グラン・トリノのレビュー・感想・評価
全189件中、1~20件目を表示
人間の孤独、安寧、尊厳とは
日本公開2009年
数あるクリント・イーストウッド監督作の中でも、胸打つ名作だろう。
ミリオンダラーベイビー、ミスティックリバー、許されざる者、等々でアカデミー受賞歴もあり、父親たちの星条旗、硫黄島からの手紙、などの監督作も数知れず。俳優としても壮大なキャリアをもち、今作制作時は御歳78歳。
その後も制作、出演も続けて現在94歳。デヴィッド・リンチが先日鬼籍に入って、個人的に好きな監督や俳優が逝去する中。昨年、事実上の引退作とも言われている 非常に評価の高い 陪審員2番を制作。UーNEXT配信のみ、という個人的には非常にショックなこともある。ぜひ映画館公開してもらいたいが…。
今作。彼が監督としても最も脂が乗り切っていた頃の作品。この作品は現在アメリカに続く地平の物語でもある。
よく言われる人種のるつぼアメリカ、そもそもが移民国家のアメリカが背景にある。
クリント演じる朝鮮戦争に従軍、頑固にして差別用語連発のウォルト。隣に越してきたモン族の家族、一族との交流を通し、尊厳ある人としての生き方とは、というひとつの形がラストで感銘を呼び起こす名作。
モン族の少年が、チンピラ仲間と共に、クリント演じるウォルトが大切に保管しているフォードの名車、グラン・トリノの盗みに強引に引きこまれ、失敗。そこから少年タオ、姉のスー、一族との不思議な交流が始まる。その模様はユーモアも交え、なかなか面白い。
ウォルトとタオが擬似親子のような関係になるその過程が、丁寧に描かれる。
ウォルトの生き方はある種の虚構を帯びているのだが、
彼は信念を持ち、血縁家族との関係性は悪く、隣りのモン族の人々との関係性の方が良くなってくるのだ。
ウォルト自身も息子家族、孫たちより、どうしてこのアジア系民族の彼らといる方が良いのだ?と自問する場面もある。
タオに仕事の口を紹介し、順調に進むかと思われた生活も
暴力により暗雲が立ち込める。
モン族のタオ、スーたちの未来にギャングたちがいれば、彼らに幸福は訪れない、と苦悩するウォルトは最期の決断をする…。
監督主演イーストウッド。脚本原案ニック・シェンク
改めてアメリカは移民国家だ。白人、ヒスパニック系、黒人、アジアの人々…モン族の歴史もこの映画で初めて知り得た。
そして銃社会…。
西部劇、ダーティーハリーでならした彼は、銃社会の中
銃で暴力に立ち向かうのか…。
ラストは言葉を超越するシーン…
タオが、ウォルトから譲られたグラントリノで湖畔をドライブするエンドクレジット。
私にはこの映画はクリントイーストウッドの、遺言状にも思えた。
ウォルトの愛犬がなんとも表情豊かで、演技賞あげたいぐらい。
大衆ウケドラマ
不器用な男の生き様
死にかけのおじいさんが最後に気のいいニートの若者を一人前の男にして...
凄惨な戦争時代の話も言葉のみでマイルドテイスト
クリント・イーストウッドが主演・監督するヒューマンドラマ映画。元...
クリント・イーストウッドが主演・監督するヒューマンドラマ映画。元軍人で心を閉ざした頑固な老人が、アジア系移民・モン族と接触することで最後の行動を選択する。
喀血シーンが繰り返されていることから、主人公は進行肺癌に罹患し余命が短いことが示唆される。どうせ散る命なら意味のあるものに、また生きてるうちに朝鮮戦争の贖罪も・・・なのだろう。この死期間近という設定があることで「最後の行動」がより意味深いものになっているように思う。
魅力的なストーリーを優先するのではなく、主人公のこまやかな心情を丁寧に描き出す事に注力されている。またその心情描出はセリフではなく映像で表現されていて、小説ではないが文学臭を感じる。
単なる娯楽映画と一線を画した余韻を残す「文学的映画」と言える。
なお「グラン・トリノ」とは1968年~1976年にかけて販売されたフォード・トリノのうち、第3世代(1972~1976年)を指す。この映画を契機に1972年製グラン・トリノは注目を集めるようになったとのこと。
ウォルトのギャップが魅力的
主人公ウォルトは偏屈で昔気質なじいさん。息子はおろか孫にまで煙たがられている。そんな彼が、モン族を初めとした周囲の人々との関わりを通じて、男気、正義感の強いところ、面倒見の良いところ、意外とユーモアもあるところなど、良いところをたくさん見せてくれる。取っつきにくいが深く知ると実は面白い人、というギャップがあるのが魅力的。人物の意外性というのは、その人の魅力を増幅させることが分かる。
映画ではウォルトとモン族の少年タオとの交流を中心に描かれているが、時々出てくるヤノビッチ神父も魅力的だ。ヤノビッチ神父はウォルトに、神父のマニュアル通りのことをしているだけの若造と罵られる。しかしウォルトと付き合い、その男気や人生経験の深さに触れると、彼も変わってくる。神父のマニュアル通りではない、芯の強さを見せるようになる。そのため、元々の真面目で誠実な彼の気質に加えて男気も備わり、人間的な魅力が増した。彼は、ウォルトと付き合うことで一皮剥けたのだ。
そりゃあ選択肢としてはアリだろうが、選ぶなよぉ..... 好き嫌い...
