「救急センター」ジェネラル・ルージュの凱旋 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
救急センター
難解な心臓外科の分野から、より一般人にもわかりやすい救急センターがメインとなっている。前回は阿部寛の立ち位置がどうも理解不能だったのだが、今回は非常にわかりやすい。救急医療の現場というのは時には心を鬼にしなくてはならないという現状にも納得がいった。倫理委員長として嫌々ながらも役目をこなす竹内結子の姿も前作以上か?そりゃ直接生死にかかわる分野じゃないからといって、あまりにもその職責と性格がぴったりしすぎ。
医療メーカーのメディカルアーツの磯辺(正名僕蔵)がジェネラル・ルージュの速水(堺雅人)と癒着しているという問題提起。しかし、それが表ざたになった直後に磯辺が病院ヘリポート付近から転落死。この事件(殺人事件とは断定されてない)はなおざりにして、速水の聴聞ばかりがメインとなる(まぁ、転落事故は警察の仕事だからしょうがないか)。告発文はワープロ文字と手書きの二つが登場するのだが、案外あっさりと速水は癒着を認め、しかも自分で着服せずに救急センターの設備と備品に使われたと主張。そして懲戒解雇要求に対しては辞表で対抗しようとする。
そんな聴聞委員会と化した倫理委。その最中に市内で大きな事故が起き、10年前にもあったように大学病院は野戦病院と化してしまうのだ。その描写はなかなか大がかりで感動せざるを得ない。黒、赤、黄、緑と色分けしたカードを瞬時に判断する山本太郎もかっこいい。この黒のカードをつける苦渋の選択・・・つけられた患者の家族の号泣はもらい泣きしてしまいそうだ。
結局、副委員長として懲戒解雇を言い渡す沼田(高島政伸)が三船事務長(尾美としのり)と密談していたことが磯辺の盗聴により発覚し、誰も解雇に賛成できなくさせた。そして磯辺を殺したのは沼田の部下(林泰文)だったという・・・彼の性格は精神医にありがちなタイプだけど、さすがに殺人までは・・・ちょいと余計だったみたい。
辞表を取り下げる意志はないと突っぱねる速水だったが、とぼけた田口委員長が北海道への転勤を命ずるなんて、まるで大岡越前の決断じゃないか(笑)。
最後は転勤する速水が辞め行く花房看護師長(羽田美智子)に「寒いところは苦手ですか?」と告白・・・う~む、そりゃわかりやすすぎ。「指揮官が青い顔してちゃダメでしょ」と口紅を渡したのが花房で、それがジェネラル・ルージュという名のもとになったのも面白い。
前作以上に医療現場と人命尊重というテーマが重く響いてくるし、病院経営の難しさ、特に救急医療が儲からないという問題点を提起してくれてる。だから、殺人事件がなければ満点にできたのに・・・