劇場公開日 2009年10月24日

沈まぬ太陽のレビュー・感想・評価

全72件中、1~20件目を表示

4.0【88.7】沈まぬ太陽 映画レビュー

2025年8月17日
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鑑賞方法:VOD

2009年公開の映画『沈まぬ太陽』は、山崎豊子の同名小説を原作とし、大規模なスケールで製作された社会派ドラマの傑作。航空会社の腐敗と、それに抗う一人の男の半生を描き出す。作品の完成度は極めて高く、日本映画史に残る重厚な作品として評価される。
作品の完成度
圧倒的な情報量と重厚なテーマを202分という長尺に凝縮した、驚異的な完成度。原作の膨大なエピソードを丹念に描き出しつつ、人間ドラマとしての深みを失わない脚本の妙技。アフリカでの壮大なロケーション撮影、御巣鷹山での墜落事故現場の再現など、細部まで徹底的に作り込まれた映像は観る者に強烈なリアリティを突きつける。企業内の権力闘争、労働組合の対立、そして国家のあり方といった複雑なテーマを、主人公・恩地の孤独な闘いを通して鮮やかに描き出す。社会派ドラマとしてだけでなく、一人の男の生き様を描いた人間ドラマとしても比類なき傑作。日本社会の闇を鋭く抉り出し、今なお色褪せない普遍的なテーマを持つ。
監督・演出・編集
監督は若き日の苦労を重ね、日本映画界の巨匠となった若松節朗。彼の演出は、静謐な抑制と情感の爆発を巧みに使い分け、観客の感情を深く揺さぶる。特に、恩地がアフリカの僻地で孤独に過ごすシーンや、御巣鷹山での墜落事故後の混乱を描いたシーンは、過剰な演出を排し、映像そのものが持つ力を最大限に引き出す。編集は、時系列を前後させながら、登場人物の過去と現在を織り交ぜる複雑な構成ながら、物語の骨格をしっかりと保ち、観客を飽きさせない。重厚なテーマを扱いながらも、エンターテインメントとして成立させているのは、若松監督の卓越した演出と編集の賜物。
キャスティング・役者の演技
* 渡辺謙(恩地元)
国民航空の労働組合委員長を務め、会社の不正を追求したためにパキスタン、アフリカの僻地へと左遷される主人公。渡辺謙は、恩地が味わう苦悩、孤独、そして不屈の精神を見事に体現。彼の演技は、抑制された感情の中に激しい情熱を秘めており、観客は恩地の心の叫びを肌で感じることができる。特に、アフリカでの過酷な生活の中での苦悩や、御巣鷹山での遺族への対応に苦慮する姿は、俳優としての真骨頂を発揮。権力に屈することなく信念を貫く男の生き様を、圧倒的な存在感で演じきった。彼の演技なくしてこの映画の成功はありえない。
* 三浦友和(行天四郎)
恩地の同期でありながら、出世のためには手段を選ばない男。労働組合の分裂後、会社の中枢に食い込み、恩地と対立する。三浦友和は、行天の冷徹さ、狡猾さ、そしてどこか哀愁を帯びた人間性を巧みに演じ分ける。恩地と行天の対立は、物語の主要な軸の一つであり、彼らの演技のぶつかり合いは観る者を強く引き込む。特に、恩地を前にした時の、複雑な感情を宿した表情は秀逸。行天というキャラクターの多面性を引き出し、物語に深みを与えている。
* 松雪泰子(三井美樹)
御巣鷹山で起きた航空機墜落事故の遺族。夫を亡くし、国民航空に対して激しい怒りと不信感を抱く。松雪泰子は、悲しみと怒り、そして絶望を抱えた遺族の心情を生々しく演じきる。彼女の演技は、事故の被害者の声なき声となって、観客に強い共感を呼び起こす。特に、国民航空の対応に抗議するシーンは、鬼気迫る迫力に満ちており、観客の心に深く突き刺さる。
* 香川照之(八木和夫)
国民航空の運輸部所属の整備士。御巣鷹山墜落事故の犠牲者となり、遺体となって恩地と対面する。わずかな出演時間ながら、香川照之の存在感は圧倒的。彼の演技は、事故の悲劇を象徴する重要な役割を果たす。遺体安置所で恩地が八木の遺体と対面するシーンは、この映画における最も印象的な場面の一つであり、香川の演技がその重みを増幅させている。
* 石坂浩二(利根川泰司)
国民航空の新会長。腐敗した組織の再建を託され、恩地を特別室に迎え入れる。石坂浩二は、利根川の知的で穏やかな佇まいの中に、改革への強い意志と覚悟をにじませる。恩地と対話するシーンは、物語の転換点であり、彼の落ち着いた演技が物語の緊張感を高めている。
脚本・ストーリー
山崎豊子の原作小説が持つ壮大なスケールと重厚なテーマを、過不足なく映画の脚本に落とし込んだ手腕は見事。航空会社の組織的な不正、労働組合の分裂、そして未曽有の航空機事故という複数の要素を、主人公・恩地の視点を通して統一感のある物語として構築。人間性の本質、組織と個人の葛藤、権力と信念の対立といった普遍的なテーマを深く掘り下げている。原作の持つ社会派としての鋭い視点と、人間ドラマとしての深みを両立させた脚本は、日本映画の歴史に残る傑作。
映像・美術衣装
アフリカでのロケーション撮影は、乾いた大地と灼熱の太陽を捉え、恩地の孤独と苦悩を視覚的に表現。一方で、御巣鷹山の墜落現場の再現は、悲劇の現実を観客に突きつける。国民航空の社屋や役員室、恩地の自宅など、細部にまでこだわった美術は、それぞれの場所が持つ空気感を正確に伝えている。衣装も、登場人物の階級や立場、心情を反映しており、物語のリアリティを高める重要な要素。
音楽
岩代太郎が手掛けた音楽は、物語の重厚なテーマに寄り添い、観客の感情を揺さぶる。特に、恩地が一人でいるシーンや、御巣鷹山での悲劇を描いたシーンで流れる音楽は、静謐でありながらも力強く、映像の力を最大限に引き出している。主題歌「見上げてごらん夜の星を」は、坂本九の歌声が主人公の心情と重なり、希望と悲哀を表現。映画の感動をさらに深めている。
受賞・ノミネート
* 第33回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(渡辺謙)、最優秀助演男優賞(三浦友和)など、全12部門で受賞。
* 第34回報知映画賞最優秀作品賞、最優秀主演男優賞(渡辺謙)受賞。
* 第64回毎日映画コンクール日本映画大賞受賞。

