「生き恥と誇り。」愛を読むひと ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
生き恥と誇り。
大柄女優…おっと(爆)大物女優、のK・ウィンスレットに
アカデミー賞をもたらした本作。さすがの演技だったけど、
歳をとってもオーラの消えない目つきは凄かったなぁ~^^;
このS・ダルドリー監督の作品はどれも好きだ。
原作は今回も全く読んでいないが、とりあえず彼なので安心。
まぁ…ドイツが舞台なのに、なぜ英語??っていう不信感は
この作品に限らず仕方ないことだが、ただこの作品を観終えて
思ったのは、かなり好き好きが分かれそうな内容だな~と。
話そのものが何というか…^^;各々の価値観を問うているよう。
物語の軸となるのは、彼女が死んでも守ろうとする「秘密」
にあるのだが、それが明かされたときに自分がどう感じるか。。
彼らの行動を「理解できる派」と「理解できない派」にハッキリと
分かれそうな、そこで好き好きが決まってきそうなのである。
私は…理解できた。とは言えないものの、かなり良かったクチ。
各々が抱える苦悩や秘密、誇りの高低を他人は推し量れない。
21歳もの年上女性に恋い焦がれ、すぐに関係を結べたものの、
彼女が彼女然であることが大前提の、まだまだうら若い恋愛期。
こう言ってはなんだが、彼には母親のような^^;頼れる存在に
違いないので、そんな彼に、彼女の苦悩を受け止める事なんぞ
到底無理。もちろん彼女も、それは承知だったと思える。
時が経ち、その「秘密」の部分では彼が上をいく存在になっても
彼を「坊や」と呼び、決して下に甘んじない相当な気位の持ち主。
まぁここまで彼女、という人を観ていると…何故?と思えるし、
では今までどうやって人生を…?とも思えて仕方ないのだが^^;
その辺りを突っ込むと物語全体が壊れてしまいそうだ。
あの時代が時代だったとはいえ…後半は辛い描写の語りが多い。
若い青年が年上の女性に憧れるのは珍しいことではないが、
実際にはそれが甘酸っぱい思い出として綺麗に残るものなのに、
この彼の場合は本当に可哀相だ。
とにかく、D・クロスとR・ファインズの演技は見事に苦悩している。
表情を観ているだけで切なく、胸が締め付けられる感じだった。
こんな運命を背負い、これからも生き続けていく彼の未来は…と
心配になったが、さすがラストはその辺りも見事に結んでいる。
今作は、彼ら二人の物語ではあるが、もう一人、
L・オリンが演じたローズ・メイザーの長きに渡る闘いでもある。
そこまでの話をすべて食ってしまった彼女の決断のシーンにこそ、
後世に生きる人間たちへのメッセージが込められていると感じた。
その空缶を受け取るシーンで、私は初めて泣いた。
(生き恥をかくのは決して恥ずかしいことじゃないんだけどね。)