぶ。加えてうれしい驚きは、マクレガーが子犬のような美少年に変身、恋する「姫キャラ」を体現していること!
もうひとつ称えたいのが、勇敢にも「ゲイムービー」としてのお楽しみを真っ向から追求している点だ。もちろんこれは、究極のラブストーリー。愛への一途さにホロリとさせられたりもする。でもこの話、男と女に置き換えたら面白さ激減でしょ? ゲイだからこその滑稽さをしっかり自覚し、男同士の下ネタやカラミも辞さない。それでも居心地の悪さはさほど感じさせず、ラブリーな色合いをキープ。その際どいラインが魅力的なのだ。
(若林ゆり)