百万円と苦虫女のレビュー・感想・評価
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妙なところが面白かった。
映画には入りこめなくて、普通に面白いというわけではなかったんですが、妙なところが面白かった。
よくどこかの映画祭でやってる、ある視点部門ってとこでしょうか?
こういう人、表向きはわからないけど、実際たくさんいるはずだと気づきました。
就職に失敗して、派遣やアルバイト生活、そのうち家にいずらくなって家を出る。
いろんな派遣やアルバイトをしながら、世間を漂流していく。
昔なら、けっこうチャンスがあって、一生懸命頑張れば、認められたり、収入がアップするチャンスもあったんだろうけど、今はほとんどなく、どんなに頑張っても、派遣は派遣、バイトはバイト、逆に安くこき使われるだけで、いざとなったら使い捨て。
いつまでたっても収入アップや、キャリア形成のためのスキルは身につかず、結婚もできないと思う。
不満があっても、自己責任で切り捨てられるから誰にも言えないし、他人にはまったくわからない。
まさに「太平洋ひとりぼっち」状態。
この映画では中途半端なところで終っているけど、是非続きを見てみたい。
こういう人って、最終的にどこに行き、どうなっていくのかすごく興味あります。
蒼井さん主演のシリーズ物として、続けてほしいです。
妙なところといえば、埼玉県民としては、埼玉県の上尾駅でのラストシーンが、印象に残りました。
あ、なんかもどかしい。。
ずっと良い事なかったんだから、最後くらいハッピーエンドでも良いのに・・・とか思ったんですが結構面白かったです。
蒼井優さんは可愛らしいですね、でも芯がしっかりある感じがこの主人公とも似ている。
なんでかすっきり!!
本編が終わりエンディングが流れて、ぼーっとした頃にじんわりとくるものがありました。なぜかすっきりします。
蒼井優、森山未來などの役柄が唯一無二でぴったり。
クスッっと笑えるし泣ける、色んな魅力がある作品だと思います。お勧めです!
自分探し。
「自分を探したくないから旅をする」っていいなって思いました。
旅をしただけで自分なんてみつかるはずのないのに、みんなかすかな希望を抱いて旅に出ようとする。
現実の生活に戻ったとき思い出だけが残って、自分を見失うだけでした。
だからこの映画の雰囲気もさりげない台詞もすごく好きです。
終わり方も。
相変わらずおいしいとこどりのピエール瀧さんも。笑
蒼井優の為に作られた映画と思ってください。ファンなら観るべし。
他のレビュアーの方々もも書かれていますが、この作中の主人公鈴子を演じれるのは蒼井優しかいません。
主人公鈴子は見た目はかわいらしいのですが、人付き合いが苦手でそれを苦に百万円をためて知らない場所へ転々としていきます。
田舎くさくて、透明感があり、ほわっとした感じの女性をうまく演じていますが、むしろ地に近いのかもしれません。
むしろ彼女以外ではこの役は難しいかも。
脚本も彼女を想定してできたのかもと思うくらい彼女の映画になっています。
この映画多くの女性に共感を呼びそうだなあと思う。
だが男性にとっては・・・。
蒼井優のかわいらしさ以外には頭に残らなそうです。
蒼井優に魅かれるかいい印象しか持たないでしょう。
最後のドーナツかじりながら荷物抱えてつぶやくシーンは
秀逸です。本当に愛らしさを感じました。
これがこの映画のすべてで、素晴らしさかも。
作中の森山未來、もっとがんばれよ(笑)
彼も透明感のある男優な
ので二人の組み合わせって
すごく不思議感が溢れています。
このキャスティング良しです。
彼なら百万円貯まらないように金を借りるって手段も
女々しくて有りでしょう。
私は「はっきり言えばいいのに」としか思いませんが・・
そのもやもや感も含んで魅力ある映画です。
最後に
ロードムービーは意外とはっきりと女性向き、男性向きに分かれるのかもしれません(ターゲットがはっきりしていると思う)
登場人物が少ないだけに主人公の演技力や魅力が問われる手法だと
感じました。
でも映画館で観たいかというとそうではなく、
日曜の午後にボーっとして、紅茶を飲みながら部屋で
ゆっくりと観る映画です。
なかなかよかった
本当は映画を見たかったのですが、近くの映画館ではやっていなかったのでDVDで見ました。
基本、ロードムービーは好きではないのですが、その中ではなかなかよかったと思います。
やっぱり、鈴子というキャラクターが蒼井優さんによって演じ切られていることに尽きるでしょう。
