劇場公開日 2008年9月13日

「誰もがいつかはおくられびと。」おくりびと ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0誰もがいつかはおくられびと。

2008年9月17日

泣ける

笑える

幸せ

試写会にて。

第32回モントリオール世界映画祭・グランプリ受賞作品。
受賞前から観るつもりではいたけれど、実際に観てみたら、
あ~これは♪と思うほどの素晴らしい作品なので驚いた。

いや、驚いたのは…その内容で、私はもっと荘厳な日本の
葬送儀式を描いた作品なのだと思っていて(そうなんだけど)
あんなにユーモアに満ち溢れたドラマだとは思ってなかった。
だって、腹を抱えて笑えるほどなのである^^;
そして、ひとしきり笑わせておいて、ズシンと胸にも響く。
やがて流れ落ちる涙が冷たくはなく、温かいことに喜び、
いつか自分にこんな日がやってくることを予測してしまう。
「死」を「旅立ち」と捉えられるなら、ちっとも怖くはない。

そして、なんといっても…。モッくんと山﨑努だ。
こういうテーマを選んでおきながら、なんとも飄々とした
二人の掛け合いを見ていると、あ~生きてるっていうのは
こういうことなんだよな、、、と実感できる。
動植物の死、によって生き長らえている人間たちなのだ。
綺麗だの気持ち悪いだの、まともだのまともでないだのと、
ヒトは他人の職業についてあれこれと意見をするけれど、
どんなにドエライ人間だっていつかは死ぬわけでしょう。
その亡骸を、いっさい他人の手を借りず、迷惑もかけず、
処理することなど、今の日本では到底不可能なのだ。
いつかは皆、おくられびと。になる日が来るのだから…。

一緒に観た母親がボソッと言った。
儀式としての納棺は、母の若い時分には無かったそうだ。
身内や親類が総出で、亡骸を棺に納め、葬送したらしい。
今はお金をかけて、こうやって綺麗にするんだね。。。と
そんなことを隣で言われた私は、何だか泣けてきてしまった。
ちなみに私も身内の「死」に立ち合った経験があるものの、
その時はすでに、棺に納められてからの対面、だった。
納棺はおそらく綺麗な御遺体でなければ見ることは出来ない。

しかしこの作品は、その職業について深く掘り下げる一方で、
人生の悲喜交々を雄大な自然の中で(チェロの伴奏にのせて)
豊かに謳い上げてくれている。人生にどんなことがあっても、
自分がおくられびと。になる日まで終わることはないのだと。

観終えて、久しぶりに拍手を贈りたくなった作品。

(モッくん、今回も素晴らしいコスプレを魅せてくれてます^^;)

コメントする
ハチコ