20世紀少年 : 映画評論・批評
2008年8月26日更新
2008年8月30日より日劇2ほかにてロードショー
記憶のあいまいさを抱え込んだまま進む壮大な物語のプロローグ
小学校時代によく一緒に遊んだ友達の顔や名前を、ひとりひとり鮮明に覚えているだろうか。30年前の記憶はかなりあいまいになっているに違いない。このドラマはそんな記憶のあいまいさを抱え込んだまま進展していく。そしてオウム真理教を連想させるカルト教団を率いる〈ともだち〉は小学校時代の仲間なのか、彼はケンヂたちが遊びで書いた物語「よげんの書」を読んでいるのか、というサスペンスが生まれる。唐沢寿明演じる主人公のケンヂは当時をほとんど思い出せないまま、コンビニのオヤジとして経営に四苦八苦し、他の仲間たちはサラリーマンや公務員をしている。どこにでもいそうなキャラクターだからこそ、素直に感情移入できた。
カルト教団に立ち向かう彼らの戦いの背景には、1969年以降の文化や社会的出来事がちりばめられている。大阪万博やアポロ11号の人類初の月面着陸、少年サンデーや平凡パンチ、ボブ・ディランやグループサウンズ……。この半世紀を検証しているわけで、ちょっとしたところが懐かしく、つい目をこらしてしまう。
シリーズものの常として、この第1作は主要キャラクターの紹介と、スケールの大きな物語のプロローグにすぎない。原作コミックを駆け足でなぞったという印象で、謎は謎のまま残る。登場時点からもう若くないケンヂや仲間たちは、約50年に及ぶ物語の後半では相当の年齢になるはず。コミックでは年をとるのは簡単だが、映画ではそうはいかない。ラストについている予告編を見ると、第2作が楽しみになってきた。
(おかむら良)