重力ピエロのレビュー・感想・評価
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余韻の長さ
脚本、キャスト、音楽、どこをとっても文句なしです。
岡田将生を好きになるきっかけにもなった作品です。
重くて悲しい話ではあるんだけども、俳優さんの表情ひとつひとつが印象的でした。
特に、加瀬亮演じる泉が、渡部篤郎演じる葛城の部屋に行くシーン。葛城がビデオカメラを通して、自分の背景にあるテレビ画面に泉の顔を映し出します。これによって、一度に2人の表情がスクリーンで見れるわけです。余計に緊張感が増していて、この手法にとても驚きました。
後味の悪さというか、なんともいえない余韻が最高です。
初めて観たのは中1でしたが、その余韻が忘れられなくて何度も何度も観ています。
地元が宮城なので、父とロケ地めぐりもしました。
もう解散してしまいましたが、S.R.Sの主題歌も素敵です。
一度観て損はないと思います。傑作です。
母としては少々きつい作品
息子が生まれてすぐに伊坂幸太郎「マリアビートル」を読んだとき、登場人物の一人の子供がサイコパスに嵌められてビルの屋上から突き落とされるストーリーが辛くって、同時に犯人への憎悪がびっくりするほど込み上がってきて、なかなか読み進められなかったんだけど、この映画も主人公の母親がレイプの被害者になってしまって、しかも長男がその場に居合わせてしまって、さらに犯人は愉快犯で、というストーリーに、「マリアビートル」のときとおんなじような気持ちがした。
映画だと、役を演じていても加瀬亮は加瀬亮に見えるから、小説のときほど感情移入しなくて済んだけども。
(加瀬亮っていうとこないだ見た「アウトレイジ・ビヨンド」を思い出しちゃってこういう役柄がなんか違和感)
伊坂幸太郎の作品はだいたい最後にちゃんと蹴りがついてハッピーエンドになるにはなるんだけど、それでもアベンジャーズとかみたいな完全なハッピーエンドじゃなくて、なんかが残る。
この映画もそう。悪い奴は退治したけど、それと引き換えに、兄弟は犯してしまった罪をこれからずっと抱えて生きていかなきゃいけないわけで、そう考えると重いなぁ。
ヒーローは世界を救うためにいつも容赦無く悪を殺すし、その過程で悪以外にも多くの犠牲者を出しているんだけど、洋画はそこに焦点を当てないのがうまいと思う。
暗く、悲しく、切ない。
血の繋がり…
泉と春は仲の良い兄弟。
母は亡くなり、父は養蜂を営んでいる。
放火を目撃した弟の春から事件の起こる場所に落書きが関係しているのではと相談を受ける兄の泉。
2人は放火犯を捕まえようと犯行場所を推理する。
兄は遺伝子研究者。
放火の場所にある事が関係していることを見つける。
それは、春の出生に関係する家族の秘密である。
放火犯は春だった。そしてその場所は遺伝子上の父親が罪を犯した場所…春は火をつけ浄化していたのだ。
母をレイプした犯人が遺伝子上の父親。
春はレイプ犯の子供…
血を呪った春は、犯人と一緒に死のうとしたのだ。
なぜ母は春を生んだのか?
父も母が望むならと産むことを賛成した。
生まれてくる子に罪はないが
事実を知った子は辛いだけだと思うのだが…
共感できない作品。
重力ピエロ
【俺達は最強の家族だ】
『誰も守ってくれない』のレビューで 私は『家族とは 血を分けたから、同じ屋根の下に集うから家族なのではない。 家族とは何か、如何に家族たるべきか、家族であろうと意識して初めて家族なんだ』と書いた。 同年公開の本作も『俺達は最強の家族だ』を以てその事を強く表明する。 〜「血の宿命性」ではなく「意識」こそが大事なのだ、と。
だが 作品は同時に「家族とは意識ではなく血だ」とゆう真逆定義も訴え、逃れられぬ宿命と意思の抗いの相剋の中に登場人物達を置き 激しい葛藤に苛ませてゆく。
それらの解決策として「暴力」が行使されるが、この暴力行為自体が「血の宿命性」とも「意思の抗い」ともとれる両義的皮肉を呈しており、 つまり[家族であると意識する事]は無論大事だが それは[何物にも負けぬ程の強い意識でなければならない]事の必要性を作品は強く強く訴求していた。
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《劇場観賞》
キャスティング最高!
