時代は80年代初めで、佐賀県呼子町の漁業町が舞台。平和に暮らす尾崎家に借金取りが現れ、尾崎修治(時任三郎)ともみ合いになった途端誤って殺害してしまうのだ。修治はそのまま逃亡し、5年が過ぎた。
明らかに殺人ではなく過失致死、もしくは正当防衛も考えられる。すぐに自首すれば2,3年の刑期、正当防衛が認められれば無罪にだってなり得る事件。相手だってヤミ金のチンピラだったし、町の人たちも忘れ去ろうとしていた・・・しかし、「父ちゃんの顔が思い出せなくなる」と、息子のツヨシは交番に貼ってある指名手配書を見て父を懐かしんでいるところを新聞記者の岡本(西島秀俊)が涙を誘う記事にしてしまったのだ。
妻の芳枝(工藤夕貴)は息子と修治のボケた父(犬塚弘)を女手一つで支えていかねばならない。さっさと離婚して実家に帰ればいいのに・・・とも同情してみるのだが、そこは佐賀のがばい母ちゃんである。職場の漁協でも後ろ指さされ、息子だっていじめられそうだけど、気の強さと一途な愛情が彼女を呼子に留まらせている。
どこにでもありそうな単純なストーリー。だけど、登場人物それぞれの“間”の取り方の上手さが涙腺を刺激してくる。「すぐに自首して・・・」と周りは皆言いたいはずなのに、寸でのところでそれを言わせない。唯一、西島秀俊だけがおせっかいで全てのお膳だてをしようとする役回りなのだ。一方で、常に尾崎家を張り込みする刑事の宇崎竜堂が彼の行動を牽制しつつ、正しい道を示そうという立場。古き良き刑事ドラマの典型でもあり、最後には彼の優しさが伝わってくるのです。
刑事ドラマ、2時間サスペンスを彷彿させるのですが、逆にその古さが良かったような気がします。人が罪を犯すと、結局は被害者・被害者家族、そして言うまでもなく本人の家族が可哀想。最近の事件報道を見ていても憤りを通り越して、残された人たちに同情してしまいます・・・
しかしまぁ、夏だというのに「春よこい」。帰りに「冬のソナタ2」を打ってしまいました・・・