劇場公開日 2009年10月10日

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クヒオ大佐 : 映画評論・批評

2009年10月13日更新

2009年10月10日よりシネクイント、新宿バルト9ほかにてロードショー

コンプレックスに囚われたクヒオの必死さがおかしい

英語も話せない純日本男が、米軍パイロットの制服と怪しげなカタコト日本語だけでアメリカ人に化けて、女を騙すなんて、あり得ない。クヒオ大佐結婚詐欺事件を昔ニュースで聞いて感じた疑問に、吉田大八監督はスコーンと答を出してくれた。

海外旅行が今ほどポピュラーではなかったちょっと前の時代。騙される側の心理には、大国、先進国のアメリカに憧れと負い目を感じる複雑な感情があるというのだ。確かに、アメリカ人と交際しているだけで優越感をくすぐられるなんてことは、誰にでもあるかもしれない。そんなアメリカ・コンプレックスの上に危うく成り立っている騙し合いという切り口が、まず面白い。コンプレックスのない被害者の弟が、電話1本でクヒオの正体を見破るシークエンスにその状況が鮮やかに出ている。そしてクヒオ自身が誰よりもそのコンプレックスに囚われているとしたことで、人間ドラマとしての面白さも出た。現実の自分から最も遠い存在であるアメリカ軍人になることで、彼は辛い過去を否定し、理想の自分になろうとしたのではないか。うら寂しいアパートに帰って1人になってもアメリカ人姿勢を崩さない彼に、その必死の思いを感じて可哀想になり、同時に笑ってしまった。軍人をアピールして突然腕立て伏せを始めたり、騙す相手の車を追って全力疾走、息も絶え絶えになったり。本人が必死になればなるほど、おかしさがアップする演出が小気味いい。

(森山京子)

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