「 前半はよかったのに、後半はヒーローものとしていささか展開を焦った感じがします。」ハンコック 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
前半はよかったのに、後半はヒーローものとしていささか展開を焦った感じがします。
スーパーヒーローの映画が目白押しですが、ハンコックはかなり変わっています。ダークナイトとなったバットマンは、それでもヒーローと市民から認知されている存在だったでしょう。しかし、ハンコックの場合は、ロス市民にとってとんでもないろくでなしであり、疫病神であったのです。その嫌われ方は、ヒーローの映画の敵役並み!
そんな嫌われ方にハンコックも心を閉ざし、普段は酒を浴びるように飲んで、事件が起こっているのに炉端で寝込む始末。どう見ても浮浪者としか思えない、冴えないヒーローでした。ホントこんなトホホなヒーローものは見たことありません。
けれどもPR会社に勤めるレイに「愛されるヒーローにならないか」と諭され、彼の誠意ある言葉に心を動かされて、大人しく刑務所に入所します。
いくら命の恩人といえども、町の嫌われ者のハンコックに尽くすレイの人の良さが印象に残りました。嫌みに見えないのは、演じているシャリーズ・セロンの演技がいいからでしょうね。
もちろんレイの計算通り、ハンコックが捕まったとたん犯罪が急増し、警察署長からハンコックに救援の連絡が入ります。
一癖あるハンコックが意外に素直な一面を見せるのは、再出動の時レイのアドバイスをそのまま受け容れることです。嫌々だった「ヒーロースーツ」に袖を通し、警官に会うたび「グッドジョブ」と褒めちぎりるのです。この「グッドジョブ」の台詞があまりにオウム返しに言うのが可笑しかったです。
結局ハンコックは、レイに認められたことが嬉しかったのでしょう。だから彼のアドバイスに素直になれたのではないでしょうか。
前半のシーンを見て思いついたことがあります。特殊な能力を持ち得たハンコックの孤独は彼だけのものでしょうか。いえいえ、人より抜きんでた才能を持ち得た天才肌の人には、彼と同じような孤独を持ち得るものではないかと思います。
凡人には凡人のペースがあり、そのペースを否定されたり、先を越されたりすると腹が立つものです。世の普通の人にとって、才能豊かな人の判断は、理解できない場合が多く、時にその才能を嘲笑したり変人扱いすることが起きやすいわけですね。
そんなことで塞ぎ込んだり、切れやすくなったりしては、才能を活かす場がなくなってしまいます。もし心を閉ざしている人がいたらレイとハンコックのやりとりの中に何か気づきとなる台詞があるものと思いますよ。
そういう点では、多いに感情移入してしまう前半でした。
ただある意外な人がハンコックと同じ能力があったことが判明してからというものは、物語が急展開。派手な超能力バトルと共に、超人的なハンコックのルーツが明らかにされています。
後半は、どうもハンコックの能力と弱点のネタバレに進行していったので、前半の人間味が霞んでしまったことが残念です。
不老不死のハンコックなのに、ある特定条件下では超人ではなくなるなど、くるくる判明する新事実について行きがたい面がありました。
前半はよかったのに、後半はヒーローものとしていささか展開を焦った感じがします。
結末は何となく続編が作られるような終わり方でした。まともになったハンコックの続編では、どう彼らしさを表現するのか苦心するところでしょうね。