ハート・ロッカーのレビュー・感想・評価
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観る者を引き込む
3Dのアバターと並んで何かと話題の映画、ハートロッカー。
「ハート」はHeart(心、心臓)じゃ無くてHurt(怪我、傷)。
アカデミー賞、私はハート・ロッカーの方を選ぶ。
社会的な問題を取り上げているから深く考えさせられる内容なのだが、鑑賞中は力が入りすぎて何度も身を乗り出してしまった。
イラクにおける爆弾処理班の日常とはこれほどまでに狂気と隣り合わせなのか。命を守りながら活動する事は第一の条件だろうに。
主人公は殆ど取り付かれていると言っても良い、次々と危険な現場に積極的に身を投じて行く。
このような現場では、ミッションを終えてから休暇に入り帰国したいと切望して活動するだろうに。
しかし、戦争と狂気の中にあっては、それに魅入られてしまう心理も存在するんだろうと妙に納得してしまう。
終了後、日本はこの映画の世界とはなんてかけ離れているんだろう、と呆然としてしまった。平和で安穏としていて、オリンピックのメダルでハラハラしている人々のなんとのん気な事か。
失業中の自分の悩みなんては大した事ないのかもしれないな。
淡々と生きる
こんにちは(いま2月24日11:55頃です)
eiga.comの試写に応募して当たったんです。
それで、会場に6時30分に着いたら、長蛇の列。
中野ゼロホールは1500人くらい入る試写会をやるには、大きな会場。
だから、大丈夫だろうと思ったけど、その後も続々と並ぶ。
アカデミー賞最有力というふれこみが効いているのだろう。
と、前置きはこのくらいに。
レビューですが、なんといったらいいのか。
少なくても、この映画に倫理を求めてはいけない。
倫理観よりは、生物欲求というのだろうか。
人間のというより、生物の原初的な欲求。
与えられた環境のなかで、淡々と仕事をする男たち。
いつも極限だから、考えるのをよそうとする爆発物処理班。
それでも吹き出るように出てしまうアドレナリン。
なんか、それも顔のアップや上半身が映し出されるから、
彼らの息遣いが伝わってきてとてもリアルなのだ。
唯一、映画らしいというか、ストーリーらしいのが、
街で知り合ったアラブの少年”ベッカム”との交流。
でも、それは本当の話ではなく、錯覚だったのだが・・・。
かくも現実と夢想の境もなくなっていることを教える。
それでもひとは生きるのだ。
そして、普通の生活に戻るのだが、普通が普通ではなくなってしまった。
極限の生活が忘れられなくなってしまい・・・
どこか、壊れてしまった人間としての精神、知性。
戦争に生きるということは、こういうことなのかもしれない。
僕もあなたも、こうなってしまう可能性は十分にある。
そんなことを突きつけた映画といえるだろう。
ザ ハート ロッカー
アメリカの経済学者 ミルトン フリードマンは「国の仕事は軍と警察以外はすべて市場に任せるべきだ。」と言った。
しかし、米国主導の市場原理は自由競争によって人々の生活が豊にする、、どころか、世界規模で貧富差が広がる一方だ。理念としてのグローバリゼーションは死に絶え、現実のグローバリゼーションは貧困者を さらなる貧困に追い落としている。
また、国家事業としての軍と警察は、じつは無数の民間事業によって支えられている。純粋に軍と警察が公正な方法で運営されて汚職にも内部腐敗にも無縁であった歴史など どこにもない。
戦争の民営化が言われて久しい。
戦場に人材派遣で、貧困者が送り込まれている。戦争はビジネスだ。かつて、デイック チェイニー副大統領がCEOを勤めたハリー バートン社は石油採掘機の会社だが、子会社を通じて戦場に民間人を派遣するビジネスをしている。わずかな契約金で イラクやアフガニスタンに人を送り込んでいる。イラクで アメリカ民間警備会社が、大手を振って活躍している。市民を虐殺しているのは悪名高いこれら民間警備会社の恐れを知らない雇われ兵だ。
BBCニュースで アメリカ民間警備会社が あるアフリカの村で青年達を集めてリクルートしているところをカメラが捉えていた。イラクという国が 地球儀の上のどのへんにあるのかも知らない若者達が ドルに目を輝かせていた。こういう事実は なかなか表には出てこない。
