レッドクリフ Part II 未来への最終決戦 : 映画評論・批評
2009年3月31日更新
2009年4月10日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
赤壁のクライマックスは目をみはるダイナミズムだが……
ジョン・ウー監督の発言通り、2部構成の映画を黒澤明監督の「七人の侍」にたとえると、半年間にわたる長すぎる“休憩”を挟んでの第2部スタートである。岩代太郎作曲の豪壮なスコア曲が耳に心地よく、NHK大河ドラマのオープニング曲のように、忘れかけていた戦国絵巻の後編へと一気に誘ってくれる。三国志ファンの筆者は、スローモーションを多用したジョン・ウー監督らしい重量感あるアクションを、手に握り拳を作って楽しんだ。
「七人の侍」の泥まみれの“雨中の血戦”にあたるのが、孫権&劉備連合軍による曹操軍の大船団への火計、つまり長江が火の海ならぬ“火の川”になる一大スペクタクルだ。その軍略の中心人物である周瑜(トニー・レオン)と諸葛亮(金城武)と、悪役ぶりが際立つ曹操(チャン・フォンイー)との対立の構図がシンプルで、赤壁が燃えさかるクライマックスに向かってプロットが収れんしていくストーリーは分かりやすい。だが、周瑜の妻・小喬(リン・チーリン)が決戦前夜、敵軍の曹操の陣中へお茶を点てに行くエピソードが盛り込まれたりして男たちの決死の戦いのダイナミズムに水を差すのが、残念だ。
好きな映画だが、目をみはる豪腕ぶりを示すアクションに比べ、肝心のストーリーがどうにも非力すぎ、全体に冗漫な感じがするのは否めない。全体で3時間半ならエモーションも持続しただろうに、2部構成というマーケティング策が苦肉の策に思えてならない。
(サトウムツオ)