劇場公開日 2009年10月10日

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「昭和のホラー漫画を彷佛!」エスター きらこゆさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0昭和のホラー漫画を彷佛!

2009年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

原題は『orphan』孤児ですが、
邦題はorphanの少女の名前『エスター』
『オーファン』じゃ『オーメン』の二番煎じみたいだし、いいんじゃないですかね。

日本の宣伝文句『愛らしい孤児エスターの驚愕の正体が暴かれる時、 全世界の悪が、ひれ伏す』

ま〜大げさ!と言いたい所ですが、私その日の夢に見る程でした…
本当に怖かった!
オーメンみたいな悪魔の子とか超常現象とかアメリカ映画にありがちな宗教がらみの映画なのかと思ったんだけど、全然違いました。
霊的なものより、現実はリアルで怖い。

悪魔のような子供の映画と言えば、なつかしのカルキン少年『危険な遊び』とか『悪い種子』などもあるけど、エスターは2・3枚くらい上手。
上手の理由はその正体にあるんだけど、映画を先読みする自分でも衝撃の正体でした。反則ぎりぎりのグロテスクな正体は衝撃でした。

とにかく頭が良い(ずる賢い)エスターちゃんは養母を精神的に追いつめる、追いつめる。
死産のショックでアル中の過去がある養母は、エスターの企みのおかげで周りに信じてもらえない。
プロのカウンセラーまで騙してしまうエスター。
周りに信じてもらえないのは一番の恐怖、『ここまでやるか!!』と思う程、執拗な追いつめ方に見ている間中ハラハラして手が冷たくなってしまったよ。
エスターが養母を追いつめるのには理由があって…
その理由が正体に関わってくるだけどぉ。。グロい。怖い。哀しい。

登場人物も無駄がなくて素晴らしかった。
養父、基本良い夫でありよい父親でもある。精神的に追いつめられた妻を理解しようとしない所にイライラしたけど、彼の気持ちも解らんでも無かった。
一番可哀想な人でした。

養母の実子である兄妹。兄は初めからエスターがダサイ(ひらひらブラウスにチョーカー、ベレー帽の格好)と嫌悪感。
父母の関心を集めるエスターに嫉妬して学校でも冷たいが、所詮エスターにとっては赤子同然。あっと言う間に形勢は逆転する。

妹がまた良い。聴覚障害がある少女なんだけど、初めは優しい姉エスターを崇拝している。読唇術に長けていてエスターの命令で親の話し合いを盗み見してスパイになったり…

伏線も盛りだくさん
なぜ首にチョーカーをしてるの?
なぜ入浴中、鍵を閉めるの?
なぜ絵とピアノがプロ級なの?
なぜ歯医者に行きたがらないの?
彼女が持っているボロボロの聖書の中身は?

気づいた伏線は全て回収されました。

ただラストに近いシーンでのエスターの姿に会場から失笑が漏れました。
ちょっと滑稽で私も笑っちゃった。
こちらはずっと追いつめられた状態だったからちょっとホッとしたよ。
アメリカでもあそこは笑えるシーンなのかな?
狙ってだったら、この監督はすごい。

2時間、全然飽きずに見られた。
エスターが出てくまでの養母夫婦のシーンが長い気もしたけど。
丁寧に描いてるから、養母により感情移入できるし。
ただ、最初の死産のシーンがなんともグロくて。
のっけからこうだから結構きつかったです。

裏読みしすぎだけど、アメリカ人がすぐにカウンセラーに頼る事とか
最近のセレブの養子の流行についてもチクリと言っている気もしました。
逆に、孤児院協会とかあったらこの映画訴えられそうな気もするけど

とにかく『エスター』すごく面白かったです。
なんとディカプリオが製作者に名を連ねてます。
彼曰く『なんどでも見たくなる映画』だそうです。
製作者の手前味噌な意見かもしれないけど、
私もやっぱり見逃した伏線をもう一度確認してみたいと思える映画でした。

それにしてもエスター役のイザベルちゃん、すごい。
エクソシストのリーガン役のリンダ・ブレアと同じく、
ずっとエスターと言われ続けそうで可哀想だけど。
賢くて天使のような表情と悪の表情のギャップがすごすぎました。

とにかく自分のツボにハマり過ぎの映画でした。
昔愛読していた昭和のホラー漫画テイストを彷佛させてくれて大満足。
つじつまのあわない所も多々あるんだろうけど、力技でグイグイ持って行くパワーに圧倒の2時間でした。

エンドロールにコネタがあるので、是非席を立たずに見て下さい。
制作者の遊び心にこちらもニヤリでした。

きらこゆ