「007映画は大河」007 慰めの報酬 espritさんの映画レビュー(感想・評価)
007映画は大河
ピアース・ブロスナンの「ワールド・イズ・ノット・イナフ」が公開された時に、「20世紀最後の任務」というコピーが付いていましたが、あれから更に10年の月日が流れ、6代目のダニエル・クレイグによって「21世紀の007」新しいジェームズ・ボンド像が造られつつあると思います。
長年のシリーズのファンとしては、「お約束」が守られていないとか、旧作から連続している「継承的な印象」と違う事もあって、正直戸惑いはありました。
ただ、今回の作品も4回劇場で観ましたが、回数を重ねる毎に、製作サイドの並々ならぬ努力が垣間見えて来る様な気がします。40年以上続くシリーズですから、今の時代にマッチした、またその先を行くボンドを創り続けなければ、映画としての継承が出来ません。
そう考えると「007」というのは映画が作られ続けていると云う事自体が、もう大河ドラマみたいなもんなのかなあという気がしてきました。
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今回の作品は「黄金の玉座に座る乞食」と形容されたほど豊かな天然資源を持つが、貧しい国であるボリビアについての知識がないと理解が難しい部分が有ったと思います。
民営化によってロンドン国際水供給会社が上下水道事業の40年間のコンセッション契約を行った後に水の価格が高騰して、2000年に「コチャバンバ水紛争」が起きています。この辺の歴史的な下地がないと今回のストーリはピンと来ないでしょう。
上映時間を歴代最短とした為ストーリーの背景が描ききれていなかったと思います。
また、新しい組織「Quantum」ももっと悪ぶりを描いた方が良かった様に思いました。いかにも現代にありそうな悪役ですが、「儲けるのがいけませんか?」といった「何とかファンド」と変わらない様な気もします。となると、何故ボンドが対峙しなければならないのかといった疑問が湧いてきます。
007が戦わなければならない相手、魅力的な悪役の創造が、これからのポイントでしょう。今作のグリーンを演じたマチュー・アマルリックは良い役者さんだけに非常にもったいない気がしました。