「高層ビルが次々なぎ倒されていくシーンでは、正義のヒーローとしてやり過ぎではないかと思うのですねぇ。良くも悪くもスナイダー監督らしい(^^ゞ」マン・オブ・スティール 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
高層ビルが次々なぎ倒されていくシーンでは、正義のヒーローとしてやり過ぎではないかと思うのですねぇ。良くも悪くもスナイダー監督らしい(^^ゞ
スナイダー版のスーパーマンは、永遠の宿敵レックス・ルーサーが登場せず、スーパーマンとケントとしての二重生活というこれまでの定番のお約束を全く反故にしている点で、スーパーマンフリークからブーイングを浴びそうな新作です。
前作のスーパーマンで興行が伸び悩んだ原因として、配給元のワーナーはアクションシーンの不足を挙げていました。新たなシリーズの1作目となる本作では、スナイダー監督の得意とする大規模な戦闘シーンが、やり過ぎと思えるくらい展開するので、アクション好きな青年層の観客を獲得して、興行を伸ばす可能性は大です。
しかし、いまままでのスーバーマンに馴染んできたファンとしては、大筋として原作を踏襲してはいるものの、どうしても違和感を感じてしまうのです。
そもそも本作にスーパーマンという呼称が一切出ません。
やはり大きいのは、ゾット将軍とのバトルを通じてアメリカ軍関係者に正体をばらしてしまうところ。軍関係なら機密は保持できるかもしれませんが、ヒロインの女性記者ロイスにも早々と正体を明かしてしまうのは、興ざめです。ロイスにバレないように正義を行うところがスーパーマンのスーパーでない持ち味なんです。それがロイスどころかデイリーPLANETの幹部社員まで素性が分かった上で、同社の記者に納まってしまう設定はリアルティを感じさせません。絶対他のメディアが正体に気づいて、取材が殺到するはずです。 そもそもオリジナルでは、自分の出生の謎や特殊な能力に悩みつつ、ケント家のなかで家族の愛情に育まれながら、スーパーマンが誕生するまでが人間味のあるヒューマンドラマとして、人気の一つになっていたはずです。
けれども本作では、現在のカル・エルを映しながら過去の出来事を回想シーンで見せ、その都度、彼が抱える苦悩を観客に伝える体裁をとっています。そのため父ジョナサンと触れあうシーンも手短に。ケビン・コスナーの投入がもったいないキャストになってしまいました。
それとゾット将軍とのバトルのシーンは、地上の高層ビルから宇宙空間の人工衛星まで、ふたりのぶつかり会うスピードはかつてないほどの高速で、凄まじいほどの破壊力を見せつけました。でもそれが、『ローン・レンジャー』のラストと比べて退屈に感じてしまうのは、超人同士の対決で、決着がつけられないからです。無理矢理つけた決着はしょぼいものでした。高層ビルが次々なぎ倒されていくシーンでは、正義のヒーローとしてやり過ぎではないかと思うのですねぇ。スナイダー監督らしいといってしまえばそれまでですが(^^ゞ
さて、新しいスーパーマンのはじまりはクリプト星で、スーパーマンが誕生するところから。クリプト星は地底開発の反動で崩壊の危機に。執政官で科学者のジョー・エルが他の星への移住を元老院に提案しようとしたところ、ゾット将軍が反乱を起こして遮ります。
生まれたばかりの自分の子供カル・エルに、クリプト星のすべての人類の遺伝子情報を組み込んで、クリプト星から宇宙の彼方へ脱出させます。その間に襲撃してきたゾット将軍にジョーエルはゾッドに殺されてしまうのです。
この反乱シーンから脱出までが凄いスペクタル映像になっていて、これだけでも一本映画を作る価値のあるシーンになっていたと思います。
その後ゾット将軍ら反乱軍は、政府軍に鎮圧されて隔離。冷凍保存されたのです。
舞台は急変し、地球のどこかの荒海。ひとりの青年が漁船に乗船し、先輩船員からしごかれていました。この青年ただ者ではなく、災害に遭遇すると超人的な力で救出してしまうのです。
