劇場公開日 2009年10月31日

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「底知れない“闇”を抱えた傑作ミステリー」母なる証明 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0底知れない“闇”を抱えた傑作ミステリー

2009年11月6日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

何か恐ろしいものを観た。
この映画を思い出す度、そう思わずにはいられない。

ミステリーとして決して珍しい筋立てではないのだ。
だがポン・ジュノ監督の見事な演出は観客の首根っこをがっしり掴んで放さず、本作を、身震いするほどの戦慄が幾度も訪れる最高水準のミステリーに仕上げてみせた。

にも係わらず、この映画は事件解明にさほど興味が無い。
この映画の主役は“闇”だ。
事件を追うほどに深度を増してゆく人の心の闇だ。

息子に対してグロテスクとも思える愛情を注ぎ、言動の端々に強迫観念じみた何かを匂わせる母。
誰より無垢で鈍重な心の持ち主に見えながら、時折不気味なまでの鋭敏さを垣間見せる息子。
軽薄に見えた男が突如として放つ凄まじいカリスマ性。
携帯電話に照らし出された少女の表情に宿る怨念。
この映画の登場人物は皆、得体の知れない闇を抱えている。
我々は彼らの心の内を完全に理解する事は出来ない。我々が現実に出会う人々と同じように。

深く暗い井戸のような、覗き込まずにはいられない不気味な魅力を放つ怪作。

戦慄・悲哀・狂気・希望・憐憫・そして僅かな滑稽さ。
あらゆる感情を呼び起こすラストが頭に焼き付いて離れない。

浮遊きびなご
レモンブルーさんのコメント
2020年10月19日

ラストの5分間で凍りつきましたね。忘れようと針を打つ母…なんとも哀しい姿でした。

レモンブルー
レモンブルーさんのコメント
2020年10月18日

怖い映画です。が、母親である私は 彼女の気持ちは分かる気がしました。さすがにあそこまでの事は出来ないし しませんが…。それより息子が怖かったです。なんとも…。

レモンブルー