インクレディブル・ハルク : インタビュー
これまで幾度となく実写化されてきたマーベル・コミックの人気キャラクター「ハルク」を、実力派俳優エドワード・ノートン主演で映画化した「インクレディブル・ハルク」。悩める主人公ブルースを演じたノートンは、演じるのみならず脚本やポストプロダクションにも深く関わったのだとか。そんな彼が、ルイ・レテリエ監督との仕事や製作の裏側について語った。(取材・文:編集部)
エドワード・ノートン インタビュー
「僕は非公式のプロデューサーだった」
「真実の行方」「アメリカン・ヒストリーX」で2度オスカー候補に挙がっている演技派のノートンが、アメコミ作品に主演したのは意外な選択だったように思われる。出演の理由を「過去にこういった作品に出演したことがなかったし、監督のルイから『僕たちのハルクを作っていいんだ』と言われたことが決め手かな。それと、たまたまスケジュールに空きがあったというのもあるけど、僕が子供のときはこういう映画が好きだったこともあって、特殊効果をたくさん使う作品に出てみるのもいいかなと思ったんだ」と語る。
とはいえ、一度は出演を断っているのも事実。「確かに最初は断ったよ。これはルイとも同意見だったんだけど、あまりにも漫画っぽすぎる内容だったからね。結局、マーベル側から脚本を書き直しても構わないと言ってもらえたので、それならば面白いものができると思ったんだ」
そうした経緯で出演を決めたこともあって、ノートンが「僕は非公式のプロデューサーだった」と断言するほど脚本やポストプロダクションに深く関わっていたという。さらには、ポストプロダクションの期間が非常に短かったこともあり、自ら編集作業も行ったのだとか。
「エフェクトを入れるカットの数が約900とかなり多かったんだ。でもエフェクトを付けるには、元のアクションシーンをある程度編集してからじゃないとできない。まずはそこから片付けなければならなかった。とにかく時間が無かったから、いくつかの“編集ステーション”を作って、ルイが大学のシーンを編集し、僕がエディターと一緒にボトル工場のシーンを担当し、そのほか2人のエディターが分担して作業したよ。
デジタル作業を施すシーンというのは、要するに何もないものを編集しなければならないだろ? そのためにまず時間の尺を決めるんだ。だからハルクとアボミネーション(ティム・ロス演じる軍人ブロンスキーが変身したハルクの敵)の戦闘シーンは、エディターが編集しているスクリーンの横で僕がそれぞれの演技を再現して、どれぐらいの尺が必要か計っていたんだ」
そんなノートンの苦労の甲斐あってか、ハルクとアボミネーションの対決は文字通り“インクレディブル”な仕上がりになっているが、本作のもうひとつの見どころは、リブ・タイラー扮する恋人ベティとのブルースのラブストーリーだろう。ノートン曰く、ロマンスの要素はレテリエ監督の手腕が光っていたという。
「脚本の段階から気に入っていたのは、ベティと再会しただけでブルースの動悸が上がってしまうシーンだね。2人にはとても情熱的なラブシーンがあるけど、そこにちょっとしたユーモアが盛り込まれている。ルイはアクションで知られた監督ではあるけど、本当に才能豊かで感受性に優れていて、それでいてユーモアのセンスもあるんだ」
映画のラストにはマーベル・コミックのスーパーヒーローが一堂に会する「アヴェンジャーズ」を期待させるシーンもあったが、ノートンはそれについて明言を避けた。「今の段階では何の話も出ていないし、『ハルク』の続編の企画も出ていないんだ。もしそういう話が来たら? うーん、脚本次第かな」