ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポのレビュー・感想・評価
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ネタバレどころか映画の内容じゃ無い話だらけレビュー
主演の2人が表紙の雑誌を持っていました。
2008年のecocoloだったかな。
いまも実家にありそう。
その頃からずっと観ようと思いながら15年…
雑誌のお松さんもとてもキレイです。
ロンバケで見た時はお松さんの良さはわからなかったのですが「明日、春が来たら」の生放送での堂々とした歌いっぷりを見てから、只者じゃ無いと思いました。
今作でも女優としてほんとに素晴らしい。肝の据わったいい女。
大谷が岡田くんとの関係を疑うシーンのお尻とか、女の私でもエロスを感じて、そら疑うな、と思いました。
この頃の浅野さんもとてもカッコよくて、ダメ男っぷりがぴったり。超ダメダメ、ネガティブおばけでもモテるのね、うんうん。
友達から浅野忠信みたいな人とスウェットでその辺歩いてそうだよね、と言われた事があって、なかなか嬉しかった覚えがあります。そこはダメ男じゃなくて、無造作オシャレな人っていう意味で。
浅野さんがガキ使で釣りの回にゲストだった時も超マイペースで、面白かったなぁ。
雑誌の中には太宰治の生家である青森五所川原の斜陽館も出てきます。
2013頃に行ったとき、太宰の疎開の家の方に布張りのステキなアンティーク椅子があって、それに松さんが座ってる写真があって、私も厚かましく座った覚えがあります。
主演の2人もステキでしたが、室井さんと伊武さん夫妻も良かったし、妻夫木くんに堤さんと、こんなに役者が豪華だったとは!
電車や駅や線路や椿山など街の雰囲気もとてもよかったです。
斜陽館のノートには、太宰治好きの又吉さんのコメントがあったのも思い出しました。
又吉さんも生き様が好き。
ながら見になってしまったので、またいつか観なおしたい。
男女間を突き詰めれば死にたくなる
太宰治だけでなく純文学と言われているものの大半は自伝的要素は多い。
とは言え 実際の津島夫婦は略歴から見ればこの作品のようには見えない。(太宰治が自殺未遂を繰り返したのち実際に自殺し、女に関しては不道徳こそ心情といった風ではあるが)
なのでこの映画の(原作とも離れて)、二人について話したい。
夫はたぶん、さち が万引きしたのを救った時点で一目惚れにちかい熱狂的恋情を感じた。
そして彼女と迷う事なく結婚した。
彼女が、外に出せば男たちを惹きつけてやまない女である事は知っていた。
そして彼女を貧しさの中に閉じ込めた。
自分が彼女を何者にも替え難いほどに心底思う事だけが愛情だと、自分勝手に判断し彼女の心情など存在しない玩具のようなものとしか思えない人間であったから。
そうしてその持て余した愛情や感情を他の女にも向けるのだ。
自分の中にある確固たる愛があれば何をしても(彼の中では)問題などないとしていたのが 居酒屋で働き始めた途端に(しかも原因は彼自身である)、それが激しい嫉妬となる。
だがその嫉妬心は彼の内側に向けられる。
自分が閉じ込めた籠から解き放たれた妻が、それでも自分に向ける愛情に変わりないと、そんな事すら彼にはどうでもよく、妻に向ける他の男の視線や感情に執拗に嫉妬する。
挙句、自分の愚かさ(実は先刻わかっていたもの) に向き合うとそれはもう結論的に死にたくなるのだ。
そういった感情の流れを
とどめることなく流れるように描写している作品だった。
浅野の不可解なパワーはいいけど、作家は似合わない。もっと優しさもか...
浅野の不可解なパワーはいいけど、作家は似合わない。もっと優しさもかもしたてられる人の方がいい。
広末はこういう役は絶品だ。でもそもそも病気なんだろうか。よく考えると不自然だけど、ただただ怪しく、男に従属してるのもすごい。薬を飲むシーン(とてもセクシー)、松とスレ違うシーンがよかった。
松もいい。盗みの場面できっぱりと自分の生き様を主張する強さと、無意識に男に寄り添ってしまう、矛盾のある役どころをうまく演じている。
主人公のピュアな感じはいい。
松は、大豆田といい、ダメンズホイホイの役がはまり役か。ダメンズにはピュアな一面があり、そこが松を動かすのか。堤真一とかも、最低の役で(このいやらしさ加減がすごくうまかった)、まだ太宰の方がまし。それにしても、こんな話は太宰の中にあったっけ。
根岸の描く世界は正直もう古い。過去の男のエゴについてはうまく描いていると言うべきか。
別物ですが、それなりに良かったです
肺病の飲んだくれのわりに、筋肉質で白目が白いすっとした浅野忠信。
疲れ果ててやつれているはずが、いきいきとしてぽっちゃり元気はつらつの松たか子。
悲惨な人生のはすが、まるで朝ドラのようなすがすがしさ。
しかしながら、二人の名演技には目を見張らせられました。
脇役の堤真一と妻夫木聡も良かった。
原作の「人非人でもいいじゃないの。私たちは生きてさえすらばいいのよ...
