「小説より“希”なりな実話」インビクタス 負けざる者たち マージョさんの映画レビュー(感想・評価)
小説より“希”なりな実話
90年代、南アフリカ共和国で、長く白人が黒人を虐げた政策がやっと終焉。本作は、超大国アメリカに先駆ける一国の“チェンジ”のエピソードだ。
黒人にしてカリスマ的指導者マンデラを新大統領に迎えた後も、国内は一触即発。新聞の見出しは《選挙に勝てても、国を率いていけるのか?》
この難題に挑むため、マンデラはスポーツ、それも白人が好み黒人が嫌うラグビーに目をつける。
『マンデラの名もなき看守』のヘイスバード版マンデラは、威厳たっぷりだった。けれど、この場合Mフリーマンがふさわしい。世界的偉人に対してあれだが、どこかタヌキな、もとい強かなマンデラ。
白人との融和に反発する黒人達も、彼に「寛容になりたまえ。私ゃ牢獄で27年…」と遠い目されれば、すごすご(^^;
老齢に激務、家庭不和に悩みつつ、黒人をなだめ白人を手懐け、気づけば皆して彼の手の平で転がされ。やっぱ古だぬき…失敬。悪名高い旧政府から生き延びたのも、おそらくこの強かさあってこそ。
一方、イーストウッド監督は、得意のサスペンスフルな手法を抑え、あっさりと仕上げている。やや拍子ぬけも納得した。
マンデラが白人に希望を与えようとした理由を「人間的な打算」と映画は言う。全ては国家統一のための手管。だが最終的に、隠し味の慈悲こそが、国民を動かしたのだ。たった一日でも、かつての敵と喜びを分かち合えたあの日、黒人も白人も等しく幸せだったと思う。
小説より“希”なりな事実に、上乗せの感動など要らないと、監督はよく知っている。
美味しい小料理屋で、無口な店主クリントがくれたサービス。メニューにない素材勝負の小皿は、意外にもなかなか旨い。
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