映画「ザ ハート ロッカー」原題「THE HURT LOCKER」を観た。
監督:キャサリン ビグロー
キャスト:ジェレミー レナー (ジェイムス軍曹)
アンソニー マッキー(サンボーン軍曹)
ブライアン ジェラテイ(オーエン技術兵)
その他、ガイ ピアース、レイフ ファインズ など
ストーリーは
戦時下のイラク、バグダット。
爆発物処理特別部隊EODの仕事は 不発弾や時限爆弾 地雷、ダイナマイトを腹に抱いた人間爆弾にいたるまでの 爆発の危険のあるものを解体処理することだ。戦場での最前線の最も危険な作業をする部隊だ。
人望があり、部下から信頼されていたトンプソン軍曹(ガイ ピアース)は 爆弾を処理した直後、その現場でリモートコントロール操作による爆弾で命を落とす。変わってジェイムス軍曹(ジェレミー レナー)が送り込まれてくる。彼はすでに、873個の爆弾を解体する実績を持っていた。しかし、部隊の中で 余りにも自信家でチームーワークができないジェイソンを、サポートしなければならないサンボーン軍曹(アンソニー マッキー)と、オーエン技術兵(ブライアン ジェラテイ)は、彼に振り回される。仲間としての信頼感が得られないまま 連日 危険な前線で仕事を続行けることで、ストレス レベルも尋常ではない。
ベッカムと名乗る人なつこくジェイムスに付きまとってくる少年がいた。ゲリラの秘密基地を急襲すると、少年が殺されていた。その体のなかには何キロもの爆弾が埋め込まれていた。。少年の体を引き裂き 取り出した爆弾を解体する。さすがのジェイムスも冷静ではいられない。
移動中 スナイパーに狙われている。いつ どこで と言えず、突然兵が倒れ、助け起こしてみると撃ち殺されている。スナイパーは善良そうな羊飼いであり、マーケットの商人であり、ベールを被った主婦だ。
死はいつでもどこにでもある。今日生き残ったのは、ただ運が良かったというだけのことだ。
極限状態のなかで 大型爆弾を背後で操作して多数の死傷者が出た現場で ジェームスは 命知らずにもサンボーンとオーエンとを伴って 犯人を追って 夜の居住地に入り込んでいく。結果、オーエンは襲われて瀕死の目にあう。
任期が終了してジェイムスは帰国する。
待っていた妻のところに帰り、赤ちゃんの世話をする。日常に戻ってもジェイムスにはそれが 何の喜びも興奮や 楽しみも もたらさないことを知る。
そして、彼はまた 志願して爆弾処理部隊として戦場に戻っていく。
というストーリー。
映画を観ている観客は 命知らずのジェームスの肩越しに戦争を見ることになる。怪しげな違法駐車の車。爆弾は見つかったが ワイヤーが どこに通じていて爆発する仕掛けになっているのか わからない。座席を切り裂き フロントを開けで信管を見つける。
目と鼻の先で リモートコントロールで発火させようとしているゲリラが潜んでいる。毎回 違う種類の爆弾が 人の意表をつくかたちで仕掛けられている。解体が楽ではない。ひとつの爆弾で300メートル以内にいる人すべての命が一瞬で失われる。
スナイパーは市民を装い どこにでもいる。ドキドキハラハラだ。
何と バグダッドで米軍は孤立していることだろう。
フィルムの最初に「WAR IS DRUG」という言葉が出てくるがこの言葉が映画のすべてを語っている。戦争は中毒だ。阿片やアルコールのように人の神経を無感覚にさせ、神経をズタズタに破壊する。
ジェイムス軍曹はアメリカが仕掛けたイラク戦争の犠牲者だ。イラクは、米軍など呼び寄せていない。スンニ派とシーア派の対立や 政治腐敗やクルド民族問題など、すべてイラク国内問題であって アメリカやイギリスの介入すべきことではない。大量兵器など持って居なかったイラクに 国連の賛同もなく介入したアメリカ。イギリスではいま、公聴会が開催されていてジョージ ブッシュを後押ししてイラクに介入したトニー ブレアが裁かれている。
戦場の実態に肉薄する映像を作る行為、そのことに意味がある。若い女性監督が 現地を見て 撮影に入っている。よくやっていると思う。