そりゃあ選択肢としてはアリだろうが、選ぶなよぉ.....
好き嫌いで分けられない、凄まじい映画。得難い体験なので☆5つ。
【怠慢かましてよかですか?】
ごめんなさい。
あまりに悲しくて、彼の生き方を手放しで応援できない。
追い返そうとした東洋系隣人がビール持ってきたら「あぁもう、入れ入れ!」みたいに家に上げたり、
言葉の通じないおばちゃんたちに囲まれて「・・・はは、美味しいねぇ」って愛想笑いしながらぎくしゃく食事してるコワルスキーさんが、とても愛おしかったから。
そういう面も持ってるコワルスキーさんが好きになったから。
完璧な生き方を貫けないとだめですか?
スローダウンして、ゆるゆる終わりを迎えるのはだめですか?
悲劇の引き金を引いたのは自分だし、
背負ったものに落とし前つけて去る潔さとか、
一度は必ず迎える死のカタチを自分で決定したい気持ちとか、
ンなこたァ分かッてンだよぉ!!!←誰に怒ってるんだろう
やり場のない憤懣や拭い去れない後悔を、一挙に精算できる機会に恵まれた彼は、幸福かもしれない。
でもさ・・・割り切れない残滓を抱えながら、
周りの人たちと些細な一喜一憂をともにしていく生き方も、
幸福と呼んではいけないのでしょうか。
そういうだらしのない生き方は、ダメですか?
選んじゃったか、それ。うーん・・・
悲しいですよ。私は悲しいですよ。
ウォルトは他人がやることが気に食わない頑固親父 みんなから敬遠され...
ウォルトは他人がやることが気に食わない頑固親父
みんなから敬遠されている
朝鮮の戦争で何人も殺した
隣のモン族にはすぐ心を開いたけどなんでだろ
子どものとの付き合いがわからなかったことも懺悔の一つだろうけど、やっぱり一番は戦争なんだな
頑固親父が心を開いていく様は良かったな
最後も予想外だった
悪態ジイさん‼️
かつてのアメリカ黄金期の栄光を引きずる孤独で偏屈、しかも人種差別主義者の老人が、隣人であるアジア系移民のモン族の少年をはじめとする、その家族と交流していくうち、絆を深めていく。そしてある事件が・・・。クリント・イーストウッド監督扮する骨太親父による説教&鉄拳制裁&自己犠牲映画‼️もっとよく言えば、人生の究極の選択映画‼️モン族の少年を一人前のアメリカ男に鍛え直したり、非道の限りを尽くすギャングたちに「キサマらぁ!!」と怒りの銃弾をぶち込む?ぶち込まれる?教育的指導したり、まるでイーストウッドの映画人生が集大成されたような物語‼️泣けます‼️クライマックスでポケットから "マッチ" を取り出すときのイーストウッドの表情‼️忘れられません‼️ラストで聞かせてくれる歌声‼️絶品‼️上手すぎ‼️この作品を象徴する72年型グラン・トリノもカッコ良すぎ‼️欲しーい‼️
この後味は才能がもたらすもの
イーストウッド演じるウォリスの悲しくも誇らしい決断。
その考えがじわじわ感じるところからすでに
感涙の波がやってきたのですが、
意外にも観ていて涙があふれ出るという感じではなく。
観終わったときには暖かな未来への展望を感じる。
凡庸な作品だったら「ああ、かわいそうだね、えらいね、でもわすれないよ(涙)」
的なところで終わったのかもしれないけれど
そこからさらに一歩があるのがすごいところ。
それは考える余地を観客にゆだねてる部分のせいもあるのかもしれない。
そういう意味ではイーストウッドは
観客というものに夢と希望を抱いてるように思う。
新人の脚本というのも驚く。
ある意味うまくまとまってるな、というものだったのかもしれないが
いい題材でうまい料理人がやるとこうなる。
それにしても男の魂は受け継ぐのに資格がいるのだな。
こいつになら、と見込んだ相手にしか継承されないのだ。
この映画は男の子の映画だなあと思った。
いい車、偏屈だけどクールなジジイ、かわいい女の子、マイ工房。
最近ちまたで言われてる草食男子はツボが違うのかな?
女子にもぐっときますけどね!
