JUNO ジュノ : 映画評論・批評
2008年6月10日更新
2008年6月14日よりシャンテシネほかにてロードショー
期待を上回る幸福な余韻に浸らせてくれる
「ハードキャンディ」で14歳の現代の赤頭巾ちゃんを演じたエレン・ペイジが、今度は16歳の妊婦に挑戦。ジュノのシニカルさを早口な喋りで端的に表現してみせる彼女は、さすが未来のオスカー女優。ドライに見えても、恋や大人の世界への傷つきやすさを秘めた少女の成長をリアルに演じて、期待を上回る幸福な余韻に浸らせてくれる。その幸福の原動力は、もちろんディアブロ・コーディの脚本。最初は産む気すらなかったジュノが里親を選択する展開に溢れるアメリカらしいリアルも、その現実をそれぞれの立場で受け入れる登場人物たちの台詞も、胸に響っきぱなし。それもこれも、鋭いセンスに注目が集まりがちなコーディが、実はいつの時代も変わらない人の心の痛みや優しさを掴んでいるからこそだ。
そして、これは家族の物語でもある。さりげなくジュノを支える愛すべき人々には、気持ちがほっこりあったかくなる。なかでも、彼女を侮辱する人間に啖呵を切る義母のかっこいいこと! ジュノと里親の心を結ぶパンクロックやB級映画というオタクネタをちりばめながら、ポップなビジュアルに10代の気分を表す一方で、物語には大人の深み。ジェイソン・ライトマンの才能からも目が離せない。
(杉谷伸子)