「It is written」スラムドッグ$ミリオネア penguinさんの映画レビュー(感想・評価)
It is written
原作者はヴィカス・スワラップという、日本でも大阪のインド総領事を務めたことのある人とのこと。エリートですね。インドの実態を知っている人というわけで、この映画の主人公の幼少期に描かれている内容は私が見聞きした話とも合致(実態はもっとひどいことも現在進行形で行われているとも)するわけです。
だた、それを淡々と映画で描いても目をそむけたくなるような内容になってしまうわけで、原作が実際この映画と同じ構成となっているのか、原作を読んでないのでわかりませんが、映画では観客は突然、インドの警察官が誰かを拷問にかける場面を見せられ、なぜ、彼がそのような境遇になっていたのかを見ていく展開となります。この構成が非常にうまい。単なる回顧禄形式の映画は数多くありますが、それを単に主人公が体験したことを振り返っていく内容にせず、クイズに全問正解して大金を稼ぎ、クイズ番組に参加することで人生最大ともいえる、ある目的を達成することに成功するという、サクセスストーリーとすることで終盤、見ている観客もカタルシスを得る内容となっています。
主人公がクイズの答えを知らなかったラストの問題。頼みの電話をしてもつながった相手は答えを知りませんでした。彼は答えを運命に委ねます。今までのクイズの答えはたまたま知っていたか、自分をおとしいれようとしたことに気づいて裏をかいての正解。でも最後は?この段階で彼はこの番組に出た目的を達成し、その結果に満足していた。なので当たればいいな、的な回答だったのかも。そしてその結果は。
ハッピーエンドに文句を言う人もいるかもしれませんが、映画は娯楽、見て面白かった、という内容にならなければ観客側としても、興行的に制作者としても成功とは言えません。多くの人が見て、楽しむ。これがある意味映画の最大の目的と思います。この映画は問題提起にもなっているし、残酷なシーンもありますが、最低限度に抑えられていて、制作者側の配慮が感じられます。
宗教的な観点。ほかのレビューで映画の中で主人公たちの母親がイスラム教徒だったため、襲撃され殺害される場面が心に残った、というコメントを見ました。ほかにもこの映画イスラム教関連が描かれています。タージマハールはイスラム教のお墓ですし、ラティカがラストシーンで黄色のヘジャブをかぶっています。
あと、冒頭に出てくる最初のクイズの選択の中の「d:It is written」。字幕では「運命だった」。ラストにももう一度出てきますが、これがなぜ、「運命だった」と訳されるのか?ネットで検索したところ、聖書からの引用とのことでした。今度はキリスト教。映画って勉強になるなぁ。