作品
監督 若松節朗
124×0.715 88.7
編集
主演 渡辺謙A9×3
助演 三浦友和 A9
脚本・ストーリー 原作
山崎豊子
脚本
西岡琢也 A9×7
撮影・映像 長沼六男
A9
美術・衣装 小川富美夫 B8
音楽 住友紀人 B8

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honey

4.0身を粉にして働いても報われない

2025年1月6日
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鑑賞方法:TV地上波

国民航空ジェット旅客機が運航不能 になり墜落した。渡辺謙扮する国民航空社員元組合委員長恩地元らは遺族の世話役を申しつかったが国民航空は加害者という事で情報すら無かった。
日航事故の当事者も遺族も何年経っても時期が来ると辛いだろうな。特に組合関係者は会社でも扱いが変わるだろう。身を粉にして働いても報われない場合もある。組合なんてやるもんじゃないさ。熱演ではあったが、昔の話とはいえ後味が悪い展開だったね。

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重

3.0史実をベースにしてフィクションを重ねる巧妙な映画‼️❓

2025年1月2日
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テレビの録画、何度目か鑑賞、事故は史実ですがそれ以外は創作です、組合委員長の主役は実在していて事故関係以外の生活は本人そのものなので紛らわしいです、事故には何の関係も無い人です、何故か色眼鏡で見ているストーリー、企業の責任は追求すべきですが正しくしてほしいものです、これが全てフィクションなら評価できたかもしれませんが、いい演技ですが、残念です、何度も言いますがみんないい演技です、みんなこの映画は事故以外全てフィクションなのでそれを念頭に観てください、くどくてすいません。

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アサシン5

4.0『あんたは偉い』の沈みきった大和と国営企業の最後。

2024年11月22日
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マサシ

3.5JAL123便の事故をベースにしたフィクション

2024年8月13日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

難しい

昭和60年8月12日の日本航空123便墜落事故がモデル。
当時のファッションや小物が沢山登場し、墜落事故現場の映像は本格的であるが、実名も登場しないし、名前だけ変えて事実を再現したわけでもない。

実際にあった事故をベースにしている物語で、主人公(渡辺謙)に感情移入しながら観る家族と仕事のヒューマンドラマ。
ケータイ電話を使っている人がいないし、どこでも煙草を吸えた頃を再現していてノスタルジー。
ラストの映像が美しい。

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Don-chan

2.0長い

2023年12月31日
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プライア

3.5長い作品だが、見応えはあった。主人公の恩地が遺族担当をしながら組合...

