真夏のオリオン
2009年公開
軍事マニアです
「ローレライ」などの原作者で知られる福井晴敏の監修・脚色と知ってこれは地雷だろうと思って見始めるとやっぱり、これは星1つとか2つとか、そうとう厳しい評価になってしまうなと思いました
軍事マニアの目からすると、とんでもないシーンが連発だったからです
潜望鏡を上げてるのに艦長が、カレーをかき込んでから覗くなんてことは絶対にあり得ません、水面上の潜望鏡は小さくとも、それを見つけられたなら、潜水艦は撃沈の危機に陥るのです
一瞬だけ水面上にだしてぐるっと360度大急ぎで見回してすぐに水面下に下げるのが常識です
それこそ1秒とかです
だから正に噴飯もののシーンでした
例を挙げると、それこそきりがありませんので、これ以上ここでは触れません
邦画の戦争映画は、軍事マニアの目からすると、このように常識レベルのこともわかっておらず、海外の同種の映画と比べることもできない程に圧倒的に劣っています
それが邦画の戦争映画に少しもリアリティが無い根本原因でした
重箱の隅をつつくような細かいことなら多少は飲みこめます、しかし、そのような常識レベルのこともわかっていないシーンを見せられたなら一気に醒めてしまい、何もかも嘘ぼくなっていまうのです
そもそも何が常識なのか、重箱の隅のことなのか自体が分かっていないのです
色々な戦争映画を観てわかった気になっているだけで脚本を書き、演出しているのでしょう
素養が無い
素養を身につける努力が無いとも言えます
軍事関係の資料を地道に長年沢山読んで来なければ、素養は身につけることはできません
それに現地現物に足を運んで実地に取材していないからそうなのです
軍事知識?
そんなものを気にするのは、軍事オタクやアニメオタクだけだ、と軽視して馬鹿にしているからだと思います
そんなことに時間をかけてなんかいられないという姿勢だからです
そんなものは美術や小道具の仕事だと思っているから、それで、この邦画の欠点はいつまでも解消されないのです
それどころか、ますます海外とは格差が広がるばかりなのです
さて、ところが本作を観終わってみれば、案外に良かったと評価が上がりました
星4つです
不覚にもホロリとしました
お話は良かったです
基本、潜水艦映画の金字塔「眼下の敵」が元ネタです
それを日本海軍のお話に翻案して人間魚雷回天ネタを接ぎ木したものです
冬の星座オリオンは、真夏には見えません
本作の舞台の南洋なら、真夏でも低い高度に短時間見ることができるそうです
オリオン座の三ッ星は太古の昔から航海の目印でした
それを楽譜と詩のモチーフにしたアイデアは殺伐とした戦争ものに
ヒューマニティーをもたらす効果が大きく、ラストのハーモニカには感動すらしました
玉木宏さんの倉本艦長も、北川景子さんも良かったです
脚本と演出の軍事知識の向上があれば傑作になったかも知れません
呉は横須賀に並ぶ、日本海軍の根拠地です
今も海上自衛隊の基地があり、潜水艦の根拠地になっています
軍港巡りの遊覧船に乗ると本物の潜水艦を沢山間近に見ることができます
潜水艦が入港して来てなにやら甲板に整列して作業中の光景を見れたりできます
大和ミュージアムは戦艦大和を中心とした展示だけでなく、海軍や艦船の軍事知識を得る宝庫です
その向かいの鉄のくじら館は海上自衛隊の潜水艦中心の博物館です
なにしろ実物の潜水艦を陸に上げて内部を公開しているところです
このようなところに、本作の脚本家や監督は足を運んで勉強したことがあるのでしょうか?
戦争は人の生死がかかったことです
それを映画にするなら、その事に思いいたって誠実に軍事を勉強して、できるだけ正しい表現になるように努力していただきたいものです
それが戦争でお亡くなりになった方々へのせめてもの誠だと思うのです