容疑者Xの献身のレビュー・感想・評価
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ラストでやられました!
“映画っぽくしてみました”が鼻につく
自ブログより抜粋で。
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直木賞受賞作が原作だけあってテレビドラマの劇場版と思えば充分面白いんだけど、テレビ的価値観による“映画っぽくしてみました”が鼻につく。
(中略)
原作未読のおかげで驚きのトリックにはまんまと騙されたし、感動の大団円も素で満喫できた。
けど、オープニングの派手なだけの実験や取って付けたような雪山登山とか、なんか「頑張って映画スケールにしてみました」っていうあざとさが気になってしょうがなかった。
山小屋が顕著なんだけど、照明がよくないのか撮り方が嘘くさいのか、セットがあからさまに作り物だし、湯川と石神の挑戦的な別れ際のスローモーション撮影も演出過剰ではったりにしかなっていない。
推理モノとしてのトリックの全貌がわかったときはさすがに唸らされたけど、そこに至る推理過程は観客を置いてけぼり。
もう少しヒントなり、ミスリードなりを用意してくれないと傍観するしかない。別の言い方をすると、真相は予想できなかったにもかかわらず“やられた感”は乏しいのだ。
また、脚本の詰めの甘さからか石神にあまり天才らしさを垣間見れられないのも物足りなさを感じた。
トリックそのものは天才らしい周到なものだったけど、前提となる石神という孤独な天才キャラクターを描き切れていない。
机上で難問を解くとかではなく、もっと日常的なところで凡人との違いを見せつけなければいけないんじゃないの?
役者に目を転じると、堤真一の役柄をわきまえた抑えた演技はよかった。実質的な主役は彼。
松雪泰子と金澤美穂ちゃん親子もいい。松雪泰子はいい女優さんになったなあ。
福山雅治も悪くないんだけど、堤真一らと対峙するとやはり格の違いを感じてしまう。
柴咲コウはたくさん映画に出てる割に演技の幅が少ないなあってのが正直なところ。でも今回は案内役ということでそれはあまり気にならない。ただ、唯一の見せ場といえる福山雅治に真相を問い詰めるシーンが演出のまずさもあって台無しなのが惜しまれる。
総じて最近あまりない本格的な推理モノとして悪くはないんだけど、素直に褒める気になれない歯がゆい作品。
人の感情をうまく描けている作品である。結末が・・・
なぜ新品の自転車である必要があるのか等、石神(堤)による謎がちりばめられていて引き込まれる。
その謎を明らかにしていく湯川(福山)に対してさらに謎をかけてくる石神との攻防が楽しい。
しかしながら、作品のテーマが重く、後味が悪い。花岡(小雪)のきれいな人でなくて明るい人を使う、笑いをもう少し入れる、ともう少しライトになったかなあ、と思う。
それにしてもよくできている作品である。人の感情をうまく描けていて、素直に共感できる映画になっている。
*1 「幾何の問題と見せかけて代数の問題だったりする。ひっかけですよ。」という石神の言葉が印象的。
*2 他人のコメントで印象的だったのは、「湯川、石神、花岡の3人が、それぞれ幸せを考え、自分の正解を行動で表すものの、すれ違う姿からは、何が幸せなのかを考えさせられました」
→幸せはおしつけでは成立しないのかもしれない。
思った以上の良作
テレビシリーズとは違うと言う前触れ通りでした。
クライマックスのシーンでは感情が論理に勝る瞬間を感じます。
湯川、石神、花岡の3人が、それぞれ幸せを考え、自分の正解を行動で表すものの、すれ違う姿からは、何が幸せなのかを考えさせられました。
とても良い映画です。
作品の季節に合った時期に、もう一度じっくり見ようと思います。
コミカルを封印したヒューマンドラマです。
不器用な男の不器用な物語
東野圭吾原作「探偵ガリレオ」シリーズの最新作で直木賞受賞作『容疑者Xの献身』の映画化作品であり、フジテレビ系列の月9ドラマ『ガリレオ』の映画版です。
とは言え、どこかコミカルだったテレビ版とは違い、映画版『容疑者Xの献身』はかなりシリアスな話で、ドラマとは一味違う物語が楽しめます。
大学の准教授で「変人ガリレオ」と呼ばれる湯川学と湯川に捜査協力を依頼する刑事・内海薫が数々の難事件を科学的実証に基づいて解決していく「ガリレオ」シリーズ。
この『容疑者Xの献身』は、テレビ版では描かれなかった湯川の人間的な部分が湯川の親友であり、唯一「天才」と認める数学者・石神哲哉との物語を通じて描かれていきます。
というよりも、今回の話の主役は湯川と内海ではなくて、石神と石神の隣室に住む花岡靖子・美里親子ですね。
執拗に付き纏う元夫を殺害してしまった花岡靖子と、それを知ってしまい、献身的に靖子と美里の完璧なアリバイ作りに協力する石神。何で石上は花岡親子に対して、それほどまでに協力をするのか?