あの、人と接するのが苦手、主張するのが苦手、でも引きこもりに徹することもできない感じが、蒼井優さんの容姿、表情、台詞などから自然に醸し出されていて、「あ~、こういう子、いるよね、きっと」というリアリティにつながっているんだと思います。
さすが。
蒼井優の素朴なイメージを楽しむ映画
蒼井優の、垢抜けない、田舎っぽい素朴さ、そういうイメージを鑑賞するという楽しみ方はできる。コミュニケーションの難しさ、人間関係の鬱陶しさも、それなりに表現できている。
結局ひとりでは生きていけないのよ
蒼井優、森山未來、ピエール瀧
いい味出してますね
自分を探さない旅・・・・・
おじさんもこんな生活ができたらよいと一瞬思いました
平凡で人見知りの鈴子も実は結構技はもってるし、
人からも好かれているんですよ
最初とんでもないクソガキだと思った弟も最後には頑張ってるし
結局ひとりでは生きていけないのよ
オチはすぐ見えましたがオチのオチには気がつかなかった
一本取られました
よい映画でした
蒼井優さん、いいわ~。
人とのコミュニケーションが苦手で、苦虫を噛んだような顔をしている女の子。
人と関わりたくないけれど、でも、誰か心許せる人と関わりを持ちたいと願っている。
一人が好き。
人に関心を持たれるのはイヤ。
ほめられるのも苦手。
猫が好き。
自分を探したい。
自分を変えたい。
一人でいたい時は、一人でいればいい。
失敗しても、沈みっぱなしもしんどくなったら、起き上ればいい。
でも、人の温かさを感じたら、「二人も悪くないね」と、そう思える時があるといいね。
蒼井優は、不思議な魅力に溢れている。
控えめでいながら、芯の強さを感じる。
冒頭の歩く後ろ姿。
ちょっと肩をいからせて。
それだけで、この映画に引き込まれた。
とっても心地よい風が吹きぬけていった
タナダユキ監督の作品
『赤い文化住宅の初子』『16』に続いて、
3作目の鑑賞だったのですが、その両作品よりも
わかりやすかったですし、心情的にもかなり、
共感できました。今回、ミニシアターでなく、
ある程度、大きいスクリーンで観ることのできた
影響も、かなり大きかったのではないかと(笑顔)
・誰も知らないところに行きたくなる
・いつも、逃げているだけなんです
今作、蒼井優さんを思い浮かべながら、
作品を書かれたそうなんです。蒼井さんも
作品の企画段階から、参加されたとのコト。
だから、作品への思い入れも
相当、大きかったのではないかと思うのです。
[心に刺さる]
大きく分けて、2種類あるかと。
「グサっ、と来るのと」
「ジンワリ、と染み入ってくるのと」
作品の設定内で、
「前科もの」とか、キツイ状況もあります。
ただ、セリフひとつひとつは、
”グサ”じゃなくて”ジンワリ”なんですよね。
とても、やさしい。時が経つに連れやってきてくれる感じ。
「あて書き」というとオーバーかもしれませんが、
それだけ愛情がそそがれた作品だからこそ、
観る側にも、その愛情が届いたのではないでしょうか。
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ストーリー内には、
イジメ、手紙、不動産屋など、
謎かけのような出来事や、クスっと
してしまう微笑ましいシーンもあります。
”ラストシーン”まで、セリフを
聞き逃さぬよう、またシーンを
見逃さぬよう、お気をつけ下さい。
~主役の蒼井さんのインタビューコメント~
「女性から女性に向けての映画だと思いました」
ピュア
蒼井優と森山未来
大好きな私には、、もう、、、
すごい面白かったです。
劇場で見てよかった。
原田郁子の歌も切なくてかわいくて。
最後の最後、曲が終わるまで席を立てませんでした。
蒼井優の
可愛い態度、可愛くない態度。
強がってるところと、どうしようもないところ。
みんなどこかで思い当たる気持ちが
本当に胸に来ました。
未来君もよかった。かっこよかった。
百万円で買えない人生。
チラシやポスターを見る限り、今が旬の蒼井優・主演の
ポップなガールズムービーの一つなんだと思っていた。
監督・脚本は「タカダワタル的」や「赤い文化住宅の初子」
(残念ながらどちらも未観)などの女性監督・タナダユキ。
いや、まさか。。
こんなに完成度の高い作品だとは思わず、(ゴメンなさい)
ラスト間近で、オイオイ泣いてしまった自分にもビックリ。
今の世の中、人付き合いほど難しいものはない。
例えば今、相手との距離が上手くとれなくて悩んでいたり、
昔から人見知りだとか、大勢の中で浮いてしまうとか、
学生だったら「いじめ」に合っているとか、そんな全ての
「不器用なヒト」に贈りたくなる愛すべきストーリーなのだ。
主人公は、とある事件に巻き込まれて(意外に笑えない)
前科がついてしまった手前、百万円を貯めて実家を出る!