2023年8月23日
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知的

長い作品だが、見応えはあった。主人公の恩地が遺族担当をしながら組合委員長時代、外国左遷時代が描かれる。後半、会長の命の下再建の為に動く姿が描かれる。作中、国見会長や恩地が遺族の為と何回か言うが、遺族との事は、少しずつ。TVの方が遺族との事をよく描いていた。

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りか

3.0山崎豊子の超大作の映画化。 映画に全て収めるにはちょっと無理ありか...

2023年4月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

山崎豊子の超大作の映画化。
映画に全て収めるにはちょっと無理ありか。
それぞれが薄く見えてしまっている感じもするが、あらすじ的に観るにはいいのか。
ラストがあっさりしていて物足りなさはあるものの、航空機事故の痛ましさや遺族の気持ちが痛烈に伝わってきました。
原作未読だったため、原作を読んでみたいなと思います。

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よっしー

4.0冒頭から辛い。

2023年3月2日
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2023
20本目

あのジャンボ墜落事件を軸にストーリーは構成されており、会社の腐敗、国の癒着問題などなど盛り沢山な問題に立ち向かおうとする一社員の話。

冒頭のシーンから、もう辛い…
あの飛行機に乗らなければ…
あの時間の航空券を買わなければ…
出張を断っていれば…
そんな後悔を抱え、生きていく。
その辛さはやはりご本人しか分かるわけが無い。

そんなご遺族達に向き合いながらも、誰1人の心を癒す事はできない。

そんな中でも、
明日を迎え、また生きる、生きてしまう。

ご遺族達は明日を約束された夕日はどう見えるのか。

長い映画だが、骨太映画で見応え充分でした。

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M.T

3.5原作が凄いだけにしょーがない…。

2022年9月27日
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自分には珍しく原作が先で鑑賞。
かなり『はしょった』内容だったが、あの山崎豊子さんの原作を1本の映画で描くのは無理があるので、しょーがない。
その中でも良くここまで作ったと思うし、俳優陣も良かった。石坂浩二、三浦友和、松雪泰子等好きな俳優ばかりで、特に渡辺謙は流石だとおもった。
御巣鷹山の悲劇があってもなお、変わらない腐った某会社に後味悪いけど、どこまでホントの話なのか!?

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トラ吉

4.0予兆と遠因

2022年6月16日
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泣ける

悲しい

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しゅうへい

4.5大根役者と思っていた三浦友和の悪さと弱さ見せる演技が素晴らしくて、驚かされた

2022年2月21日
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原作の良さを活かした、なかなかスケールの大きな映画であった。左遷というけれど、アフリカまでとは。そのしつこさや闘う姿勢が米国映画風で、アフリカの大自然捉えた映像も印象的だった。

若松節朗監督による2009年公開の角川制作の日本映画。脚本は西岡琢也、撮影は長沼六男、配給は東宝。

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Kazu Ann

3.0重厚な物語だけど、楽しみどころがよくわからない

2021年9月19日
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鑑賞方法:VOD

 3時間の長編で非常に重厚な物語でした。見ごたえは十分にあったんですが色々な話が散りばめられているので、話の主題がよくわかりませんでした。
 描きたいものが、主人公の半生なのか、生き様なのか、家族の絆なのか、日本航空の経営再建の話なのか、権力闘争なのか、不正問題なのか、労組問題なのか、御巣鷹山事故なのか。あっちへ行ったりこっちへ行ったりで、結局どのテーマをメインに映画を観ればいいのかわかりませんでした。長編小説を短い(と言っても3時間ありますが)時間に収めようとしたせいでしょうか。これは小説で読んだ方が満足感が高いんだろうなという印象です。
 主人公にしても、不当人事で海外勤務を命じられて苦しい思いをしたことになっていますが、その海外では、門付きの立派な豪邸に住んで、休日にはハンティングを楽しんでいる様子。全然苦しそうに見えなかったんですよね。もっと危険が隣り合わせの日常だったり、過酷な住環境、労働環境だったりすれば見方も変わったんでしょうが。日本に残った労組仲間の方がよっぽど辛そうでした。

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N T

3.0実話を元にしているのか。 それなら仕方がないが、正直者が馬鹿を見る...

