劇場公開日 2010年3月12日

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「潜在能力は高いが、まとまりが悪く清涼感に欠ける」シャーロック・ホームズ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5潜在能力は高いが、まとまりが悪く清涼感に欠ける

2010年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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再現された19世紀末のロンドンの街並みや小道具は観ていて興味深い。色目も美しい。「スウィーニー・トッド」(2007)といい、いにしえのロンドンはビスタ・サイズがよく似合う。
卓越した観察力と推理力をもつホームズが、頭脳だけでなくアクションもこなす超人ぶりは、もはやジェームズ・ボンドの領域だ。
大袈裟な効果音、スローモーションの多用は、作品の流れをズタズタにした感はあるが、劇画調と思えば思えなくもない。時折、時間を遡って種明かしするカットは映画ならではの表現方法で、この作品の特徴的なスタイルになっている。
残念なのは、ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムスといった主役3人の魅力を充分に引き出せないまま終わってしまうこと。映画としては面白いのだが、どこか喉の通りが悪く清涼感に欠ける。3人が不完全燃焼の中、ただひとり魅力を引き出すことに成功したのはワトソンの恋人メアリー役ケリー・ライリーだ。こうなると、続編での彼女の扱いも気になるところ。
VFXでは、造船所での鎖の重量感がなんとも頼りない。巻き取り機にいたってはCGの絵が飛んでくるだけってな出来で、まるで恐怖感がない。
ホームズのユーモラスさと事件にのめり込む危うさを打ち出した音楽は、今年観た作品の中でもとくに映像とよく合っている。
続編は観たいが、図抜けて存在感を示すような作品ではない。ちょっと期待が大き過ぎたか? やはりガイ・リッチー監督が小手先だけでズタズタにしてしまったというのが正解か? 作品が持つ潜在能力は極めて高い。

マスター@だんだん