愛を読むひと : インタビュー
21歳も年上のハンナと出会い、恋に落ち、彼女の数奇な人生を長年に渡って見つめ続けるマイケル。青年期のマイケルを演じたドイツの新進俳優デビッド・クロスと中年期のマイケルを演じたレイフ・ファインズに、マイケル役へのアプローチなどを聞いた(文・構成:森山京子)
デビッド・クロス インタビュー
「俳優としてたくさんのことを学んで、素晴らしい経験になったよ」
──撮影期間が1年もあったそうですが、集中力をキープするのは大変でしたか?
「1年間ずっとというわけじゃなくて、何度も中断があったから、逆に助かった。休みの間に撮ったものを見なおして考える時間が持てたから、深く物語に入り込むことができたんだ。確かに長い道のりで難しい撮影だったけど、俳優としてたくさんのことを学んで、素晴らしい経験になったよ」
──脚本を読んだ時、マイケルというキャラクターに共感できましたか?
「うん、よく理解できた。自分がマイケルだったらどうしただろうって自分なりの答えを見つけようとしてみた。難しくて答はみつからなかったけど、でも、マイケルの気持ちは理解できた」
──一番苦労したシーンはどこですか?
「裁判のシーン。ハンナと出会った時よりも成長しているわけだし、彼女のことを知るシーンだから、観客がマイケルの目を見ただけで、彼の感情が全部分かるようにしなければいけなかった。僕にとっては一番難しい演技だった」
──ベッドシーンはどうでしたか。
「ヌードになることには抵抗もあったし、最初はものすごく緊張してしまった。ケイトが親切に助けてくれたし、僕が大丈夫なようにみんなが気を使って、現場の空気を和やかにしてくれたんだ。それにスティーブン(・ダルドリー監督)は自分の撮りたい映像を事前に細かく決めていて、曖昧なところが全然ない。何よりも動きを優先させていたから、ダンスの振付に近かったかもしれない。だからすごく演技しやすかった。もちろん感情はこめなきゃいけないけど」
レイフ・ファインズ インタビュー
「人はためらうもの。ためらわなくなったら危険だと思うよ」
──2人1役の難しい役ですが、出演を引き受けた理由は何ですか?
「数年前にアンソニー・ミンゲラから原作を渡された。その時は映画化されるかどうかも、自分がマイケル役に合っているかもわからなかったけど、デビッド・ヘアの脚本にとても感動したんだ。人間がよく描かれていて、どの登場人物にも簡単には判断を下していない。大人のマイケルも、自分の過去と折り合いをつける重要な役として書かれていた。マイケルが本を読みカセットを送るところにも感動したね」
──ナチスの犯罪に対する裁判が重要なポイントになっていますね。
「ホロコースト映画だと言われるかもしれないが、それは物語の背景に過ぎないと僕は思う。むしろ、恋愛や裁きに直面し、心をかき乱される1人の男の人生を描く物語だと思う。そう言ったシーンを通して、“人をどう裁くのか”という問いかけを投げかけてくる。その問いかけを前にしたマイケルの“ためらい”が描かれるんだ。人はためらうもの。ためらわなくなったら危険だと思うよ」
──デビッド・クロスの後でマイケルを演じるのはやりにくくなかったですか?
「デビッドとスティーブンと3人でマイケルの人生についてかなり話し合って、2人の演技に共通点を持たせるようにいろいろやってみた。普通、あるキャラクターを演じる時は、物語がスタートする時点までのキャラクターの人生をあれこれ想像しなくちゃならない。でも今回はそれまでのマイケルの人生がきれいに盛りつけされた状態で、はいどうぞと差し出されている。撮影に入る前にデビッドのシーンを見ることもできたし、他の役と比べて難しいということはなかった」