トイ・ストーリー3 : 映画評論・批評
2010年7月6日更新
2010年7月10日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
3部作を締めくくるにふさわしい壮大にして切迫したクライマックスがある
ジョン・ラセターはかつてこう言っていた。「トイ・ストーリー」のオモチャたちは、ピクサーのスタッフの分身である、と。第1作で描かれたオモチャ同士のライバル関係や友情は、まだ20代の若者だったスタッフをそのまま反映させたものだったのだ。とすれば、第1作から15年の年月を経て公開となる「トイ・ストーリー3」が、テクノロジーのみならず、エモーショナル面で格段に深化しているのも当然の話だ。いまやピクサーの初期メンバーはみんなが子持ちであり、年長者のラセターに至っては5人の子供のうち3人が独立している。これまで通りの笑いと冒険を提供しつつ、別れというヘビーなテーマを選んだのは、いかにもピクサーらしい。なにしろ、彼らのモットーは、「自分たちが観たい作品を作る」なのだから。
いまや傑作の代名詞となったピクサー作品にあえてケチをつけるとすれば、いつも冒頭の30分間が素晴らしすぎるぶん、中盤からエンディングが月並みに落ち着いてしまうことだ。しかし、「トイ・ストーリー3」はラストの30分が傑出している。3部作を締めくくるにふさわしい壮大にして切迫したクライマックスがあり、そのあとに涙なしでは観られないエンディングが待っている。子供の心を忘れかけた大人こそ、きっと心を揺さぶられるはずだ。
(小西未来)