「価値観が見える奇行。」アキレスと亀 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
価値観が見える奇行。
冒頭、古代ギリシャの哲学謎?に見入ってしまった(爆)
たけしの映画は海外では評価が高いが(と自分で言っていたし)
私はあんまり彼の映画は好きな方ではない(ナンとも痛くて)
今回は暴力的な描写が少なく(大杉蓮の叩き方は痛そうだけど)
内容も時代を踏んで分かりやすい。やはり死人は多かったけど。
何といっても、たけし本人がいかに芸術家なのか見える作品。
作品中の挿入絵画も、自分で描いたものばかりだそうだ。
いかにも子供の絵具画~ピカソやポロック、ウォーホルもどき、
多彩なゲイジュツの才能がいっぱいに広がった作品群だった。
芸術家というと一般人からかけ離れた変人ばかりを想像するが、
それをもっと皮肉ってバカバカしく描ききっているのが笑える。
これを踏まえれば、当のたけし本人が倉持真知寿と同化して、
世間の評価など気にせず(気にしているように振る舞ってるけど)
自分のやりたいように伸び伸びと生きている男という気がする。
彼はやはり、その筋の人間なんだ(爆)
ところがそういう男に尽くす女は大変だ(+o+)
樋口可南子は、まさに適役♪と思わせるくらい上手い!
こんな奥さんはそうそういないだろうし(いたらいたで怖いし)
亭主の提案に楚々と従い、文句ひとつ言わないところが笑える。
二人のやりとりが、かなり真剣でブラックで物哀しい。
加えてあの娘の可哀想なこと!こういう輩は子どもなんか
持っちゃダメだよ~ってかムリだろ~と思わせる展開だった。
ホントにこのヒトの描き方は潔い(爆)
怪しい画商が、伊武雅刀から大森南朋に引き継がれても、
やっぱりあくどい感覚商法は変わっておらず(おそらく)
売れない絵を売りつくす手腕は変わっていないみたいだ。
でもそれをいちいち信じて、バカな絵(ゴメンね)を描き尽くす
真知寿夫婦が哀れでこっけいで、あきれて失笑してしまう。
ただ、アキレスと亀の追いかけっこを何に比喩したのかが
分かってくるラストで、なぜだかジ~ンとしてきてしまうのだ。
死んでも死にきれないアホなゲイジュツ家を
20万円の空き缶で取り戻せる妻を、私はバカにできない。
価値観がモノをいう夫婦の絆を潔く見せつけられた気がした。
でもこのラスト、彼自身の本望ではなかったみたいだ^^;
(彼の感覚はやはりタダものじゃない。好き嫌いは別として。)