石神を演じる堤真一の抑えた演技が素晴らしくて、ストーリーにどっぷりと惹き込まれてしまいました。
それだけに最後の「どうして!」と感情を爆発させる場面は感動しました。
僕は、ずっと石神に感情移入して観てたので尚更でしたね。
恋愛や人間関係に不器用な石神の気持ちが何だか判る気がします。
正直言って、邦画でしかもテレビドラマからの映画化作品ということで、あまり期待はしてなかったし「どうせテレビと同じでしょ。」と思ってたんですけど、いい意味で裏切られました(笑)
この作品は、推理物・ミステリーの形を借りた、とても切ない「ラブストーリー」ですね。
僕はそう思いました。
お、重い・・・・
火曜サスペンス劇場です
友達がスマステで稲垣くんが絶賛してたから観たい、とのことで一緒に観ました。
ドラマを知らないし、原作も知らない。
でも、この程度の出来のサスペンスならテレビで十分満たせます。
天才物理学者VS天才数学者という高度な頭脳戦を期待できる設定も、途中からあまりにもその二人の人物造詣を崩しすぎです。天才物理学者、湯川は「愛」ですらも数式にするキャラクターだから面白いんであって、それを崩して、途中から人間味あふれるキャラクターにするなんて都合よすぎです。結果、ありふれた推理ドラマになったという感じ。さらにそこから安易に泣かしにかかる典型的な日本映画の悪癖。これ禁じ手にして欲しい。
その設定を活かせるほどの頭脳をこのシナリオは持っていなかった、という事に、本作を見る限り解釈するしかないですね。CM以外あまり知らなかった福山雅治は収穫。柴咲コウは良くも悪くもないが、役的に本作では緊迫感に水を差す存在でした。
ちなみに友達はテレビのほうが全然面白かったと言っておりました。
堤さんと松雪泰子がよかった。
正直、TVとは別物という感じがしました。
TVシリーズは全てみていますが、TVシリーズのキャラクタはほとんど添え物で、
犯人側にたっての映画で、堤さんと松雪さんがとてもよかった。
フラガールの時には正直松雪さんはそんなに演技がうまいとは思えなかったが
今回はよかったし、やっぱり堤さんがうまい。主役の福山と柴崎がよい意味でも悪い意味でもかすんでしまった。
しばらく街並みを眺めて考えました・・・
東野圭吾原作のテレビドラマ「ガリレオ」は、そのキャストの豪華さで話題を呼んだ。
福山雅治と柴咲コウという生活臭を感じさせないコンビが、月9の枠で華やかに舞っていた。
その延長上にある今作にも、テレビ規格そのままなステレオタイプとエンターテイメント性を、半ば求めてみた。
しかし、大きな誤算だった。
あの物理学者の湯川という主人公、何とここでは華麗な推理力と鋭い洞察力、鍛え抜かれた計算力という「お決まりごと」を、一先ず、そっちに置いていたからだ。
規則正しさが崩れたら、その事後処理を如何にするか?・・・それがこの映画の背景だ。
この物語のキーマンである石神という天才数学者、陽の当たらない陰湿な雰囲気の彼に起きた悲劇は、やがて思わぬ方向に進んでいく。
人間の奥に眠るいくつかの感情、それらが登場人物たちを左右していく。
やがて各々に重く圧し掛かるのだ。
石神の隣の部屋に弁当屋の女主人とその娘が住んでいる。
そこへ別れた元夫が突如現れ、娘に暴力を奮いだす。