原作の「人非人でもいいじゃないの。私たちは生きてさえすらばいいのよ」がこの映画によってさらに強まった印象を受けた。
口紅買うからの流れはすごい映画的だと思う。弁護士のビルの前で紅をひく。開口一番「お金、ありません」前半に椿屋でチップだらけのシーンを作り「私、お金になるんですね」を入れておいて。
自分を見捨てたどころか裏切ったとさえも思える弁護士、無関係だったのに自分を助けてくれた大谷という男の対比。佐知の過去のエピソードも善悪を超えたところで語られている。
この加筆された部分で複雑な感情を呼びおこして心に残る作品となった。浅野忠信と松たか子の演技も素晴らしい。
全ては夫婦のスパイス
松たか子の真面目な妻と、才能ある小説家なのに家庭をまるで顧みないヒモ夫の浅野忠信。
夫は生きることより死ぬことに価値を見出し、妻は妻で夫が頼りにならない分自立していく。
妻が自立すればするほど、夫は妬き、
離れ離れになる2人で、もう別れちゃえばいいじゃんと思ったりするんだけど
妻は夫を思っている。それは情なのかもしれないけど。
夫は外に女がいたり心中してみたり、でも結局は妻と離れられない。
外で散々好き放題出来るのは、地に足ついた妻のおかげか。
結局周りが横やりを入れようと、全ては夫婦のスパイスなんだなぁと。
ヤキモチを妬く夫も、妻に言いよる男たちも、結局は脇役に過ぎなくて、
松たか子の芯のある演技とか、浅野忠信の一見筋の通らないふらふらさも、うまく調和していてとても好きだった。
三鷹から武蔵小金井まで1時間歩く妻夫木聡も、なんというかリアリティがあって、
こういう夫婦のあり方みたいなものを感じた。
こうはなりたくないけど少し憧れる、みたいな、相反する気持ちをうまくバランスとっているような。
表面ではなくて心の中で繋がっている、繋がせている、夫婦の形とか愛って表現したらこんな感じなんかなぁと思わせる映画。
イメージ通り
太宰治のファンとして観た。100%の原作通りではないのに自分の描く「 ヴィヨンの妻 」像とのズレがほぼ無く、観やすかった。
時代的に今は少ない大谷の妻の雰囲気や立ち位置を表現していた 松たか子さん は流石だった。
浅野忠信さん の出す、刹那的でデカダンで女を惹き寄せる物もとても大谷らしく太宰らしく良かった。
個人的には途中、眞島秀和さん が出演されてて嬉しかった。
太宰が好きならすっと入る
個人的な意見だが太宰治は芥川龍之介=死に取り憑かれていた。その女房はそれはもう大変だ。
太宰は小説の中に自分を投影した主人公をよく出している。ヴィヨンの妻の大谷もそう。本作では太宰が自分を投影して書いた他の小説からもモチーフを集め、太宰作品の中の太宰治を再構築し、大谷をより太宰治(または太宰が書いた太宰治像)に近づけようとしたかのよう。
少なくとも私は、この映画で太宰治の心情がより見えた気がしました。
"死にたかった夫"と"死なせてあげられなかった妻"
太宰治の原作は未読です。
何度も映画の公開前に読もうとしたが、どうやら色々な太宰作品から断片的に引用しているらしいのを知り、読む時間がなかなか取れないのも在って断念しました。
従って、細かな部分に於いてかなりの勘違いをするかも知れません。
夫は絶えず「死にたい」と漏らしていた。
終盤で妻と愛人が対峙する場面が有る。
まるで勝ち誇ったかの様に、薄ら笑いを見せる愛人。
自分には一体何が欠けていたのだろうか?
