休暇のレビュー・感想・評価
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断末魔と闘う刑務官
死刑囚は金田真一(西島)だ。彼の罪に関しては何も言及がないけど、再審請求とかも真剣みが足りないし、諦めきっているといったところか。途中でワンカットだけ老夫婦が独房の中に現れたのは彼の妄想。多分、殺された被害者なのだろう。そして知られざる死刑執行の描写はとてもリアルにしようとしているのか、“支え人”という役なんてあるんだということなんて誰も一般市民は知らない。それを描いたことは評価できる。2階で囚人に縄をかける役ばかりが目立ってしまうが、下に落とされたときにすぐには死なないはずで、その暴れる死刑囚を押える役目なのだ。まさに断末魔と闘う刑務官!
ストーリーは静かに進むが、囚人の心理だとか刑務官の心の葛藤が描き切れてないのがとても残念。時系列もかなり前後させてるので、最初は死刑執行と結婚披露宴のどちらが先なのかわからなかったぞ。
死刑制度に対する考えはさほど描かれてないし、死にゆく者を冷静に見つめなければならない辛さだけをテーマにしている気がする。テーマはいいんだし、もっと心を見てみたい。
何を伝えたい映画なのか?
死刑には相場があり、最低2人は殺していて、
しかも情状酌量の余地がない。
しかしこの映画の金田はそういう殺人鬼には見えず、割と正常に見える。
そういう人の死刑を観るのはさすがに心苦しいが、
果たして、金田は実際の死刑囚にどれだけ近いのだろうか。
そして、支え役は本当に忌むべき仕事だろうか?
死に関わる仕事は多数あるが、誇りをもって積極的に行う人も多いが…。
要は、死を見つめる映画としてはなるほど、と思う部分はあるものの、
死刑制度を考える映画という意味では、視点に偏りがあり参考にならなかった。
休暇
私が初めて映画で泣きました。
感動、とかじゃないんですが。
西島秀俊さん演じる金田が静かに日常を過ごしてるなかで、だんだん死に近づいていく感じが言葉数の少ない中でもひしひしと伝わってきます。
今まで死刑、何て言葉は聞き流しているところが多かったけど、死、という言葉についてとても考えさせられます。
まるで心は表裏一体の様に
吉村昭による原作は未読。
原作に描かれているのかは解らないが、小さな蟻が3回(うち2回はアップで)出て来る。
初めは死刑囚の前に。
彼はその蟻を見やり、何も行わない。
次は死刑部屋にて掃除中の刑務官の前に。
彼はその蟻を避けて掃除をする。
最後は旅先での部屋で仲居さんの前に。
彼女はお客さんを思いやる為に一匹の蟻をその場で潰す。人の命を奪った者。人の命が絶える瞬間を介添えする者。そして極々一般的な人、それぞれはいつ立場が入れ替わってしまうのかあやふやな状況を思わず考えてしまう。
極めて抑制された演出・演技で観客の心を刺激して来ます。
ただひたすら静かに絵を書きながら“その時”を迎える死刑囚。一時見せる凶暴性にゾッとさせられる。
一方、周りから勧められ見合い結婚を決める刑務官とバッイチ子持ちの女。打ち解けないままに結婚をして、子供と一緒に新婚旅行へ行く。
刑の出向の場面がとてもリアルに充ちているのですが、一見心を開いている様に見えながらも誰ひとりとして信頼していない死刑囚と、新しい父親に心をなかなか開かない子供。共に絵を書く事で自分の世界に閉じこもり刑務官=父親とは交おうとはしない。それが結婚する事を知った時から、妹の幸せを願う死刑囚の心に、新婚旅行中に徐々に…と信頼性を増して来る。
刑の出向中に、痙攣を止め早めに楽にしてあげる役目で抱きしめるのと、夜尿症の子供を抱きしめる描写を対比させて、死刑刑務官の心の胸の内の辛さを表している様にも思えました。
(2008年6月22日スバル座)
低予算だが見せられる
映画の経費のほとんどが出演者って感じ。
でも西島の演技がリアル。
何もしてない自分でも死刑首になった心境に
させられる。
映画では西島の刑をふれてないが、
そこがまた感情移入できる。
とことん悪の人間が死刑になっても他人事
になるからね。
ちなみに原作では強盗殺人らしい。
金がない日本映画はこういう映画をつくればいい。
あの幽霊は結局だれだったのか?
わかる方が入れば教えてほしい。
日常
とても丁寧に、静かに時間が流れます。
おとなしくて言葉数も少ない。
沈黙の意味が際立つシーンが多い。
死刑執行のときは、わたしたちには想像がつかないわけで
でも、西島さんの雰囲気からそのときがくる恐怖をひしひしと感じて。
そして、平井はその場に立ち会うことと引き換えに得た休暇で
なんとか家族の溝を埋めようと試みるわけです。
おもたい、、、
キャストがすばらしくステキ!
静かで動かない映像の中で浮き彫りになる「死刑執行」による心の動き
<ストーリー>
刑務官の平井は、離婚歴のある子持ちの美香との結婚を控えていた。彼女の息子の達哉はなかなか心を開いてくれないが、時間が必要であることはわかっている。仕事場である拘置所は、特別な緊張感もなくいつもと同じ時間が流れていた。唯一気になっているのは、死刑囚の金田。絵を書くことが好きな静かな男ではあるが、ちょっとつかみどころがない。
披露宴をまじかにしたある日、2日後に金田の刑が施行されることが言い渡される。処刑の際、下に落ちてきた体を支える「支え役」をすると、1週間の特別休暇が与えられることを知った平井は、有給休暇を使い果たしていたため、新婚旅行に充てるため、ためらいながらも志願する。
<個人的戯言>
とにかく静かな映画。
拘置所という場所、
更に子持ちの女性と結婚するというシチュエーションは、
ちょっと特別なのですが、日常はとても静かに、そして普通に流れていきます。それが刑執行が言い渡されてから、刑務官たちがバランスを崩し始め、作品全体がざわめき始めます。
そして「支え役」をしたことで、その「残像」に悩まされる主人公。そのことが彼の新しい家族への接し方にも変化をもたらします。
刑務官を演じる小林薫、そして死刑囚を演じる西島秀俊が、その心情の変化を大袈裟な感じではなく、非常に抑えた表現ながら、少しずつ沁みていくような変化を見事に体現しています。
そしてそのアプローチを更に際立たせるのが、長回しで台詞のないシーンの連続。そのある種苦痛なほど「動かない」シーンの間に、観ている方が居心地の悪さを感じることで、その場面にいる登場人物の気持ちを体感することになります。
ゆっくりした流れの中で、主要な登場人物の気持ちが非常に丁寧に描き出された作品。
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