ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛 : 映画評論・批評
2008年5月20日更新
2008年5月21日より丸の内ピカデリー1ほかにてロードショー
物語は大胆にアレンジされ、戦闘も大増量
原作の真髄を見極めたうえで、どこまで原作から離れて映画ならではの表現が出来るか。これが「ロード・オブ・ザ・リング」以降、すべてのファンタジー文学の映画化作の必須課題となった。前作「ライオンと魔女」が、この課題をクリアしていないにもかかわらず原作ファンに受け入れられたのは、監督アンドリュー・アダムソンが子供の頃からの原作ファンなので、8歳の彼が初めて原作を読んだときに抱いたイメージをそのまま映像化したのだと了解されたからに他ならない。監督自身もこの状況は了解済みだったに違いなく、第2作ではこの課題への真っ向からの挑戦を試みた。
結果、物語展開は娯楽映画の法則に従って大胆にアレンジされ、戦闘も大増量。ナルニアの自然も今回はただのロケ映像ではない。視覚効果はWETAでニュージーランドロケとくれば「ロード〜」の呪縛からは逃れられないものの、現実の川や森の映像を活かしつつ、そこに微妙な視覚効果を加えて、ナルニア独自の自然の創造を試みている。ルーシーたちが小舟で下る川の尋常ではない透明さ。スーザンが弓を構える森に降りそそぐ木漏れ陽の静謐さ。今回は、大人になったアダムソン監督が再訪したナルニア国がスクリーンに広がる。
もうひとつ、監督の原作への愛を感じさせるのは、名前は呼ばれないが原作の読者には素性が推測される原作キャラたちの登場だ。赤リスの枝渡りも、巨人の天気てんくろうも、ふくらグマの3兄弟のにいさんグマも、きっと監督がどうしても描かないではいられなかったのに違いない。
(平沢薫)