MW ムウ : 映画評論・批評
2009年6月23日更新
2009年7月4日より丸の内ルーブルほかにてロードショー
玉木宏は新境地を開拓したが、演出が空回り
「日本映画史上、規格外のアクション映画を撮ろう」という信念から敢行された、冒頭のタイ・ロケーション。その大作感溢れる大胆な試みは認めたいが、本筋ではなく、冷酷無比なテロリスト・結城のキャラを表わすシーンにしては、あまりに時間を割きすぎた。そのため、作品の命ともいえる、サスペンスとしての緊迫感が途切れてしまった。その流れは本筋に入ってからも変わらず、メリハリのない展開がただ続いていく……。
だが、結城を演じる玉木宏は妙に艶っぽく、美しきダークヒーローをモノにし、見事に新境地を開拓している。これで同性愛描写など、原作と同じビザール感を色濃く描けば、それはそれで評価ができただけに悔やまれる。かといって、“玉木版「太陽を盗んだ男」”として観るには、やはり空回りが続く演出が厳しすぎる。
一方、近年はどの作品でも芸達者っぷりを発揮している山田孝之。だが、今回の賀来神父に関しては、残念ながら貫録に欠けるため、完全なミスキャストになってしまった。このように、“早すぎた原作”の映画化として観るのは不可能だけに、玉木のプロモーションビデオとして観るのがいいだろう。
(くれい響)