そんな思いを確かめ様としたのかは計りかねるのだが、妻はパン助から口紅を売って貰い、自ら口に塗る。
眼の前には“本当は好きだった男”
口紅で化粧をした自分は、表に居る女達同様に男共に媚びを売る虚飾に満ちた人種と言って良い。
しかし、外へ出た妻は、そっと口紅を置いて我が家へと帰って行く。(実際は椿屋)
“死にたかった夫”と“死なせてあげられなかった妻”
それまでの偽りの夫婦生活をお互いに戒める様に振り返る。
この時に登場するのが、脚本家田中陽造が拘った《さくらんぼ》
おそらく太宰作品の中に出て来る重要な要素なのでしょう。残念ながら太宰作品を未読のこちらには、その本当の意味合いの詳しい部分は分からない。
しかし、ここで過去の田中陽造が関わった作品に似た様な場面が有ったのを思い出す。
鈴木清順監督作品の『陽炎座』
確かあの作品では《酸漿》が使われ、妄想とも現実とも区別のつかない、男女の妖気漂う世界が展開されていた。
『陽炎座』自体は泉鏡花の原作が有り、自由奔放なイメージに溢れるはいるが、それと比べると本作品に登場する夫は、その生涯で死にとり憑かれていた。(と思われている)原作者の太宰治の等身大に近い男。
監督は根岸吉太郎。
日活ロマンポルノ出身の人で、やはり全作品を観た訳では無いので、これも自信は今ひとつなのですが。この人の作品に登場する男女にもどこか共通する個所が有る様な気がする。
思えば、デビュー作となった『オリオンの殺意より 情事の方程式』の時から、出て来る男女のカップルにはどこか“死のイメージ”が見え隠れする時が有った。
出世作となった初めての一般作品である『遠雷』でさえ、ドライな男女が割り切って結婚し、最後になってやっと本物の夫婦として歩んで行く。その時に遠くで鳴り響く《雷鳴》には様々な解釈がなされたのを思い出す。個人的にもどことなく怖いイメージが有る。
『永遠の1/2』等は、全くの別人を似ていると言うだけで勘違いし、押し通す話だった様な気がする。(予習をせずに、当時観た不確かな記憶だけなので少し心配)
…と、根岸作品を全部検証した訳では無いのですが、この人の作品に登場する男女は、時に“擬似夫婦(恋愛)”をしている場合が多々見受けられる。
そう言った意味でも本作品のラストで、浅野忠信と松たか子演じるこの夫婦は、『遠雷』での永島敏行と石田えり同様に、真の夫婦として歩んで行く一歩だったのかも知れない。
しかし『遠雷』の時は雷鳴だったのだが、本作品のモデルとなった人物は太宰治本人に他ならず。彼のその後を考えると、本作品でのラストシーンは、見方によってどことなく男女の心中場面を映したモノクロ写真の様な風情も有り、単純なハッピーエンドとも言い難い。
出演者では、松たか子が絶賛されている様ですが、個人的には浅野忠信が良かった。シラフの時はなかなか死ねずにいて、自分の居場所を絶えず探して居るかの様にオドオドしているかと思えば。酒を飲み酔っ払った時になると、気が大きくなる典型的な駄目人間を巧みに演じている。初めてと言って良い位にこの人の演技力を素晴らしいと思った。
素晴らしいセット美術を始めとして、日本映画の面白さを堪能出来る作品です。
がしかし、お薦めするのは少し気が引けます。それは、この作品の表向きが、本当に馬鹿な夫婦の物語でしか過ぎないからなんですが…。
(2009年10月11日TOHOシネマズ西新井/スクリーン8)
『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』
文学作品で太宰治ってんで身構えて観ました。
松たか子、イイんですよ。
