少年メリケンサック : 映画評論・批評
2009年2月3日更新
2009年2月14日より丸の内TOEI1ほかにてロードショー
アナーキーな笑いと主張が心地いい
宮藤官九郎が映画という媒体を使って、やりたいことをやってのけた。だからといって、この映画には気負いがない。ときにゆるく、ときに激しく、キタナく、情けなくも破壊的にパンクな面白さが炸裂する絶妙なさじ加減。いや、パンクなんて知らなくても、このパンクな面白さは堪能できる。ウンコネタを面白がれるような小学生魂がまだ健在ならば。
主人公は音楽出版社の若いダメOLと、25年前にパンクバンドで燃え尽きたダメなおっさんたち。ロードムービーだからそれぞれが変化を見せていくのは当たり前だが、絵に描いたような成長はかけらもなし。ダメで何が悪い? ダサさって何だ? オレはこれがやりたいんだよという気迫と熱さと。そんな衝動に忠実に生きるしかないやつらがちょっとカッコよく見えてくるのだが、それでも当たり前のカッコよさには決して落ち着かないところがまた、たまらなく切なく、愛おしいわけで。映画としても、いわゆるウェルメイドなものじゃない。しかし、よく観客の「感動しましたぁ」というCMを流すような邦画とは対極の、アナーキーな笑いと主張が心地いいのだ!
個性たっぷりな主演陣とキャラクターの醸し出す不協和音の味も、監督の狙い通り。宮崎あおいには意外性以上の面白さが足りない気もするが、かわいいから許せる。おっさんらの1曲しかない(笑)持ち歌、「ニューヨーク・マラソン」の歌詞を聞き取れた日には、きっとアッパレと叫びたくなるはずだ!
(若林ゆり)