2021年6月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

実話を元にしているのか。
それなら仕方がないが、正直者が馬鹿を見るし、悪がすっきりと裁かれない話で観ていてもやもやした。
3時間12分の超大作はちょっと疲れた。
三浦友和が悪役を演じるのは珍しいのでは。

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省二

5.0実話を元にしてるだけに引き込まれます

2021年4月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

原作はもちろん、演出演技美術など全ての総合力がすごい映画だと思いました。
どんな企業不祥事にも、組織的な関与があるのだと思わされます。
映画を客観的に見れば、誰の役のようになりたいと思うものですが、すごく難しい。
正義を貫き自分に正直に生きようとすると、現代社会は生き辛いものなんだと。
ただただ、自律飛行ができる組織に変わっていることだけを望むだけです。

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かずじー

5.0「沈まぬ太陽」が意味するものとは

2021年4月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

白い巨塔、華麗なる一族、不毛地帯
どれも巨匠山崎豊子の不朽の名作です
そしてその映画化された作品もまた日本映画の至宝と言える作品ばかりです
本作もそれに連なる名作であることは間違いの無いことです

某航空会社とそのジャンボジェット機墜落事故が物語を中心になっています
しかし本作の真のテーマは違う所に在るのだと思います

本作の原作は1995年から1999年にかけて週刊誌に連載されました
つまりバブル崩壊が誰の目にも明らかになり、単なる不況ではない奈落の底に転落していくものなのではないのかと思い出した年から、その奈落の底にどんどん転落していき、恐慌の一歩手前
いやあと半歩で地獄の釜の蓋が開く
そんなところにまでいった年まで
その全期間を通して連載がなされたのです

国民航空とはナショナルフラッグです
つまり日本そのものを象徴しているのです

その国民航空という会社を通して日本のバブル崩壊とそれに翻弄される国民そのものを描いているのだと思います

だから「国民」航空という名前になっているのです
その原作の意図を監督はよく捉えて、そこに絞り込んで映画化されていると思います

沈まぬ太陽とは何か?
赤い夕陽
日本経済の斜陽、それが夕陽
しかし沈まない
それは決して沈ませることはできないのです

でも太陽は必ず沈むもの
一日の寿命があり、また翌朝東の空に蘇って昇るものです

そこには矛盾があります
だから無理なものを無理やり生き延びさせているということです

それは国民航空のことであり、当時明らかになってきた不良債権、巨額負債の巨大企業のことでもあります

主人公の恩地や行天達はその国民航空の矛盾の中で翻弄されているのです

テレックス、今の電子メールみたいなものです
その電文一枚で海外赴任が命ぜられます
自分も海外こそ有りませんが国内をFAX一枚で転勤を繰り返したものでした
新婚早々新生児を抱えて見も知らぬ土地に行ったことを思い出します
赴任先ではまず人間関係をと毎日飲み歩いて午前様でした
どれほど妻は心細かったことでしょう
次の任地で子供達が小学生に育った頃、また遠く離れた標準語と方言の違う地方に転勤しました
子供達にも、友達とはなれ離れにさせ、標準語で生意気だといじめられ、苦労をたくさんかけてしまいました
単身赴任も長くやりもしました
理不尽な左遷も経験しました
本作程のことはなくても、誰しも経験のあることことだと思います
鈴木京香の演じた恩地の妻りつ子の台詞は心に突き刺さるものでした

そしてバブル崩壊は、どんな一流会社でもリストラに追い込みました
どんどん営業成績が落ち込んでいくのを、あの手この手で、身体を壊す程働いて食い止めてきた社員を会社は大規模なリストラを断行せざるを得ないところまで行ったのです

そのとき社員の心に、日本人の心に何か起こったでしょうか?

