「駆け足でヒーローの活躍をピンスポット的に描かざるを得なかったでは?エンドロール後も話アリ。」キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
駆け足でヒーローの活躍をピンスポット的に描かざるを得なかったでは?エンドロール後も話アリ。
マーベルスタジオの一連のアメコミヒーロー物作品は、小地蔵は好んでおります。本作はその中でも、出発点
にあるキャラクターとして、一連のヒーローを連合させる「アベンジャー計画」の要となる作品と言っていいでしょう。
舞台は、ほかのヒーロー物と違って、太平洋戦争におけるナチスの一派ヒドラ党との戦いが描かれます。ナチス優勢のなかで、国民を熱狂させるヒーローとして、キャプテン・アメリカンは登場します。星条旗の星をアレンジした盾を振りかざして活躍するヒーローの姿は、最近国力を落として、中東では撤退が続き、意気消沈していたアメリカ国民を、劇中さながら熱狂させました。まさに国威発揚のための作品といっていいでしょう。あれを邦画でやったら、大変です。もし仮面ライダーが日の丸を掲げて大暴れしたら、サヨクの人たちが偏向映画だといって、抗議デモをするところでしょうね。愛国心の違いを感じさせてくれる作品です。
作品の見どころとしては、1940年代のアメリカの市街地を精巧に再現して、そこでスパイとキャプテンが息も切らさないほどのカーチェイスシーンを見せてくれるシーンの、アクションは迫力満天です。さすがは『スター・ウォーズ』旧3部作の特殊効果を担当した監督さんだけにあります。逃げるスパイの装備にしても、半世紀昔の話なのに、その当時の最新の科学機器が登場して、古くささを感じさせないのですね。ちょっと近未来を感じる不思議な感覚にさせてくれます。
後半のヒドラ党の科学兵器生産基地を巡る攻防戦にしても規模のでかい爆破シーンが続き、ストーリー性はともかくアトラクションムービーとしては申し分のない仕上がりでした。
もう一つの見どころは、キャプテンとなる前のスティーブか細い肉体が、スーパーソルジャー実験により屈強の肉体に変化するところです。余りのリアルな変化ぶりが見物でしょう。
さらに、ヒーローひとりが活躍するのでなく、ヒーローが救った109連隊のメンバーとチームを組み、共に作戦を遂行する姿にも共感できました。余り強すぎるヒーローよりも、チームのメンバーにも助けてもらうヒーローの方が感情移入しやすくなります
しかしヒロインとの恋や、当初キャプテンが戦費調達のための軍のマスコットとして扱われた苦悩など人間ドラマのエピソードでは、登場人物の心情が深く掘り下げられていません。また、眼の前で親友を死なせてしまうヒーロー物としてはあってならない事態にも、あまりキャプテンが苦悩する時間が与えられませんでした。
超人的なヒーローが多い中で、キャプテンの能力は人間の強化する範囲に限られています。人間の喜怒哀楽も増強してしまうので、感情がはっきりと出てしまうのが特徴なのです。そんなキャプテンの特性なのだから、恋と使命の狭間で悩む姿や友人の死に、自分の無力さに落ち込むところをもっと描いて欲しかったです。
しかし、他のヒーロー物の作品なら三部作程度で描かれるところをかなり強引に一本にまとめられているのでて、駆け足でヒーローの活躍をピンスポット的に描かざるを得なかったものと思われます。そして、エンディングロールの終わった後には、来年公開される「アベンジャー」の予告も入り、何が何でも、「アベンジャー」につながなくてはいけないというミッションを抱えた企画だったので、無理でたものと思われます。それにしても、空白の70年間はどうしていたのでしょうね。ヒロインとのデートのシーンが見たかったですぅ~(:_;)
本作は、アイアンマンと直接繋がっていることもポイントです。アイアンマンのトニーの父ハワード・スタークがスターク・インダストリーズの社長として登場して、キャプテンを物心両面でサポートします。キャラクターがトニーそっくりなんですね。「アイアンマン2」でも、トニーが父ハワードの遺品を調べるシーンが出てきます。そのなかで、キャプテン・アメリカの単行本らしきものが確認できます。また、トニーが自宅で新型アーク・リアクターを開発するシーンでは、1でも僅かに登場したキャプテン・アメリカの盾らしきものが登場します。ちなみに新型リアクターのコアである架空の元素「ヴィブラニウム」はキャプテンの盾の素材と同一素材です。
登場人物では、キャプテンの上司フィリップス大佐役のBOSS役ぶりが、凄い存在感を放っていました。伊達に缶コーヒー宣伝に出ているワケではありません(^^ゞ主役を喰う勢いです。
またヒロインのペギーの男勝りだけれど、色っぽい役どころも面白いのです。仕事第1と軍務に専念して、一見スティーブのことをシカトしているように見せておきながら、他の女性に言い寄られたりしているところを見るとあからさまにヤキモチを焼くところが可愛らしかったです。だからこそ、ラストのキャプテンとの別離を暗示させるシーンは、もっと悲劇的に描いて欲しかったなぁ~。
まぁとにもかくにも、エンドロールラストにはお約束のフューリー大佐が長めに登場して、来年公開の「アベンジャー」のさわりが駆け足で紹介されます。実際にオールスターのその数の多さを目撃してしまうと、ホントにこれまとめられるのかが心配になってきました。