「「オイディプス王」も真っ青な作品」その土曜日、7時58分 あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
「オイディプス王」も真っ青な作品
2007年アメリカ・イギリス合作映画。117分。今年2本目の作品。「旅立ちの時」がとても心に残ったシドニー・ルメット監督(84才!)の作品でございます。原題は「どうか天国にいけますように、悪魔があなたの死を気づく前に」といった感じ。
内容は、老夫婦が経営するジュエリーショップに強盗事件が起きる。店番の奥さんと強盗は死に、店の外で待っていた相棒は車で逃亡。その逃亡者は老夫婦の次男で影の首謀者は長男だった、といった按配でございます。
この作品はサスペンス仕立てになっている都合上、これ以上内容に言及しないほうがいいと思います。それでもこの邦題は原題以上に本作の魅力を表現していると思いました。観終わってから考えるとこの邦題のほうがメッセージが伝わりました(それに、悪魔や天使というのは日本人にはしっくりこないと思う)。
「旅立ちの時」は夜逃げ家族がテーマでしたが、本作は上流階級の家族がテーマ。とてもショッキングな展開が待っていますが、本作で描かれたほどまでじゃなくても、これは現実にあることだと真剣に思う。
ルメット監督のタッチは冷徹、あまりにも冷徹すぎます。本作のエンディングを観て、後は考えてくださいというスタンスです。そして、そこから考えない人がでたらどうなってしまうのだろうと一瞬の危惧を抱いてしまう怖いエンディングでした。
あのエンディングに漂う重苦しい沈黙は、このような題材がこれまで語られすぎて、もはやネタがつきてしまい進めないかのような絶望感を感じました。過ぎてしまった昔を憧れることは悪くないかもしれない。
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