イイんですが松たか子を引き出した浅野忠信が凄いと俺は思います。
伊武雅刀と室井滋コンビは期待通りで本当に良かった。
夫婦で敬語で会話したりするとこは純愛モノの良さが出てました。
愛の形は色々あって良いと思いました。
曇った日に凛と咲いている花を見ているよう
言わずと知れた太宰治の名作。
売れない作家の大谷を支え続けた妻、佐知の話。
したたかで美しい女性の映画だった。
ストーリーはつまりがどうしようもないダメ男を妻が支え続けるというもので。
佐知は明るくしたたかでまっすぐで、最高の奥さんだけれどもそれゆえに大谷は苦しくなる。
浮気をするけれど佐知に思いを寄せる男のことは気になる。
一見すると、大谷の心のバランスの悪さとかばかりが目についてしまうけれど、きっとお互いに依存している夫婦の話だったように思う。
佐知はきっと大谷を待つ自分、大谷を好きな自分、大谷を支えている自分、それによって自分自身をささえていたのかなぁなんて思ったりもしました。
それは男性を妻が支える時代だったからなのかは分からないけれど、「夫婦愛」という言葉ではくくれないような二人のアンバランスな心の関係が描かれた作品のように思いました。
まーほんで何が素晴らしかというととにかく松たか子。浅野忠信も、見事にダメ男ぶりを演じきっているんだけれど、松たか子の演技が秀逸!松たか子がいかに素晴らしい女優さんかということを改めて思い知った作品。
どこまでもまっすぐに大谷を支え続ける佐知。
まっすぐな女性は時に女性の目から疎ましく見えてしまうものだけれど、一切それがなかった。
なんかこう、まっすぐすぎるとうっとーしいというか。それが無かった。
非常に印象的なシーン2つ。
1.佐知が初めてチップをもらうシーン。
チップをもらった彼女はあっけらかんと
「わたし、お金になるんですね」
という。
その言葉の嫌みのなさが凄い。
嫌みなく演じた松たか子が素晴らしい。
あ、そう思ったんだな、とだけ思うまっすぐな一言。
その一言と表情で、佐知という女性のすべてがわかるような一発だった。名演技。
2.佐知が堤真一演じる弁護士さんのもとに向かうシーン。
とある決意をして彼のもとに向かう佐知は、口紅を買う。
その口紅を塗るシーンがまー、なんとも言えない。
大谷を助けるために女性であるという武器を使う決意をし、向かう彼女。
この映画の中でいっちばん松たか子が魅力的なシーンでした。
あとで気づいたけど監督さんがサイドカーに犬の人と一緒でした。言われてみれば空気感がにている。
話の盛り上がり??はあんまりないので物足りなく感じるひともいるかもしれませんが、個々の俳優さんの名演技が光る作品です。脇役まで全員素晴らしい!
個人的には広末涼子があんまり好きじゃないけど、今回の役どころは良かったような気がする。かもしれない。
最後のね、シーンも素敵です。なんか、「うん、うん、それでいいよ、うん」ってなる感じ。
晴れても無い、雨でもない。そんな日に咲いてる花を見ているような、そんな映画でした。
良かった
妻夫木くんが出演してる
はずなのだが…楽しみなの
だが…ってなかなか
出てこなかったよ(笑)
愛する夫の為にどんどん
悪くなっていく佐知さん!
帰って来ない
お金は盗んだりする
浮気相手はたくさんいる
酒グセが悪い
などなどトラブルばかり
起こす夫を健気に支え
待つ。
私ならとっくに無理かも[m:75]︎
妻夫木くんに速攻で乗り換え
るかも⁈秒殺かも(笑)
でも、別れられない気持ち
も少しわかるような…
佐知も私が支えないと!
と頼られる事により、
生かせてもらってるのかも…
余韻が残る映画です!