と宣言した鈴子(蒼井)。次々と居場所を変え、その土地の
人間たちと関わりながら自分再生の道を模索する日々。
可愛い顔をしているうえ、人に好かれる要素もあるのに、
なかなか他人となじもうとせず、逃げまどう毎日。
とある土地でバイト青年・中島(森山未來)と出逢ったのを
機に、彼女の生き方が変わるかと思われたのだが、、、。
蒼井優のストイックな内向演技と並行して描かれるのが、
彼女が家に残してきた小学生の弟。
この憎まれ口ばかりを利く生意気小僧が、実は学校で
壮絶ないじめにあっていることを、この姉は知らない。
姉は転々とし、弟は来る日も来る日もいじめを受ける。
この対比を、監督は冒頭から延々と描いてみせる。
なにが言いたいのかは自ずと分かってはくるものの、
後半、弟が姉にしたためた手紙の内容には、おそらく
この姉でなくても不甲斐なさに泣けてくるに違いない。
自分が自分であり続けるためには、どこにいようとも
どうあるべきなのかを、この弟が教えてくれるのである。
女性監督らしい視点から世界感を広げた映像美。
つましいひとり暮らし、手作りのカーテン、家庭菜園。
ケータイもパソコンも使わない意思疎通がある一方、
ふとした誤解がもたらす悲劇をユーモラスに描ききる。
どの土地の人々も、食べ物も、それぞれに素晴らしい。
信じ合うことの難しさ、本音を言い出せないままの
男女間に起こるよくある悲劇の顛末が、えぇ~!?と
いう驚きとともに迫りくるラスト、突然の幕切れの後、
それからどうなったのかが今でも気になって仕方ない。
まさに苦虫食ってんじゃねーよ!と励ましたくなる作品。
(想いは素直に伝えるのが一番。でも桃娘見たかったな。)
今の若い女の子の気持ちをよくとら捉えつつも、前半の強引な展開が残念。蒼井優ののびやかな演技は素晴らしいかったです。
いま旬な女優、蒼井優を見たくて、リバイバル上映を見てきました。。
女性監督だけに、タナダユキが描く人物たちは、今の若い女の子の気持ちをよくとら捉えていると思います。主要なキャラになるほど、自己表現が苦手で人とぶつかるものだから、人との交わりを避けようとします。特に主人公の鈴子は、その代表格。その不器用な性格のゆえに、100万円貯まったら引っ越して、人間関係を一新するという『ルール』を自らに化したのでした。
きっとそういう気持ちって、等身大の主人公に同じ20代の女性なら、あるよね~って共感するシーンが多々あることでしょう。でもそれって、傷つきたくないから積極的に行動しているようで、実は降りかかる火の粉から逃げ回っていることなんだということを鈴子が気づいていくストーリーなんですね。
その微妙な主人公の心理を蒼井優がのびやかに演じていて、さすが上手いなぁと思いました。
『フラガール』のポジティブな熱演とは違った、細やかな性格描写に彼女の演技の冴えを感じさせます。
但し脚本と脚本のツメの甘さは感じます。
海の家や農家の手伝い、ホームセンターのバイトなんかでアパート借りて短期間に貯金ができるほど世の中は甘くないのです。そして鈴子が一番負い目を感じて、引っ越そうとする前科のところも、ルームシェアーしていた同居人の家財道具を勝手に処分したことを刑事告訴された程度。盗みや傷害などもっと重い罪でないと、鈴子が世間から逃げ回る動機になり得ないと思います。
鈴子の性格も、当初すぐ切れてため口ついていたのが、途中から大人しく無口になります。弟の拓也も最初はすごい悪口ばかりの悪ガキでしたが、鈴子が自分へ悪態を浴びせかけてくる連中と闘うところと遭遇して以来、なんか「いい子」に変身してしまいます。
拓也はいじめていて、その憂さを姉にぶつけていたのかもしれません。ただ登場人物の変化が唐突に見えてしまうところをもう一段練り込んでほしいなぁと感じました。
鈴子が世間から逃げていたことを拓也の手紙から悟るわけですから、拓也がどういじめに立ち向かうかというところは手紙だけでなく、きちんと描いてほしかったですね。
冒頭から中盤は、強引でわざとらしいストーリー展開で、やや眠くなったものの後半のバイトで知り合った亮平との恋を描いたところはよかったです。
お互い不器用な鈴子が亮平が、だんだんお互いを理解しあえて、恐る恐る気持ちを打ち明けるところはなかなか見応えアリです。
でも問題は、100万円貯まったら鈴子は街から出て行くことを決めていたのです。二人の恋はもう終わりなのでしょうか?