原作は伊坂幸太郎の直木賞候補作品のサスペンスもの。
さすがに女性が見ると結構キツイ。余韻というか焦燥感というかなんとも言えない胸をしめつける感じがいつまでも消えない。こんな映画は久しぶり。キャスティングが最高。
観客を引き込む抑えた演出がとてもよかった。
最近観た中で一番
なかなかよかったと思います
ずいぶん前から映画館で予告編をやっていたのですが、観ようと思ったのはつい最近。ミステリー的要素があると知ったため。
なかなかよかったと思います。基本的にはストーリーがいいんだと思いますが、役者さんがみんな縁起が上手。
加瀬亮の強いんだか弱いんだか、激しいのかクールなのかわからないような普通の人ぶりもすばらしいし、岡田将生のミステリアスで危うい雰囲気もよかったです。小日向文世の父親もよかったなあ。
ただ暗かったり重たかったりというわけではなく、多少は笑いもちりばめてあります。
探偵役が集めた情報を元に犯人をピタリと当てるような作品とは趣が異なり、突然犯人がわかるわけですが、それでもつまらないとは思いませんでした。
殺人放火は重罪です
そこそこよくできている、かな。
最高の映像美、言葉の美しさ
岡田さんという俳優のことはあまり詳しくなかったが、この作品を拝見し、最高に美しく透明であり、魅力的な方だと思った。
どんどん伸びていく逸材だと思う。
小日向さんの父の存在はいつもながらに物語にスパイスを与えている。
永遠に答えなど出ることのないテーマに
ハルが出した答えが正しかったのかどうかはわからないが
それもまた一つの答え。
原作からでなく映画から入ると
どうしてもなかなか原作を読んでみたいとは思えないものが多いが、数少ない原作を読んでみたくなる作品となった。
19.11.2009
複雑な気持ち
父親の存在と偉大さに感動する家族愛映画
この作品には、二人の父親が登場する。なぜ二人も、なのかは、ネタバレに繋がってしまうので、理由は映画を見ていただいて理解してもらうしかないのだが、この二人の父親の存在感がこの作品の大きなポイントなのだ。
主人公の兄弟の実の父親は、とても朴訥とした素朴さが魅力的だ。ところが、家族の危機に立ち向かうときに見せる人間的な大きさは、観客さえも驚くくらいだ。
「楽しそうに生きていれば、地球の重力なんて消せるんだよ」
このラストシーンでつぶやく言葉が、実の父親の大きさ、偉大さを自ら物語っている。どんなことがあっても、心を安らかに、楽しく生きていく、いや生きていきたいと願う、この実の父親の心の内は、観る者の心にも強く訴えかけるものがある(小日向文世の好演が光る)。
一方、実の父親でない、もうひとりの父親は、理性的に振る舞って見せてはいるが、それは許すことのできない犯罪を肯定化するもの。ただ、その反社会的な理性というものが、怪物のような大きさを感じる。ある意味、実の父親より存在感の大きさはこちらにあるように観えてくる(渡部篤郎の感情を抑えた演技がすばらしい!)。
この作品のキーは遺伝子なのだが、それはこの二人の父親の血を主人公の兄弟がどう考え、行動させるのかが、物語を左右する。遺伝子とは、家族の絆のひとつの証なのだが、それが逆に家族の危機を招く。しかしそれでも、実の父親は「私たちは最強の家族だ」と、力強く訴える。この最強の家族とは何を意味しているのか、それは観客ひとりひとりで感じ方が違うと思う。
家族愛映画という表現は、少し甘ったるい意味あいがあり、この作品の言い表す言葉としては当てはまらないかもしれない。しかし、父親の偉大さと人間の大きさが、家族を遺伝子以上にしっかり繋いでいる、愛情を感じるのだから、この作品は家族愛映画のなにものでもない。新しい、家族のあり方を描いた映画が日本に出現したことに、映画ファンのひとりとして拍手を送りたい。
楽しく生きようとすれば、宙にだって浮くかもしれない
やわらかい映像につつまれた、暖かい作品
といってもそれは、幸せだとかとはちがい、どちらかというと、
なんともいえない寂しさだったり、じれったさだったり、切なさに似ている
淡々と、現実と向き合い、淡々と、犯行にいたる。
世間的な正解ではないかもしれないけれど、家族の絆としては、
春も、泉水も、お父さんも、正しかったのだろう。
ハッピーエンドとか、そういう簡単な言葉では括れないラストではあるのだけど、
観た後に、あたたかい余韻に包まれる良作。
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