松さんの演技がいいd(^_^o)
あー、いらいらする
総合70点 ( ストーリー:60点|キャスト:85点|演出:75点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
直接経験があるのでわかります。自堕落で自分のことが何よりも大好きで、だから自分が問題を引き起こして周りの人々を次々に巻き込んでいても、自分のことだけを憐れに思うどうしようもない幼稚で自分勝手で駄目男。こんなやつが側にいると迷惑極まりない。普通はそんなやつはすぐに周囲から干されるものだが、彼はいい男で才能があって女心をくすぐるだけに性質が悪い。
こんなくずはさっさとみんなで捨ててしまえばいいのにと思う。なんでいつまでもこいつの周りを離れないのかな。男を見ているだけでもいらいらするのに、ひどい行為にもめげずにそれでも彼を支え続ける女たちにまでだんだんといらいらしてくる。
それでも太宰治は女たちから愛されたのだから、私には理解しがたい魅力があったのだろう。それでも伝え聞く彼の行動だけでなく、少しだけ読んだ彼の作品からも自分愛に浸る甘ったるい姿が見えて、自分は好きではないです。
こんなやつを物語の中心に据えて見せられてもつまらない。これが太宰治が存在しない状態で作られた作品ならば、こんなことないよなと思って現実感がなくてさらにつまらなかっただろう。
でもそんなにいらいらするのに、この作品は合格です。なぜって登場人物たちの演技が良い。特に松たか子はいい。なぜこんな男に尽くすのかが理解出来ないのが難点だが、抑えた演技だけど魅力があった。文学的で退廃的な雰囲気を作り出す演出も素晴らしかった。だけどいらいらするからもう見たくない。
これよりはマシ
どうしてこんな男にこんないい女が自分からくっついてるなんて理解が出来ない。「弱い部分もさらけ出してる人を見ると自分を必要としてくれてると思って全てを受け止めてしまう」と主演女優は言っていたがおそらくそんなタイプと真反対の男とばかりこの女優さんは付き合って来たのだろうなとつい推測してしまう。私は既婚者で夫の行動で辛い思いも経験したが「この映画の二人よりはマシだ、よし、ちゃんとしよう。」と思えただけでも観たかいがあった。
松たか子かわいい
原作に色々付け足して、話を伸ばしているが、雰囲気を損ねていないので、違和感はない。浅野忠信がハマリ役でいい味だしてる。松たか子と共演してるせいか、広末涼子の演技力不足が際立つ。暗い話しなのに、重くなりすぎず笑えるのは、浅野忠信に依る所が大きい。
真逆な夫婦の愛の形
「生きる」ことに向き合えず「死ぬ」ことばかりを願う人には、「死」=「崇高な英雄行為」である。いかに美しく、いかに理想的に死ぬか。そのことを日々考える。皮肉なことに「死」を夢見ることがその人の「生きる」糧となっている。しかし死が崇高で美しいのは、天寿を全うした人だけだ。理想の死を追い求める人に死神は微笑まない。死神が抱きとめるのは、生きることに前向きだが、一瞬の絶望で発作的に死を願ってしまった人だ。
太宰治をモデルとした小説家大谷(浅野)は、典型的な死を願う人だ。「僕は生きることが怖い」と弱音を吐き、次々に愛人を作り、呑んだくれ、泥棒まで働く。そんなどうしようもないダメな亭主を健気に支え続ける妻(松)。彼女は決して弱音を吐かない。夫のろくでもない行為を強く責めることなく許し、尻ぬぐいに回る。何故か・・・?愛しているから?これほどの仕打ちを受けたら愛などとっくに覚めてもおかしくはないのに・・・。自分は浮気をするくせに、妻の浮気が許せない夫は、ついに愛してもいない愛人と心中を図る。しかし前述のように死神は残酷だ。安らかな死ではなく、のたうちまわるみじめな姿と、スキャンダルだけ残って再び生きなければならないという辱めを彼に与える。それでも妻は夫に「どうしたらいいの?生き残って良かったというべき?それとも死ね無くて残念でしたと慰めたらいいの?」と静かに問いかけるだけ。だが彼女の心は常に血を流している。夫が残した睡眠薬を発作的に飲もうとする彼女だったが、彼女の生きる力の方が死神よりも勝っていたらしく、空を見上げて踏みとどまる。そして彼女は夫を助けるために、愛してもいない男に抱かれるのだ・・・。
松たか子の抑えた演技が良い。疲れた顔を見せず、凛とした上品な佇まい、抑揚をつけないセリフ回しが効果的だ。
だが本作で一番好演したのは、浅野忠信ではないかと思う。インテリ特有の物憂げで上品な佇まい。丁寧な口調と柔らかい物腰。こちらが責める前に謝る確信犯。寂しげな表情で「僕は弱い男です・・・」と言われたらもう許すしかない・・・。酒の飲めない浅野が『風花』で見せた絶品の酔っぱらい演技がここでも活きている。人間、やはり見た目が大切だ。彼のアンニュイな雰囲気があってこそのダメ男だろう(むさ苦しい男が「死にたい・・・」とウジウジしていたら「さっさと死ねよ!」って思っちゃう・・・笑)。
生きるエネルギーが間逆な夫婦だが、互いに引き合うことで生きていけるのだろう。それがこの夫婦の2人にしか分からない愛の形なのだ。
(´Д`)
共感できる部分、人物がほとんどなく、あまり好きではない作品です。
自分勝手な夫婦とそれに振り回される周りの人達の話、にしか思えません。
本来、男女の愛とか人間なんてそんなものかもしれませんが。
キャストは大好きなのに、観終わった後になんかイライラ感が残ります。
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