「ノーラン作品ではやっぱりこれが一番面白い!」インセプション 閑さんの映画レビュー(感想・評価)
ノーラン作品ではやっぱりこれが一番面白い!
アマプラで2回目視聴。ノーラン作品は世間的にはCGを使わず実写に拘る映像美という部分が強めに評価されてて、インターステラーやダンケルクのほうが評価されがちだけど、個人的にはインセプションがダントツ!(テネットとあわせてツートップかも)
評価されにくい原因はストーリーの難解さ(金ローで放映されたときはわざわざ今何階層目という解説付きだったという異例の対応(笑))といわれるけど、そこが面白いんでしょ!複雑なストーリーに頭の中ぐちゃぐちゃにかき回される感じ(結局ラストの老いたサイトーは5階層目だったのか?)、1階層目ではまだコマ送りで車が落ちていくなか2階層目・3階層目でまだドタバタやっててなかなか終わらない(笑)ハラハラドキドキ感、大きく広げた風呂敷を最後に一気に畳んできれいに終わらせる爽快感、そしてそれを支えるCGを使わず実写に拘る映像美…。何回見てもエンタメとして完成度が高くて見終わったあとの満足度がすごい。
映像としても当然完成度が高く、無重量の中銃撃戦をするシーンはホントにセットをグルグル回して撮影したそうだし、電車が街の中を車を跳ね飛ばして走るシーンも実写とのこと。実写によるリアリティは当然のこととして、夢の階層が深くなるほど暗く現実離れしていく風景、雪山のシーンで白一色の画面はうら寂しい心の中に秘密を厳重に守ってる心象風景としても美しい。ストーリーと映像どっちも完成度高いのがより満足感を高めてくれる。
ラストのシーンもここのレビュー見てようやく言語化できたけど、トーテムのコマが止まるか止まらないかは重要ではなくて、メタ的に映画内の登場人物と同じことを観客に体験させてるという面白い趣向。映画が終わってスタッフクレジットの画面に切り替わった瞬間「ハッ!……フ~」となる感覚は劇中でキックされて目覚める感じと同じだし、そのことを考えると映画という装置を通して観客が同じ夢を見ていたともいえるし、そう考えると映画から覚めたこの現実はホントに現実…?実は夢の1階層目だったりしない…?となる。さらにラスト、ずっと振り向くことがなかった子どもたちが振り向くことでホントに現実に帰ってこれたんだと思わせつつトーテムのコマが止まる瞬間を見せないことで「実は夢なのでは?」というアイデアを観客に植え付けている、そして観客は一度植え付けられたアイデアから離れることができず考察をSNSに書いたりする…。ラストを見せないことで観客に判断を任せますという単純なオチでなくて、映画の枠を超えて現実を侵食するためのラストシーンというすごさ。
「人の夢に入り込んでなんやかんやする」というアイデア自体はSFでは使い古されたネタだしアイデア自体は誰でも思いつくけど、これだけ複雑なストーリーを2時間にまとめ上げて、かつ実写にこだわって映像化するのは並大抵の人間にできることではない。映画評論家がエラそうに「使い古されたネタ、色気がないからダメ」なんて意味不明な批評をしていたが、私はこの作品大好きだ(そして映画評論家はあてにならないというのを確認できた(笑))。国語の授業の影響かすぐ「作者が伝えたい思い」とかを言いたがる・映画に重要視する人がいるけど、この映画で監督が言いたいことは「俺の頭の中のアイデア、それと技術、どっちもすげぇだろ!」の一言に尽きる。機会があったら何回も繰り返し見たい映画だった。