「アバター」を作ったジェームス キャメロンは、自分の作品がゴールデン グローブ賞を受賞したとき、賞は「ハート ロッカー」のキャサリン ビグローが取ると思ってたよ と言ったそうだ。この二人は むかし夫婦だった。元夫と元妻がともに アカデミー最優秀監督賞に ノミネートされて 賞を取り合っている、なんて 素敵しゃないか。
アカデミー監督賞は、この「ハート ロック」か、クリント イーストウッドの「インヴィクタス」になったら良いと思う。
監督に賞を与えて、次の製作を励ますことが、賞の目的ならば、キャサリン ビグローと、クリント イーストウッドに 世界の良識と良心を呼び覚ますような作品を今後も続けて撮ってほしいと思う。
女性監督が撮った“骨太戦争映画”
“本年度アカデミー賞最有力、最多9部門ノミネート!”現代の戦場を駆け回る“爆発物処理班”の姿を、女性監督キャスリン・ビグローが、リアルに描き出しています。
これまで、映画の題材としてあまり取り上げられたことがないと思われる“爆発物処理班”。そう、過去に娯楽戦争映画で脚光を浴びたと言えば「トップガン」や、「ネイビー・シールズ」などの、“チョット華やかでカッコイイ”っていうセクションが多かったと思います。然るに本作の主役“爆発物処理班”は、非常に地味です。決して華やかではございません。しかし、“自爆テロ”などが横行する現代の戦場で、彼等のスキルは欠かすことの出来ない重要なものになっています。爆発物処理班の兵士の死亡率は、他の部署の兵士よりも遥かに高いのですが、『爆発物処理班が存在しなければ、戦えない』と言うのが、現実なのです。そんな過酷な部隊の実情を、この映画はリアリズムを追求して撮り上げています。ですから、映像はもう殆んど『これ、ドキュメント?』って言っても過言ではない仕上がりで、現代の戦場の裏側を重く、且つ淡々と映し出しています。
こんな“男臭い映画”を監督したのは、キャスリン・ビグロー。そう、前述したように“女性監督”なんですよね。しかし、本作が女の人の撮った映画とは恐らく見終わった人は、俄かに信じ難いんじゃあないでしょうか?吾輩も正直、驚きました。『こんなの、どうやって女性に撮れるの?』って。決して差別的に思ってるのではなく、この映画は“男が撮る以上に骨太な戦争映画”に仕上がっていると思うからです。確かにキャスリン・ビグローの過去の作品(例えば「K-19」とか「ハートブルー」etc)も、相当に骨太であったと思いますが、本作の骨太さは、それらを遥かに凌駕しております。ホント、この監督は肝が据わってますね。もう『行くとこまで行ったれ!』って感じで。
主役の3名は、ほぼ無名(但しジェレミー・レナーは、今回の演技で、オスカーの主演男優賞にノミネートされました)ですが、僅かな出演シーンにも拘らず、監督とのコラボレーションに魅了されたハリウッド・スター達(ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デヴィッド・モースといった面々)が、脇をガッチリ固めているのも見所の一つです。人徳あるんですね、キャスリン・ビグロー!
で、巷で話題になっております“元旦那”ジェームズ・キャメロンとの“痴話げんか”…もとい“アカデミー賞・頂上決戦(^^;”についてですが、あちらの映画=「アバター」は、“現実には決してあり得ない世界を、まるで現実であるかのように、スクリーン上(一部飛び出す)に再現した映画”だと思います。片や本作「ハート・ロッカー」は“一般人は殆んど知らない現実を、よりリアルな現実として、一般大衆の目にスクリーンを通して触れさせた映画”だと思います。確かにスケールや映像では、前者に軍配が上がると思いますが、現実を描いているという点で、ストーリーの重厚さや演出手腕としては、後者が有利だと思います。何より、この映画は生身の人間が演技をしておりますので、“作品の質”と言う点でも優れていると思います。勝手に主観を並べましたが、果たして結果はどうなりますことやら(これで、全然違う作品が受賞したら笑うな~)…?
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