青年は、ふと昔のことを回想します。
、今度は、アメリカのカンザス州のスモールビルとなります。ケント家のあるところです。青年の幼い時のクラーク・ケントがいました。ケントは生まれた時から特異な能力を持ち、いじめられたときや事故に遭遇したときに使ったので、クラスメートから怖がられていたのです。自分が本当はどこからやって来たのかわからずに悩んでいました。
そんなクラークに、ジョナサンは謎の物体から出て来た赤ん坊を引き取って育てたことをクラークに打ち明けたのです。
ジョナサンは、クラークがハイスクールに通っていた頃に竜巻に巻き込まれて事故死します。父のピンチに、クラークは自分の「力」を使って、ジョナサンを助けようとします。でも、クラークに「まだ、おまえのその能力は世間には理解されない」とばかりに封印され、静止してジョナサンは命を落としてしまうのでした。
クラークは何時も、この日のことを忘れませんでした。そしていつかジョナサンに認められたいという思いを強くしていったようなのです。
それは、謎の宇宙船が発見されたという報道から始まりました。クラークは、自らの出生の秘密を探りに、宇宙船が発見された北極へ向かいます。
宇宙船に侵入して、形見として持っていたSの刻印を押したら、まるで生きているかのような立体映像が飛び出してきました。その映像が語るには、クラークの実父ジョー・エルだというのです。ジョー・エルはクラークが知りたかった出生の秘密や、なぜ地球に送られてきたのかという理由を説明します。
謎の宇宙船には取材陣が殺到していました。その中で内部の潜入レポートを試みようしたのが新聞社デイリー・プラネットの女性記者ロイス・レーン。彼女はそこで命危機一髪の場面に遭遇しますが、クラークに救われます。彼女は宇宙人の存在とクラークの超人的能力を記事にしようとしますが、上司のペリー・ホワイトは、理解されないだろうとボツされてしまいます。
一方、母星クリプトンが崩壊したことで、拘束から解放されたゾッド将軍たちは、クリプト星の遺伝子情報を持つカリ・エルを捜して、33年間宇宙をさまよっていました。
とうとう地球に目星を見いだして、ケント家をあぶり出し、カル・エルを差し出せと迫ります。
しかし、クリプト星人の生育環境を地球で再現させることは、人類を死滅させることになります。人類を愛してしまったクラークは、迷いつつも、ゾッド将軍の母星再興の夢を阻止することを決意するのです。
ここに従来のスーパーマンの衣装を纏った正義のヒーローし、強敵となったゾットと超人対決に臨むこととなったのです。
クラークの決意とは、「米国の正義」の復活を意味します。オバマの財政再建路線に沿って、シリアの非道も見殺しにしてしまうように、かっかり影を潜めてしまいました。
かつての輝きを失ったクラークは自分が信じられず、他人からも信じてもらませんでした。だけど実の父から「自由のための戦い」を託され、育ての父からは「地球人はお前を理想の存在として憧れる」と励まされ、圧倒的な力で「正義」を実行しようと決意するのです。それは、今の米国の姿そのものではないでしょうか。
前作ではまだ輝いていた米国的正義の観念を、CGを駆使した圧倒的な超高速で、無理やり(^^ゞに復活させたのです。
ロイス出会いも運命的。ただ前作までのヒロインのように、何も知らずにただ憧れる女性ではなく、全てを知った上で互いに信頼し、愛し合う関係になっていくのが違うところ。異星人との宇宙的恋愛とは、いかにも近未来的ですね。
ただ エイミー・アダムスじゃあ年増のおばさん過ぎるぅ~。いくらクラークでも、もっと若くてピチピチしたロイスがいいに決まっているでしょう(^。^)
最後に、本作はIMAX3Dの鑑賞がお勧め。3Dの試写会を2度見ましたが、そのあと見たIMAX3Dでの予告編に圧倒されました。もちろん2Dよりは、3Dがマシではありますが。