やがて、二人は元夫をやむなく殺してしまう。
騒々しい物音に気づき駈けつけた石神は、二人の事件隠ぺいの為に数学者としての才気を活かし完全犯罪を思惑する。
一見冷静で完璧なはずな計画も、湯川の推理の下で次第に解き明かされていくのだが・・・という流れだ。
主人公は当然ガリレオ・シリーズでの福山雅治ではあるが、むしろこの劇場版に至っては石神役の堤真一であると言える。
かつて湯川と同じ帝都大学に在籍した天才数学者が、どこかで人生を踏み外し息を潜めるかのような毎日を送っている。
草むらでひっそりと生息する動物や微生物のように思えてならなかった。
スタイリッシュで若々しく背筋の伸びた湯川に対して、猫背とハの字に歪んだ眉の石神、その冴えない風体を堤は自然に演じ切っている。
ハイライトシーン、二人が警察の取り調べ室にて相対するカットが、ものすごく印象的だった。
そういえば勝ち組負け組なる言葉もあり、何となくそんな図式に見えてならなかった。
そんな石神にも、湯川に負けない部分がいくつかあった。
数学への愛着、登山(これは劇中のみ、原作にはないものらしい・・・)そして湯川には到底解明できない(ことになっている)「ある難問」である。
なぜ故に石神は完全犯罪を企んでまでこの親子を守ろうとしたのか?
そもそも、隣人という立場上からして無関係だったにもかかわらず、石神をそこまで駆り立てた本当の理由・・・そこが最大な見せ場だ。
きっと男女関係なんかではない!(当初はそう思ったが)
もっと人間らしさの奥深い場所にそれは眠っている。
眠ってはいるが、ちゃんと起きている・・・いや、目を覚まさせてくれるほど尊いものだ。
その例えを劇中では「難しい微積の問題じゃなく、単なる関数の引っかけ問題」というような言い方で表していた。
あるいは「隣り同士が同じ色に染まってはいけない・・・」と半ば諦めた感じに。
日陰の動物にだって時折陽が射す。
それを本当は捉えて離したくないのだろうか?
草食動物でもたまには肉を平らげてみたいものなのか?
そうではないのだろう・・・自然の摂理だ。
いつもの場所で規則正しく、そして明日をひたすら待つ・・・本当はこれが一番難しいのだ。
だからこそ尊いのだと思う、日々が無事に済むというのは。
石神の様々な仕掛けに対し湯川は次々と仮説を立てて刑事の薫に話すのだが、どうもテレビ番組でのあのガリレオらしさとは違って見えた。
おかしいな?解せない思いで劇場を後にしつつ、改めて考えた。
ドラマシリーズでは、大概このような流れだったかと・・・
『推理、仮定仮説、そして実験による立証』
ところが、この事件は仮説の段階で結局止まっているのだ。
実験など出来る由もない。
仮にしたとしても誰も幸せになれない虚しさ・・・それを一番知っていたのは湯川本人だ。
最後に見せる石神の「慟哭」シーンは、湯川にとっての「慟哭」でもあったのだろう。
湯川が望んだ本当の解決を得られなかった。
唯一の未解決事件なのかもしれない・・・そんな彼の「慟哭」にも気づいてしまった。
幸せを求めたり、希望を見出したり、それらを当り前に描くのが人の常だ。
そして、僕らはひたすら一途に生きている。
ただ単に、そう思える日々が愛おしくないか?
堤さんスゴイ! 泣けました・・・!!