亮平は、鈴子をずっと自分の住む街に引き留めるべく、ある問題行動を起こします。けれどもその問題行動に鈴子は疲れて、ふたりの仲はピンチに!
亮平のとった行動。そしてふたりの未来を暗示させるラストシーンを理解できるかどうかどこの作品の感想がクグッと違ってきます。
ぜひDVDでラストシーンを見てください。
映画の世界へ、優ちゃんが連れてってくれます
いま日本で今一番演技力があると評価している、
蒼井優チャンの初主演映画です。
クリアでみずみずしい映画でした。
上手い役者さんというのは、
演じるだけじゃなく、
観客を作品の中へ
連れていってくれるのだと再認識しました。
反発しあっている様で
性格がとても似ている優ちゃんと拓也君の兄弟は
お互いの事を頼りにしている関係です。
お姉チャンはひょんなことから前科一犯になり、
地方を転々とするのですが、
その先々で青春ぽい事件に巻き込まれ、
何と無く成長してるのかなぁ、
って感じのお話でした。
最後はハッピーエンドのクセに
監督が意地悪でスッキリさせてくれません。
みずみずしく、
ライト感覚に仕上がった
優ちゃんの顔立ちのような映画でした。
「何やってんだろう、私。」「何やってんだろう、俺。」
映画「百万円と苦虫女」(タナダユキ監督)から。
あることが発端で、百万円貯めては、どこかへ引っ越す、
そんなことを繰り返している主人公、鈴子。
(配役は、最近お気に入りの女優の一人、蒼井優さん)
そんな彼女を好きになり、なんとか百万円貯まらないように
わざわざ彼女にお金を借りてまで増えないようにする彼。
結局は、理解されず、別れる羽目に。(ちょっとネタばれ(汗))
そんな2人が、場面は違うのに、同じ台詞を呟く。
それが「何やってんだろう・・」だった。
一所懸命やっているのに、誤解され、考えた結果にたどり着けない。
そんな時に口に出る台詞かもしれないな。
超プラス思考の私だって、何度も口にしてきた台詞だから、
その想いが伝わってきた。
挑戦して失敗する、虚しくなる、でもまた挑戦する。
結局は、その繰り返し。なかなか思うようにならない。
でもこの台詞、必死に自分と向き合っている証拠だと思う。
その繰り返しこそが、人間を成長させている気がする。
「何やってんだろう、私。」「何やってんだろう、俺。」
素敵な呟きである。
HELLO MY LIFE
素晴らしい作品でした。
予告を見た段階から見たいなって思っていたのですが、
最後はどうせ森山未来とシアワセになって終わり、なるんだろうなぁなんて思っていましたが、甘かった!
