天使と悪魔 : 映画評論・批評
2009年5月12日更新
2009年5月15日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
今回はラングドンが猛烈ハッスルだが、とにかく話が忙しい
蘊蓄話に足を取られて主人公の活躍が今一つだった前作「ダ・ヴィンチ・コード」に比べ、今回はラングドン教授(トム・ハンクス)が猛烈ハッスル。バチカンに対する秘密結社イルミナティの復讐を阻止するため、その知識と頭脳を使うのはもちろん、捜査陣の先頭に立ってローマの街を走り回る。イルミナティが使う凶器はジュネーブのセルン(素粒子研究所)から盗み出された「反物質」。核よりも強大な未来エネルギーだが、ローマ全市を一瞬にして消滅させる破壊力も持っている。しかもこれが自動的に爆発するまでのタイムリミットはわずか1日。さらにこの日は次期ローマ教皇を選ぶコンクラーベなのだ。世界中から聖職者、信者、マスコミが集まった大混乱の中で、二重三重に仕掛けられた時間の壁と闘いつつ謎解きをしていくのだから、いやでもスリルとサスペンスが高まる。派手なアクションシーンもあり、ローマの街も楽しめて仕掛けは充分だ。
だが惜しいことに、タイムリミットを気にしすぎたせいか、とにかく話が忙しい。どんな謎もラングドンが一瞬で解き、即、次の行動に移る。あまりの段取りの良さに、観客は置いてけぼり。ドラマの鍵である宗教と科学の対立に思いを致す暇もなく、謎や恐怖に心臓を締めつけられることもないままに、事件は目の前を通り過ぎていったのだった。
(森山京子)