ハラハラと崩れるように鳴き落ちる堤真一の演技に鳥肌がたちました。
本作は、テレビドラマ『ガリレオ』の劇場版です。小地蔵は、テレビ版は全然見ていません。それでも楽しめましたからこれから見る人もご安心を。
本作は、推理ドラマとしては異色の犯人と犯行を冒頭で明示してから進行します。しかし犯人には、完璧なアリバイがあり、捜査は行き詰まりますが、見ている方もアリバイに捕らわれすぎました。
本編を支配する数学的ギミック。簡単に言うとある面ばかりしか考えない思い込む人間の習性にギャフンとさせられるのは捜査陣ばかりではありません。
容疑者の数学教師・石神は、観客にも数学的思考を要請しているように思えました。そしてストーリーテーラーとなる物理学者の湯川学の解説を通じて、本作の事件を別な視点で推理する必要を痛感しましたね。
頭脳派二人がぶつかるとき、無言に近い以心伝心の対決が見物でした。そして数学=最初に真相回避の命題を開示して、それを実現する公式を次々編み出していく発想法に対して、物理学はひたすら実証と推論を繰り返して、真相に近づいていくという二人の立場の違いが鮮明になったと思います。
さて、犯人の花岡母子は、別れた夫にアパートを突き止められ、二人ははずみで前夫を殺してしまいます。隣の住人だった石神は犯行を察知して、花岡宅に乗り込みます。てっきり脅迫するのかと思ったら、共犯のリスクがあるのに石神は、事件の隠蔽とアリバイ作り、そして警察への対応を完璧に母子に指示し、捜査を攪乱してしまうのです。
観客にとって大きな謎は、冒頭に元夫殺しを見せつけているのに、警察の特定した死亡推定時間には、親子で映画を見ていたという完璧なアリバイが出来ていたことです。石神はどんなトリックで、アリバイを作り上げたか。
この謎はラストまで引っ張り、犯人母子も知らなかった容疑者Xの常識を越える献身ぶりが、明らかになって行きます。
真相がわかったとき、思わずそんな手があったのか!と思われるでしょう。
そしてホームレス街にポツンとベンチに取り残された荷物が意味なくアップされる、中盤のワンシーンに隠された重大な意味に気づかれて、あっと驚かれるのに違いありません。
もう一つの謎は、なぜ容疑者Xは見返りを求めず犯人母子に献身しようとしたかです。これもドラマとともに次第に明らかになります。単なる恋心でなく、母子に出会ってもたらされた生きるための意味が、彼にとってどれほど大きなものであったのかしれなかったのです。
そのために決定的なのは、石神という人物のキャラクターです。堤真一はこれまでのネアカで活動的なキャラを覆し、陰の深い数学オタクの教師役をリアルに演じていました。クライマーズ・ハイとの余りの違いに、当初は別人だと思ったくらいです。
そして圧巻は、東野圭吾作品のヤマ場。仕込んだトリックが崩壊して、犯人が号泣するお約束のシーンで、ハラハラと崩れるように鳴き落ちる堤真一の演技に鳥肌がたちました。犯行が張れただけでなく、全知全能を尽くして仕立てた自分の献身が音立てて脆くも崩れてしまった刹那だったのです。
反面福山雅治は、湯川という役柄を作り込みすぎている感じがしました。石神と心を通わせる後半は、ずいぶん馴染んできたような落ち着いた演技になっていました。
それにしても、伝わってくる思いメッセージは、真実を暴くことが正しかったかということです。それでは誰も幸福になれないではないかという石神の言葉が、湯川を追い込んでいきました。
物理学者は、立証してなんぼの商売。聡明な湯川でも、論理を超えた情という不確定因子の前には、自分の信念が揺らいで、後味の悪さばかりが残ったことでしょう。
映画『ビック・フィッシュ』のテーマでもありますが、事実よりも作られた記憶の方が重要な意味を持つことも考えなくてはいけませんね。
おもしろい!
TVドラマは1話も見ていません。原作は読みました。
映画、面白かったです!
原作を読んでいて、「そ、そういうことかぁぁ!」と思わず唸ってしまったほどのトリックと献身。原作のままではないですが、見事に表現されていたと思います。
残念ながらドラマ版を見たことがないので、そちらとの比較はできませんが、映画は原作を読んで受けた印象に近いものでした。登山のシーンは若干ポカーンとしましたが…。必要だったのかなぁ。。。
キャストも良かったと思います。堤真一さん演じる石神も、見事に陰湿で暗い男になっていました。(観る前はかっこよすぎるのでは?と思ってた)松雪泰子さんもすごくキレイ。
原作好きな人には物足りない部分もあると思いますが、「そもそも原作を100%完璧に再現するのはムリがある」という前提で観ると十分楽しめると思います。
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