「ムチャクチャもの凄い!」007 慰めの報酬 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
ムチャクチャもの凄い!
ダニエル・クレイグ主演、007シリーズ最新第22弾。前作「カジノ・ロワイヤル」からの、完全な“続編”(前作のラスト・シーンの1時間後から始まるという設定)として作られた本作。ダニエル・クレイグ、渾身の“シリアス・ボンド”第2弾。さあ、如何なる仕上がりになっておりますでしょうか?
事前情報で本作の監督が、マーク・フォースターだと聞いて、吾輩正直“不安”でございました。だって「チョコレート」や「ネバーランド」を撮った監督さんですよ。どちらかと言うと、“人間ドラマ”が得意分野な監督でしょ?って言うか、『アクション撮ったことない監督に、なんでまたこんな大作を…』てな感じで観始めたのですが…、前言撤回いたします!すみませんでした、偉そうに“不安”なんか感じちゃって。いやもお、こりゃトンでもなくムチャクチャにスンバラしい“アクション超大作”に仕上がっております!映画開始早々から繰り広げられる、凄まじいカー・チェイス・アクション(今回も、アストン・マーティンはアッサリとボッコボッコに…(>_<)。更に、スクリーンをめいっぱい使ってのアクション・シーンが次から次へと…、ボートを使ってのチェイスや、生身での追跡(跳ぶ!転がる!)シーン、飛行機を使ってのエア・チェイスに、クライマックスでのホテルの爆破…。もお全てのアクションが、一級品で、それが映画の中に山盛りで凝縮されています。予告映像に出てくるロープを使ったガン・アクションのシーンなんて、吾輩てっきり後半のクライマックスで出てくるのかと思いきや、何と開始わずか20分くらいのところのシーンでございました。あれが前半に“サラっ”と流れるくらいですから、この後のアクションの凄さ、クオリティの高さは言わずもがなでしょう。
そこへ持ってきて、ストーリーも目まぐるしく展開していきますので、ハッキリ言って一瞬たりとも気が抜けません。少しでも気を抜くと『あれ?コレって何でこうなるんやったっけ?』てなことになりかねません。山盛りアクションに、濃密なストーリー(何せ、脚本には前作に続きポール・ハギスが名を連ねてますから…)。007シリーズとしては、極めて短めの1時間46分という上映時間ですが、吾輩は観終った後、まるで3時間ほどの超大作を見せられたような感覚に襲われました。決して悪い意味ではなく、それだけ中身のギッシリ詰まった“快作”だと思います。
しかし、ダニエル・クレイグは素晴らしいですね。前作の公開前には、世界中から『辞めてしまえ』コールが沸き起こり(吾輩も、それに同調しておりました…(^^;)散々でしたが、公開されるやそれらの雑音を、その演技で一蹴し、新たなジェームズ・ボンド像を構築しました。そして本作では“シリアス・ボンド”の路線を更に突き進め、非常に野性的で、シャープで危険なジェームズ・ボンドを演じきっています。過去のシリーズに存在したイイ意味での“ユーモア”や“ユルさ”は、全く存在いたしません。本当の意味で007シリーズは生まれ変わり、そしてそれが世界的な大ヒットへと繋がったんだと思います(吾輩的には、ユーモアがなくなったってのは、シリーズのファンとしては、少々寂しい感じはするのですが…)。
本作のボンド・ガールに抜擢されたオルガ・キュリレンコ嬢ですが、前作「ヒットマン」での脱ぎっぷりが過剰なほどでしたので、今回も期待(コラコラ(^^;!)していたのですが、そちらの方では少々“肩透かし”でございました。しかし、その分アクションなんかで頑張っております。何よりこの人、背がデカイ!ですから今後も、スケールの大きな女優さんになれそうですね。昔は『ボンド・ガールは、大成出来ない』なんてジンクスがございました(現にあんまり有名になった人は…)が、それらを打ち破っていただきたいものです。
作中の台詞で『昔は、もっと善悪がはっきりしていた。今は悪者とわかっていても、利害が一致すれば、交渉する…』ていうのが出てくるのですが、これは現在の世界情勢を端的に表わしている、秀逸な台詞だと思います。そんな世界でも、己の信じた正義を貫くジェームズ・ボンド。“孤高の諜報員”の活躍は、このキャスティングでまだまだ続きそうですね。でも、ジュディ・デンチ大丈夫かなあ?もお74歳(!)なんだそうです。いえね、お見受けしたところ全然お元気そうではあるのですが…。