劇場公開日 2009年10月10日

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「アメリカ人になりたかった男の悲喜交々」クヒオ大佐 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカ人になりたかった男の悲喜交々

2009年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

クヒオと名乗る詐欺師、決して天才的な能力があるわけではない。むしろ、詐欺師の落ちこぼれである。昭和70年代といえば、海外旅行はまだ一般的ではなく、日本人のアメリカ人に対する憧れやコンプレックスがまだ色濃かった時代だ。国際結婚に憧れる女性も多かっただろう。米海軍パイロットを名乗りながら、まったく英語が話せなかった男に引っかかったのは、そんな背景があったのかもしれない。
しのぶの弟にいきなり英語で語りかけられてガチガチに固まるクヒオが笑える。どんなに取り繕おうとしても、彼のパイロットとしての知識は経験ではなく、書物などの丸かじりなのだ。
正体がバレても逃げ出さないのは、単に女を騙そうとしたのではなく、一生懸命、米軍パイロットになり切ろうとしていたのではないか? 謎を残したままエンディングを迎えるが、解釈はいろいろで愉しい。(松雪泰子の、ちらっと敬礼のような仕草がヒントかも・・・)
境雅人の出演作は、どれも淡々とした内容ながら、観終わって数日経ってから、じわりとジャブが効いてくるような作品が多く、点数がつけづらい。(笑)
クレイジーケンバンドによるエンディング・テーマは、気品ととぼけた味を併せ持ち、この作品にぴったりだ。

マスター@だんだん