buy a suit スーツを買う

劇場公開日:2009年4月11日

解説・あらすじ

失踪した兄・ヒサシを捜しに大阪から上京したユキは、ヒサシからの葉書の住所をもとに不慣れな土地・東京の街を歩く。吾妻橋のたもとにたどり着いたユキは、隅田川に添って点々並ぶ段ボールの家から出てくる兄ヒサシを見つける。「東京夜曲」「トニー滝谷」などで知られる名匠・市川準が仕事仲間とともに作り上げた自主制作映画で、2008年9月に急逝した市川監督の遺作となった。

2008年製作/47分/日本
配給:スローラーナー
劇場公開日:2009年4月11日

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(C)2008 Jun Ichikawa office Ltd.

映画レビュー

3.5 「メモワール市川準Vol.最終章 なぜか市川準監督の絶望感が伝わってきた」

2026年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

斬新

 市川準監督の遺作。59歳というあまりにも若い死に当時は愕然とした。次作の映画のクランクイン直前だったことで、訃報に呆然とした思いが今でも胸に浮かぶ。

 ただこの映画を観ると、なぜだか、市川準監督が社会の変化に強い絶望を感じていたように思えてくる。高層ビルが立ち並ぶ東京の街並みの中、世の中からドロップアウトしたホームレス。その兄に会いに上京してきた妹。

 兄が何度も語る「自己責任」。その言葉から、社会がいかに他人に冷たくなったのかを実感させられる。バブル崩壊後の低成長時代、確かに人間関係はぎすぎすしていた。他人のことなど考えられない、自分が生きていくだけで精一杯という社会情勢であった。だから「自己責任」という言葉が大手を振って歩いていたのだ。

 市川準監督が好んで映画の舞台にしていた東京の街が、1986年の「BU・SU」で描かれた、下町の風情や、人情味豊かな会話、鈴女の努力が報われる、そのような余地があった。それと比べると、本作の東京は、街並みも人も変わり果てた姿になったように見える。とにかく会話が聞き取りにくい。街の騒音で台詞がほとんど聞こえない。そこに人間不在の東京の街を表現したかったのではなかろうか。

 どこかに市川準監督の絶望感を感じてならない。本作には、生き生きとした躍動感がまったくない。なにか身動きできずじっと体を固くしているような印象をぬぐえない。それは、他人を思いやる余裕さえ失った社会の息苦しさの表れのように伝わってくる。

 市川準監督は、映像を積み重ねて映画を語る、従来のスタイルを踏襲している。しかし本作では、その映像の一つひとつが有機的につながらず、無機質な集合体のように見えてならなかった。まるで人が他人に優しくできない社会を描いているように。

 次作を控えていた市川準監督に、死の予感があったとは思えない。それでも遺作となった本作を観ると、東京の街と人の急激な変化に対する市川準監督の戸惑いと絶望が、図らずもこの遺作に刻み込まれているように感じてならない。

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かな

2.5 遺作だが実験的な自主制作の中編映画

2026年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

難しい

市川準監督の遺作となった自主制作の中編映画。市川監督は本作の編集を終えた直後に急逝した。

普段からキャラクターが面白いと感じていたCMの仕事仲間に素人キャストとして出演を依頼し、映画撮影の合間に自らカメラを回したとのこと。初のハイビジョン作品となった前作『あしたの私のつくり方』のDVD収録インタビューで、撮影カメラ(ハンディカム)の進歩に興味津々だった市川監督は「これなら1人で映画が撮れちゃう」と言っていたが、いわば本作は一種の実験的な作品だったんだろう。当然ながらこれが最後の作品になるとは思っていなかった市川監督にとって、次へのステップのような意味合いもあったのかもしれない。

レンタルDVDで観たが、音声がだいぶ聞き取りにくい。それでもなんとか聞こえるレベルには持っていったらしい。ただ、それ以上に市川監督にしてはかなり殺伐とした作風で、残念ながらあまり面白くない作品である。

市川監督は次作として太宰治原作の『ヴィヨンの妻』を予定しており、クランクイン目前だったとのこと。主演は菊池亜希子の予定で、並木愛枝にも出演を依頼していたそうだ。

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バラージ

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