すごいいいエンディングというか終わり方で、素敵な映画です。
映画映画していないし、なんかRealでした。
台詞も映画らしい飾った台詞はないし、自然体な映画でした。
それも主演蒼井優だからこそ、成し得た自然さだったと思います。
森山未来との出会いから急展開に回りはじめるんですが、人生の急展開さってこんなんだなぁーとしみじみ。
終わり方といい、恋愛観といい、なんか悟りきった作品でした。
とても素晴らしかったです。
DVD出たら買いですね、これ。ぜひ副音声付きで解説して欲しいです(笑)。
鈴子っていいな。
長い間待ってよかったです。
やっぱりよかった。
蒼井さんの独特の空気、表現。
映画の最中に静まるシーンの蒼井さんの表情が印象的です。
気がついたらずっと釘付けになってました。
また、森山未来くんがいい。二人は本当にお似合いです。
まだ人生をたった15年しか生きてない私ですが、鈴子のように正直にというか、素直に前向きに道を見つけられたらなぁ~と思います。
後、主題歌最高です☆
あんな幸せになれる曲あんまりないと思います・・・。
えらそうにすいませんでした。
蒼井優派になりました
蒼井優じゃないとできないでしょうね、この映画は。
観ていて自然に、鈴子ちゃんって人を受け入れることが出来ました。
ラストの終わり方も嫌いじゃないです。
そんなうまいこといきませんよね、普通は。
自分は森山未来と付き合いだすシーンがすきですね。
家の葱で笑うとことか、なんか現実味があって、かなり良かったです。
大学生に戻りたいな~(笑)
蒼井優がタナダユキの世界にはまった。
短大は出たけれど定職に就けないまま、実家のある東京でレストランのアルバイトの日々を送る鈴子。同僚と賃貸マンションを探し家を出たものの、知らぬ間になぜか同僚に振られた男とのルームシェア生活。そしてあることが原因で同居男から訴えられ前科者になってしまう。なんとも理不尽にハンディを背負わされ、家族からもお荷物扱いの鈴子はまだ21歳。自分という存在をできる限り消して生きるために、旅に出る。そのために鈴子が考えた条件が、百万円貯まったら場所を変えて生きるということ。
海の家のアルバイトではお好み焼きの名人と言われ、山の農家では桃もぎのために生まれてきた人と言われ、彼女の意思とは裏腹に、どこへ行っても一生懸命に働けば確実に存在感が生まれる。同時に、人の温かさに触れることで、確実に地に足がついてゆく鈴子。ところがどこへ行っても百万円が貯まる前に、問題が生じて出て行かざるを得なくなってしまう。そして東京近郊の町のホームセンターでは、アルバイトの先輩の大学生とはじめての恋。鈴子にとって旅に出て初めての、仕事以外に夢中になれる出来事であり、愛・信頼・ジェラシーといった感情を芽生えさせるものだった。
主人公鈴子はもともと落ちこぼれなのだが、さらに下へ蹴落とされた若い女性。格差が広がり、理不尽がまかり通る現代社会の象徴ともいえるフリーターである。そんな彼女が始めるのは、流行の自分探しなどではなく、存在感を消して生きるいわば自分無色化の旅。そんな旅の象徴となるのが、彼女自身の手縫いのカーテン。人からの干渉を拒む盾のようなもの。ところがそんな旅から自分という存在が着実に見え出してくるのだ。このあたり、タナダユキは、自分探しブームへのアイロニーを持って描いてゆく。それは一見醒めているようでいて、時に痛快ですらある。全編を通して、常に下からの眼線で描かれながらも、そこには微塵の卑しさもなく、私も同じ人間であるという強烈なプライドに貫かれているというのも、見事だ。
鈴子の行動の中では、手を繋ぐという行為が、大きな意味を持って描かれる。弟と、そして恋人となる大学生と。前科をもらった鈴子は強い。街で出会った同窓生グループにいじめられても、正面から立ち向かう。そんな姿を見て、姉を恨んでいた弟が、その存在を認める。家への帰り道の公園で手を繋ぐ2人。心に姉弟の絆が結ばれる。その絆の強さと温もりを、鈴子が旅先から弟へ出す手紙に込めて見せる演出は絶妙だ。また、アルバイトの帰り道、自転車で追いかけてきた大学生からの告白。互いに意識し合っていた心が結ばれる瞬間だ。ゆっくりと手を結ぶ2人。この2つのシーン、ともに心の喜びがあふれ出したような手の繋ぎ方がいい.スクリーンいっぱいに暖かな温もりが漂い出してくる。
タナダユキの脚本は、蒼井優という女優にひかれ、彼女をあて込んで書いたものだという。鈴子というキャラクターはもちろん、そのファッションから歩き方まで、実に丹念に書き込み描き出しており、スクリーン上の鈴子は、まるで蒼井優と相似形を成しているようにさえ思われるほど。それに応えるかのように、カットカットで奔放なまでに変化を見せる蒼井優の表情と、一貫して醒めた調子を変えない台詞をなんと評せばいいのか。とにかくその存在感は圧倒的だ。彼女を受ける森山未来の適度に乾いた感じも捨てがたい。ラストの追いかけも、押し付けがましい爆発感のないところがナチュラルでいい。
この作品は確実に今の青春映画だが、現代の日本社会のどうしようもない一面を描きながらも、最後の最後に捨てたもんじゃないと思わせてくれるところは、少なくとも評価に値する。百万円という現実的な記号よりも、人の心の中にはもっと大切なものがあるというスピリチュアルは、時代を経ても色褪せることはないだろう。小品だが、心に残る秀作だ。
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