アフリカで子供達とサッカーに興じて倒れ込むシーンはその見事な映像表現であったと思います
壊れてしまった会社への信頼、忠誠心、親しみ
今までの価値観
それらが総て崩れ去ってしまったのです
アフリカの地平線を見たときそんなものどうでもよくなったのです
それこそが本作の映画化のテーマになっていると思います
渡辺謙の演じる恩地は正にそのテーマに沿った演技であり見事だったと感嘆しました

沈まぬ太陽、アフリカの夕陽は二度画面に登場します
一度目は冒頭のタイトルバックで、二度目はエンドロールでです

そして一度目のものは赤い夕陽が逆転した日の丸のようにハッキリと写されます
そしてエンドロールの夕陽は雲が掛かって丸い太陽は見えないのです

本作が公開されたのは2009年10月

その前年2008年リーマンショックという世界的経済危機が起きました
バブル崩壊はなんとか切り抜け、巨額の不良債権問題、ゾンビ企業といわれた巨額負債の大企業にもメスがはいり、その処分に目処もついて景気もようやく上向く気配が出始めて来た矢先でした

当時、自分は毎週のように新幹線で東京大阪を行き来していましたが、それまで満員だったのがみるみるうちに客車が空っぽになったことを覚えています
欧米諸国の金融機関は恐慌になりかけており、日本にも確実に波及すると身構えなければならなかったのです
バブル崩壊の時の悪夢がまた繰り返されるという予感がしていたのです

そして2009年
その年8月の総選挙で政権交代が起こったのです
冒頭の巨象が恩地のライフルで眉間を撃ち抜かれて倒れるのはこのことを象徴しているように見えてきます
もちろん原作にあるエピソードで、このシーンをCGで作り上げて挿入するほど大事な意味があります
それが不思議なことに妙に現実と符合してしまっているのです

今度こそ沈まぬ太陽が沈んでしまうかも知れない
その最中に本作は公開されたのです
映画の神様の運命のいたずらなのでしょうか?
正に時節に一致した映画であったのです

また沈もうとする太陽を、無理やり沈ませないようにしなくてはならなくなったのです

本作公開以降に、世界的な超一流大企業にもかかわらず、不適切会計という粉飾事件を起こした会社、損失隠し問題が発覚した会社があり新聞の一面を騒がす騒動もありました
超一流の監査法人も、巨大株式幹事会社もそれに手を貸していたのです

あのような事件の中では、多くの行天や恩地、不正に都合よく利用された八木といった本作の登場人物と同じような人間が数限りなくいたことでしょう
その会社だけでなく日本中の会社であったはずです

自分のいた会社も然りでした
本作のような世界は本当にあるのです
太陽を沈ませないないなんて無理なことをやればこんな事になってしまうのです

精神に失調をきたしてしまう八木を演じた香川照之は見事でした
本当にあの様になってしまうのです
既視感があります

本作は某航空会社の事だけの話ではありません
日本中の会社に大なり小なり起こったことなのです

そしてこれからも起きるでしょう
本作を観たあなたが、行天になってしまうかも知れません
恩地のように辛い目にあいながらも戦うかも知れません
八木のように壊れてしまうかも知れません

某航空会社だけの物語ではないのです
日本の企業、組織で働く、私たち全員の物語なのです

モデルとなった某航空会社は本作公開の僅か3ヶ月後に倒産しました
それからのことはご存知の通り
沈まぬ太陽はないのです

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あき240

3.0利権大国日本

2020年4月27日
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悲しい

原作未読なので、読んでみたいと思います。世間はコロナで大変なのに、政府は利権しか頭にないと思っていたら、今作も同じでした。所詮犠牲者は犠牲者でしかない。もっと本質を突いて欲しかったので、物足りなかったです。

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ミカ

1.0全部嘘ですよ、嘘話ですよ、現実を題材にしてるけど

2020年2月3日
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日航墜落の話を題材にしてますが、主役の行動は全て嘘の原作で問題になりました。
倫理的に許されないと思います。
主役の人も人間のくずです、演じてる俳優も、モデルの人も。

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アサシンⅡ

2.0労働組合は正義で会社は悪!という山崎豊子の誤った認識のもとに創られ...

2019年11月21日
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労働組合は正義で会社は悪!という山崎豊子の誤った認識のもとに創られた残念な作品である。
大企業における実際の労組幹部というのは、ノーメンクラトゥーラ(いわゆる労働貴族)と化していて、労働者を搾取するとんでもない存在である。具体例を挙げればJR東日本の労組、JR東労組。
本作も航空機事故防止を言いたいのか日航を悪い会社だと言いたいのか労組は正義!と言いたいのか全然わからん。
なお私は別に山崎豊子が嫌いなわけじゃない。大地の子は好きだ。これは嫌い。それだけ。

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さすまー
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