人生の10本に入りそうなくらい、胸にズシンと染み入る映画
前半、主人公の意地っ張り加減や人種差別的な悪口をボソッと言うのがブラックコメディな感じがしておもろい。笑
派手な演出やBGMはないけど、テンポ感が良くて全く飽きずに見られる。
スーとボーイフレンドが黒人チンピラに絡まれるシーンで、「兄弟なんて言うな。どう見ても違うだろ。」とツっこむシーンが好き。笑 後半の主人公との良い対比になってると思う。
あと、タオが一生懸命仕事をしてる画と、主人公がタバコを吸ってる画を何度も交互にうつしてるシーンがシュールすぎてお気に入り!
すぐに銃を持ち出すのも、「お決まりのやつ」って感じで見てておもろい。
「なんて言ってるか分かんないけど絶対こちらを嫌っているおばあちゃん」とのやり取りもとても好き。笑
グラン・トリノとタバコとビールが最高に似合う渋さに痺れる!
パン族との文化の違いに顔をしかめつつも少しずつ心を開いていく心情の変化が面白かった。
と、前半だけでも、純粋に面白く観れるのに、後半はそれを上回って一気に引き込まれる!
家を襲撃され、スーがボロボロで帰ってきたシーンから緊張感が流れはじめる。あまりに理不尽な暴力に、「どうか皆が幸せになれるように…」と願わずにいられない。
27歳の牧師との懺悔室での会話、地下室に閉じ込めたタオとの最後の会話、少しずつ、自分の罪について語り始める主人公。特にタオとの会話での「勲章なんてそんないいものじゃない。俺が殺したなかにはお前くらいの子どももいた。それが忘れられない」みたいなセリフから(細かいセリフうろ覚え)、タオの面倒をみることも助けたことも、自分自身への罪滅ぼしというか、贖罪だったのかなぁなんて。
そして、衝撃のラスト…。彼が考えぬいた末の1番の正しい道だったに違いない。
お互いに、「友達」と言い合った2人の関係は、とても尊かった。
「グラン・トリノ」のタイトルの回収もとても渋くて良い…!
男のとても寂しくて、すごく悲しい物語。そして例えようの無い何かをもらう物語。
移民社会アメリカ
ウォルトは朝鮮戦争の退役軍人でポーランド系移民の子孫である。デトロイトの自動車産業で組立工として働き、右肩上がりの絶頂期を謳歌し、定年まで勤め上げた。しかし、日本の安価な自動車がアメリカで売れ始めると、アメリカの自動車産業は衰退していき、デトロイトから工場が撤退し多くの失業者が生まれた。産業がなくなった都市からは人がどんどん出ていき、逆に非白人の低所得層が流入してきたが、ウォルトは土地を離れない。
タオのルーツであるモン族とはヴェトナム戦争時にアメリカが軍事的に利用したラオスの山岳民族である。アメリカがヴェトナムから撤退した後、ラオスは北軍に占領され、モン族は迫害されたため、アメリカに逃げ込んできた。
そんな背景があって出会ったウォルトとタオであるが、ウォルトはアジア人に対して最初は偏見にまみれていたものの、モン族との心の交流を通して人としての温かさを感じようになり、やがて気持ちが変化していく。また、朝鮮戦争で若い朝鮮人を殺したことをトラウマとして抱えていたが、その贖罪感情からタオの教育係となって父親のように見守るようになる。
アメリカは人口増加を続けていくと、白人と有色人種の人口比は逆転するといわれている。建国者としての白人が少数派になるのはもはや時間の問題である。いつまでも多人種や他民族を認めないという姿勢は通用しないだろう。そこに立ちはだかる壁は打ち壊し、アメリカの精神を継承していかなくてはいけないというメッセージがこの映画から感じられた。
頑固で不機嫌な朝鮮戦争帰りの年老いた男。 彼の心を開いたのは、隣に越して来たベトナム一家の娘だった。
ラストにベトナムの民族衣装で正装したタオとスーの姉弟が、
悲しみをこらえながら、毅然として葬儀に向かう姿が
この映画のすべてを物語っています。
いかに生きるかということは、いかに死んでゆくかということであり、
意味ある死などないかもしれないが、自分が納得した死に方であれば、
意味のある人生を生きたといえるのではないか。
義を見てせざるは勇なきなり。
懺悔することすら馬鹿らしいと思い込んでいる男の背中を
そっと押したのは新任の牧師だった。周りと同調しようとしない、
頑固で不機嫌な朝鮮戦争帰りの年老いた男。
彼の心を開いたのは、隣に越して来たベトナム一家の娘だった。
唯一会話が交わせるようになり、社会とのつながりが出来かけた時
娘は凌辱され無残な姿で帰って来た。、
一家が一生なき者扱いされることを思うと、
座して死を待つことは自分の心が許さない。
一貫して生きることの何たるかを問うてきたクリント・イーストウッド監督の
ストーリー展開が明確な、見ごたえのある作品です。
アーニー・ハーが普通で気さくな娘スーを好演しています。
全189件中、1~20件目を表示