スピード・レーサー : インタビュー
子役としてキャリアをスタートさせ、本作ではタイトルロールを演じ、夏の大作の主役を張るまでに成長したエミール・ハーシュ。「ロード・オブ・ドッグタウン」「イントゥ・ザ・ワイルド」といったインディペンデント作品から、本作のようなメジャー作品にも出演する彼に、出演作の選択基準やウォシャウスキー兄弟との仕事について聞いた。(取材・文:森山京子)
エミール・ハーシュ インタビュー
「彼がレースに熱中するのと同じように、僕も演技に夢中なんだ」
——「イントゥ・ザ・ワイルド」(ショーン・ペン監督/9月日本公開)の次に「スピード・レーサー」とは意外な選択でしたね。
「『イントゥ・ザ・ワイルド』はあれだけで完結しているものだし、違うものをやるのがベストだと思った。それに『スピード・レーサー』は僕にとってパーフェクトなコンビネーションなんだ。子供の頃あの番組の大ファンだったし、『マトリックス』も大好きだったから」
——インディペンデントとメジャーの作品にバランスよく出ていますよね。出演作は自分で決めているのですか。
「子供の頃は父がアドバイスしてくれたけど、今は自分で決めている。父によく言われたのは、お金儲けじゃなく、いい映画、いいアートを作ろうとしなくちゃいけないってこと。『スピード・レーサー』で僕が誇りに思うことのひとつは、巨大なブロックバスターだけど、ウォシャウスキー兄弟がアートの面で全然妥協していないこと。彼らは本当に凄い。あのビジュアルには興奮しちゃった」
——映画の中のあなたはオリジナル・アニメの三船剛に似ていますね。
「イエース。多分、それがこの役をゲットするのに役だったんじゃないかな。でも、彼は僕よりもずっと古風でシリアスなところがあるよね。僕はリラックスしておどけたりするほうだから、スピードのキャラクターを掴むためにスクエアな方向へちょっと調整しなくちゃいけなかった」
——じゃ、スピードにはあまり共感できなかったの?
「とんでもない。スピードの、やると決めたらとことんやるやるところや、好きなものへの情熱、家族や友人に対する献身的な思い、それに恐れ知らずのところにはすごく共感したよ。彼がレースに熱中するのと同じように、僕も演技に夢中になるし、ベストを尽くしたいと思う。僕はすごくハイパーな子供だった。そのクレイジーなエネルギーを演技に向けることで、気持を集中させられるようになったんだ。だから俳優以外の人生は今のところ考えられないほど、熱中しているよ」
——役作りの上で大変だったことは?
「スピードが感じているプレッシャーや動揺を、表面にはあまり出さず、内に秘めて表現すること。とても激しく、アグレッシブに、だけど静かにやらないといけない。それが一番のチャレンジだった」
——あなた自身のプレッシャーはなかったの?
「もちろんあったけど、考えないようにしていた。そのために、毎晩走って体をアクティブにキープしていたんだ。エクササイズすると体内にエンドルフィンという化学物質ができる。それが精神を活発にして集中を助けてくれるんだ。グリーンスクリーンのシーンが続くと閉所恐怖症気味になって、精神的なバランスが崩れやすくなるけど、運動することによって精神が強くなってそれを防げるというわけ」
——どんな情景か、イメージ出来ないシーンばかりで大変だったでしょうね。
「ウォシャウスキー兄弟が、事前に作ったレースシーンがあって、ラップトップでいつでも見ることができた。彼らの革新的なビジュアルの世界にすぐ入れるようにね。撮影に入る前にアニメを全部見直したから分かるんだけど、ウォシャウスキー兄弟はオリジナルの細かいディテールをたくさん映画に入れ込んでいる。それだけオリジナルを愛しているんだ」