「2人の女優の競演が見ものかな?」ブーリン家の姉妹 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
2人の女優の競演が見ものかな?
イギリスの歴史を詳しく知らない自分にとっては、この映画は、姉妹でありながらも、親が家運を賭けて決定する、2人の娘を王の世継ぎを生ませる為に、嫁がせてしまうと言う中世のイギリスの貴族社会の哀しき、世にも残酷な物語は観ていて「哀しい」の一言である。
親が決定する、家運隆盛の為に行う、政略結婚物語は洋の東西を問わず、どこの世界でも、昔は普通に行われていた現実があり、どうしようも無い負の歴史遺産であるのだろう。人間のエゴ丸出しの哀しいサガを描いたイギリス版、女たちの大河ドラマとでも言うところだろうか。
本当に、こう言う作品を観る度に、20世紀以降の自由経済の世界で暮らしていける自分達家族は幸せな世界に住んでいるのだと感謝せずにはいられない!気持ちが込み上げてくると大袈裟に聞こえるかも知れないが、本当にしみじみ、そう思うのだ。
特に、我が国日本に於いても、婚姻や、家を継いで、後継者としての息子を授かると言う風習が長かった社会制度の中にあっては、世継ぎを生む為の道具としてしか、女性の価値が認められていなかった、当時の世界と言うのは、親も、子もとても自由の無い哀しい縛りの世界観の中でようやっと暮しを立てていたのがうかがえる。
しかし、その理不尽さも、今だから、それを野蛮な人権を無視した残酷物語と思うのだろうか?当時の時代を生きていた人は、必ずしもそうは考えていなかったのだろうか?
個人的な幸せよりも、自分が生れ育った家を如何に、大きく栄えさせる事が可能であるかと言う事に終始して暮している人々にとっては、大奥に上がる事も、女性として、名誉な事なのだろうか?
この映画は、衣装も綺麗で、それなりに時代考証もきっと正確にされていて、素晴らしい映画なのだろう。
しかし、いくら良く出来ていても、このラストの哀しい結末には感動する事は出来なかった・・・
話が史実に基づいて描かれる事実であれば、在るほどに、その哀しい現実を観るのは辛いものだ。
ナタリー・ポートマンもこう言う役処は結構様になっているし、スカーレット・ヨハンソンもとてもハマリ役だった様に思う良い映画だ。でも好きになれない!!
姉妹は、姉妹であっても、時にライバルとなり、愛する存在では無く、憎しみの対象者となってしまう、この女性たちの闘いが狂気を帯びて確かに、映画として迫力は感じるのだが、この時代に生きなければならなかった彼女たちの現実の生活を思うと私は、全く感情移入の出来ない、感動を覚える事が出来る面白い作品と言う気持ちにはなれない。基本的に人権が傷付けられる話は私には、NGなのかもしれない。
しかし、衣装デザインや、音楽とか、当時から現在迄のイギリスの歴史を好きで、勉強してみたい人には、きっと見応えがある作品だと思う。
女性の人は、この映画を観ると姉のアンと、妹のメアリーのどちらのキャラにより魅かれるのだろうか?私は姉妹の母に同情するだけの映画だった。